11 ギャンブル
金が舞い込んでくるのは、働いている人だけでしょう。
ですが、働いている人でも急に一攫千金儲けるなんて夢の話です。ギャンブルなら出来るかも知れませんが、
ギャンブルについては私はしませんので、分かりません。
ですが、多分無理でしょう。
でも私は冒険者。
冒険者はその限りではありません。一発逆転の可能性があるのです。
街には騒ぎ声が広がっています。街の中央には、宙に浮いている人影があります。
しかし、私の耳には騒ぎ声は入ってきません。
ただ相対する魔王幹部に見入っていました。
「ラニム!!」
「いざ、勝負!!」
私の頬は緩みました。だって目の前に大金があるのですから。
彼の羽織った黒いマントは、風によって揺らされていました。
しかし、彼の掛け声と共にマントは自我を持ったように、重力に逆らい始めました。
あのような芸当をするのは、魔法使い以外いないはずです。魔力が体内から溢れ出しているのでしょう。となると、相当の化け物。
そもそも空を飛んでいました。その時点で相当の手慣れなことは分かりますね、
でも、私は一度魔王幹部に勝てたので、大丈夫でしょう。
「漆黒に染まりし、白き大蛇よ。生を後悔して、死を渇望するものより、願いたまわん。嗚呼、空よ、この星を、宇宙を噛み砕かん。白大蛇の悪き牙」
すぐに攻撃をしてきました。
まるで大蛇のようでした。
それは視認できる最高の速度でした。
「世界を穿て、魂を洗い流す雨よ、時を超え、破壊せよ!! 水爆弾」
打ち消してみせる。
その意気込みで放ちましたが、なんということでしょう。
魔王幹部に直接当たりました。
呆気ないですね。余裕の勝利でしょうか。
ドォン
衝撃音が鳴りました。
何の音?
「うぅ゛」
サミナーさんがそんな声を上げます。
左半身に出血があり、赤く染まっています。
何が!!
……きっと、私の水爆弾が、勝ったのではなかったのでしょう。
避けられたのです。元々、私狙いではなく、サミナーさん狙い……!!
「大丈夫ですか、サミナーさん!?」
「うん。豊潤を手に……」
サミナーさんが回復魔法の詠唱をしている時に、先ほどの魔法が再び飛んでいきました。
「……サミナーさん?」
返事もなく倒れています。
でも、ゴホゴホと喉に入った血反吐を吐いています。まだ命はあります。
このままだったら危ない。
回復魔法!!
何て心の中で叫んできますが、私は回復魔法は使えません。
「誰か助けて!!」
「サミナーさんが!!」
周りは空虚の如く静まり返っていました。
ポツリと流れる涙がしょっぱく舌に染み込みます。
見渡しても、誰も動きはしません。
膝を付いていたり、足が震えていたりしています。
どうしたら……
「閃光を放て、光道の導き」
あ、!!
ヤバい。
空から一瞬の間に光線のような魔法が飛んできました。
太く速い。
今度は私を狙ってきています。
あぁ、まずい……
どうすれば、打ち消すには時間が足らない。
ならば、逃げるしか。そうすれば、サミナーさんはどうなるの?
あの無防備な状態で離れることは出来ない。
コン、実際にそんな音は聞こえませんでした。
でも、もしかしたら鳴っていたかもしれないような状況でした。
アイツに投石が当たりました。
小石くらいの大きさでした。致命傷にもならなさそうな弱い石です。
一体誰が投げたのでしょうか。
「あぁーー゛」
叫び声が響きました。
その静寂に音が取り戻されたようでした。
右側から聞こえていた声がこちらに近づいてきて、気づけば耳元で叫ばれていた。
目の前には男の顔がありました。
誰?
ブォン゛
そんな音が地面からした。
土から突起物が現れた。土魔法の盾でした。
それは私がつくったものではありません。
この男がつくったのでしょうか。
直後に土が崩れ落ちるような音がしました。
それはアイツの攻撃が当たった音です。
どうやら攻撃はこの壁に吸収されたようです。
私は助かったのです。
「おぉ、まじか……!? 俺、本当にやっちまったな。すげぇな、遂にここまで成長したか、俺も」
助けてくれた男は何かぶつぶつ呟いています。
中肉中背で、髪は荒れています。
不清潔でありながらも、鞘に収められていない小さな剣を持ち、それにさっきの土の壁。無詠唱魔法を使っているようです。
「おい、貴様。俺は、お前を倒してやるよ。」
指を刺して、啖呵を切っています。
けれど、流石、魔王幹部と言ったところでしょうか。一切の動揺を示していません。
まるで虫ケラが現れたような反応です。
「虫ケラが!!゛俺様の邪魔をするなんて許さない!!」
おっと、本当に虫ケラだと思っていたようです。
そんな虫ケラの話はともかく、あんなに怒りを露わにするなんて、思っていませんでした。
「……おい、おい、しくったか。異世界に来てから、まともなギャンブルやってねぇよ。ふーーっ落ち着け俺」
「助けてやる!! 俺の異世界ライフを賭けてでも」
最後の言葉は私に向けられたようでした。
その姿はだらしなさを忘れてしまいそうでした。




