表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/11

11 ギャンブル

 金が舞い込んでくるのは、働いている人だけでしょう。

 ですが、働いている人でも急に一攫千金儲けるなんて夢の話です。ギャンブルなら出来るかも知れませんが、

 ギャンブルについては私はしませんので、分かりません。

 ですが、多分無理でしょう。

 でも私は冒険者。

 冒険者はその限りではありません。一発逆転の可能性があるのです。


 街には騒ぎ声が広がっています。街の中央には、宙に浮いている人影があります。

 

 しかし、私の耳には騒ぎ声は入ってきません。

 ただ相対する魔王幹部に見入っていました。


「ラニム!!」

「いざ、勝負!!」


 私の頬は緩みました。だって目の前に大金があるのですから。


 彼の羽織った黒いマントは、風によって揺らされていました。

 しかし、彼の掛け声と共にマントは自我を持ったように、重力に逆らい始めました。


 あのような芸当をするのは、魔法使い以外いないはずです。魔力が体内から溢れ出しているのでしょう。となると、相当の化け物。

 そもそも空を飛んでいました。その時点で相当の手慣れなことは分かりますね、

 でも、私は一度魔王幹部に勝てたので、大丈夫でしょう。


「漆黒に染まりし、白き大蛇よ。生を後悔して、死を渇望するものより、願いたまわん。嗚呼、空よ、この星を、宇宙を噛み砕かん。白大蛇の悪き牙(バラックハーゲスト)


 すぐに攻撃をしてきました。

 まるで大蛇のようでした。

 それは視認できる最高の速度でした。


「世界を穿て、魂を洗い流す雨よ、時を超え、破壊せよ!! 水爆弾(ウォーターボム)


 打ち消してみせる。

 その意気込みで放ちましたが、なんということでしょう。

 魔王幹部に直接当たりました。

 呆気ないですね。余裕の勝利でしょうか。


 ドォン

 衝撃音が鳴りました。

 何の音?


「うぅ゛」


 サミナーさんがそんな声を上げます。

 左半身に出血があり、赤く染まっています。

 何が!!

 ……きっと、私の水爆弾(ウォーターボム)が、勝ったのではなかったのでしょう。

 避けられたのです。元々、私狙いではなく、サミナーさん狙い……!!


「大丈夫ですか、サミナーさん!?」


「うん。豊潤を手に……」


 サミナーさんが回復魔法の詠唱をしている時に、先ほどの魔法が再び飛んでいきました。


「……サミナーさん?」


 返事もなく倒れています。

 でも、ゴホゴホと喉に入った血反吐を吐いています。まだ命はあります。

 このままだったら危ない。


 回復魔法!!

 何て心の中で叫んできますが、私は回復魔法は使えません。


「誰か助けて!!」

「サミナーさんが!!」


 周りは空虚の如く静まり返っていました。

 ポツリと流れる涙がしょっぱく舌に染み込みます。

 見渡しても、誰も動きはしません。

 膝を付いていたり、足が震えていたりしています。

 どうしたら……


「閃光を放て、光道の導き(ハルモール)


 あ、!!

 ヤバい。


 空から一瞬の間に光線のような魔法が飛んできました。

 太く速い。

 今度は私を狙ってきています。

 あぁ、まずい……

 どうすれば、打ち消すには時間が足らない。

 ならば、逃げるしか。そうすれば、サミナーさんはどうなるの?

 あの無防備な状態で離れることは出来ない。


 コン、実際にそんな音は聞こえませんでした。

 でも、もしかしたら鳴っていたかもしれないような状況でした。

 アイツに投石が当たりました。

 小石くらいの大きさでした。致命傷にもならなさそうな弱い石です。

 一体誰が投げたのでしょうか。


「あぁーー゛」


 叫び声が響きました。

 その静寂に音が取り戻されたようでした。

 右側から聞こえていた声がこちらに近づいてきて、気づけば耳元で叫ばれていた。

 目の前には男の顔がありました。

 誰?


 ブォン゛


 そんな音が地面からした。

 土から突起物が現れた。土魔法の盾でした。

 それは私がつくったものではありません。

 この男がつくったのでしょうか。


 直後に土が崩れ落ちるような音がしました。

 それはアイツの攻撃が当たった音です。

 どうやら攻撃はこの壁に吸収されたようです。

 私は助かったのです。


「おぉ、まじか……!? 俺、本当にやっちまったな。すげぇな、遂にここまで成長したか、俺も」


 助けてくれた男は何かぶつぶつ呟いています。

 中肉中背で、髪は荒れています。

 不清潔でありながらも、鞘に収められていない小さな剣を持ち、それにさっきの土の壁。無詠唱魔法を使っているようです。


「おい、貴様。俺は、お前を倒してやるよ。」


 指を刺して、啖呵を切っています。

 けれど、流石、魔王幹部と言ったところでしょうか。一切の動揺を示していません。

 まるで虫ケラが現れたような反応です。


「虫ケラが!!゛俺様の邪魔をするなんて許さない!!」


 おっと、本当に虫ケラだと思っていたようです。

 そんな虫ケラの話はともかく、あんなに怒りを露わにするなんて、思っていませんでした。


「……おい、おい、しくったか。異世界に来てから、まともなギャンブルやってねぇよ。ふーーっ落ち着け俺」

「助けてやる!! 俺の異世界ライフを賭けてでも」


 最後の言葉は私に向けられたようでした。

 その姿はだらしなさを忘れてしまいそうでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ