今回の真相
兵士の詰め所でケインは隊長に言う。
「新しい情報を聞けましたね」
取り知らべを手配してくれた兵士長さんも言う。
「もう隠し財産なんて無かったのか」
ローナは隊長に聞いてみる。
「でも、これから何を調べればいいのかしら」
隊長は答える。
「隠し財産が無いと困る奴を探すんだ」
ケインは「と言うと?」と問うので隊長は続ける。
「道具屋を調べろ」
「俺たちが調べた道具屋ですか?」
「二軒あっただろう。両方の仕入れを調べろ」
「了解」
どうやら隊長には仮説と言うか、おそらく事件の結末が見えてるのだと思う。
多くは説明してくれないけど、大体こういう時は隊長には考えがあって、それを指示してくるんだ。
少しだけ隊長のやる事が理解できて来たような気がするけど、僕は気を引き締める。
そうして、僕らは最終的な調査へと進む事になる。
調査を終え、ケインが隊長に報告する。
「事実が分かりました、道具屋の一軒が解毒剤を大量に仕入れてます」
隊長がまとめる。
「情報屋は毒沼の洞窟に隠し財産があるという情報で道具屋と結託したんだ。そして道具屋は冒険者相手に解毒剤を売って荒稼ぎ」
ケインが続ける。
「しかし、情報屋はパムスから隠し財産はすでに他の残党が持ち逃げした情報を追加で聞いて再度道具屋に行った」
「二人は揉めた筈だ。事実を黙ったまま商売を続けるか」
「兵士長に連絡してすぐに道具屋の店長を連行しましょう」
兵士長さんと僕らで最初に聞き込みをした方の道具屋に踏み込む。
兵士長さんは大きな声で言う。
「店長! 話がある! 大人しくついてこい!」
言われた店長、年は五十台だろうか? 少し白髪の太った男性は指示に従い、そして兵舎の取調室へ。
取調室で容疑を告げると、くたびれたような店長はあっさり認めた。
彼は言う。
「毒沼の洞窟に隠し財産があるなら、解毒剤が売れる。利益は情報屋と山分けで話に乗ったんだ。大量に仕入れて流通量を仕切れば、儲けは独り占めだ」
隊長が言う。
「だがそんな時に情報屋がもう一度来たんだな」
「ああ、隠し財産は残党がすでに持ち逃げしたと。あいつは言ったんだ、一旦手仕舞いしようと。状況が変わったし情報が更新されたなら、情報屋として聞かれたら黙ってると信用に関わると。でも俺はそれだと大量の解毒剤の在庫を抱えてしまう」
「それで暴行か」
「口論してるうちに手が出て…つい殴ってしまったんだ。二~三発か、あいつは怒って出ていってしまった。あとで介抱されるほどひどい状態になるなんて思わなかったんだ」
店長の聞き取りを終え、取調室を出る隊長にケインが別の場所から来て報告する。
「情報屋も吐きました」
僕らは報告を聞く。
「口論のすえ殴られた。その場はそれで物別れに終わったそうですが、町を数区画歩いてるうちに気分が悪くなって倒れたと。打ち所が悪かったんでしょう。それで酒場で手当てを受けた」
僕は聞く。
「やっぱりお金儲けをしようとしたから正直に話せなかったのかな」
「道具屋との繋がりを探られるとますい上に、パムスから違法な薬物を買っていた。道具屋と揉めた原因を話せば調査が進み、薬物でお縄になる。それが嫌だったんだろう」
こうして事件の顛末は明るみに出て、一つの揉め事が解消したのだった。
宿に集まり報告書を書いたりしながらみんなで話す。
ローナが言う。
「今回も綺麗に片付いたわね、さすがヴァリー」
言われた隊長は自慢するでもなく、いつも通りの冷静な表情のままだ。
そんな隊長に僕は聞く。
「隊長、途中から指示が具体的だったけど、今回もどこかで目星がついたのかな」
「気になったのは安い方の宿が満室だった事だ」
僕らは静かに聞く。
「周囲の動向が早すぎる。クエストが出てから冒険者や商売人が集まるまで少し時間はある筈なのに、数日前から予約で満室だ。セリアとローナの聞き込みでも確証になった。
という事は、クエストに関して何らかの情報が漏れてた事を疑った。それが情報屋だ」
ケインが言う。
「なるほど、情報が出回るなら情報源は情報屋ですよね」
「その情報で儲けを出そうとした奴が居るなら、情報屋が立ち寄った先と、クエストに関係がある商売をしてる奴だ。関連づけて考えると揉め事のおおよその予想が見えてくる」
ローナは言う。
「相変わらず凄いわね」
僕も言う。
「着眼点というか、観察力かな。僕も早くそういう見方が出来るようにならないといけないね」
そう言う僕に隊長は言う。
「色々な物を見て、経験しろ。知識と感じたものが、今ある発想と考え方を更に発展させ伸ばしてくれる」
「うん。早くみんなの役に立てるよう、頑張るね」
そんな話をして終えた。
謁見の間に集まる僕ら。
王様は笑顔で迎えてくれる。
「おお、その方らか。何やらまたしても事件を解決してくれたようだな」
隊長が答える。
「調べ物のついでだ。大した事ではなかった」
「いやいや、迅速だったと聞いている」
「兵士たちとの協力あってこそだ」
「なるほど。天界の使いは連携もお手の物か。恐れ入る。兵士たちも誉れだろう」
そう言う王様にケインが答える。
「よく訓練されてると思います。国民の為に体を張る良い兵士ですよ」
「そう言ってもらえると嬉しいぞ。民の為に出来ることはしたいからな。そうだ、その方たちの為にも頼まれた事を調べておいたぞ」
その言葉に僕は期待してしまう。
隊長が聞く。
「勇者の情報か」
「そうだ。太陽の勇者メイトはここから北西に行った町にいる。サン・ロイズの町という」
ケインが僕に言う。
「良かったな」
「うん。王様、ありがとうございます」
お礼を言うと王様は笑顔で答えてくれる。
「何、こちらも助かった。小さき冒険者よ。そなたの協力、感謝だ。勇者に会うといい。きっとこれからの道しるべを示してくれようぞ」
「はい!」
こうして、僕らは謁見を終えた。
サン・テーレをあとにする。
兵士長さんや門番で働くキークにも挨拶した。
旅路は一路、サン・ロイズへ。
そこで待つ勇者に会えるだろうか?
勇者は、僕に何を語るのだろうか?
期待と不安を胸に、僕らは勇者の元へと向かうのだった。




