問い詰め
僕らは再び宿へ戻る。
全員合流して報告をする。
ケインが隊長に告げる。
「情報屋は道具屋で見かけてるそうです。店員が証言しました。店長が不在なのであとでまた聴取します。あと道具屋では冒険用の道具が売れているそうです。特に解毒剤などが」
それを確認しながら今度はローナも隊長に報告する。
「安い方の宿屋も冒険者が増えた事で満室になってるそうよ」
セリアが付け加える。
「冒険者以外も王都へ集まってるみたいよ」
「冒険者以外?」
そう聞く隊長に説明を続けるセリア。
「商人とかが出入りしてるみたいね。冒険者が購入する道具の仕入れやクエストで手に入った品物の買取とか」
「…」
みんなの報告を黙って聞く隊長。
それから口を開く。
「道具の売買が多くなった理由、それも解毒剤は理由が分かる」
僕は「そうなの?」と聞くと説明してくれる。
「野盗の隠し財宝の在り処が関係してる」
みんなやや驚き、ケインは質問する。
「北の方にある沼地の洞窟?だかの話しですよね?っていうか何で分かったんですか」
「私も調べてきた。話が出待ってたそうだ。隠し財宝は北の洞窟にある、という話があった。そこは毒沼に囲まれていて、毒沼の洞窟とも呼ばれている。最近は中にも毒持ちの魔物が居るそうだ」
ケインは「なるほど、それで解毒剤が売れてるんですね」と納得する。
「野盗は王都で違法な薬物を売る商売に手を出す前はそこを根城にしていたそうだ」
「まあ、野盗ですからね、町の外に潜んでるのは普通ですよね」
「前はそこまで魔物も居なかった、だから根城に選んだようだ。奴らがそこから引き払ったあと、魔物が増えたらしい」
ローナが言う。
「酒場のマスターさんみたいな人の話しだと情報屋の人は多分その事を知ってたのよね?」
僕は意見する。
「思うんだけど、例えば情報屋さんを襲ったのが冒険者とかだったらどうかな?」
セリアが「冒険者?」と聞くので僕は自分の考えを伝える。
「情報屋さんから財産の在り処を聞いた冒険者が独り占めする為に、情報屋さんが他の人に喋らないようにする為とか」
でもケインが言う。
「まあ、考えられなくもないが」
隊長は答える。
「その場合、隠し財産が手に入っても町へは戻れない。情報屋を襲えば当然追われる」
僕は続ける。
「宝を持ってどこかへ逃げるつもりだったのかも」
しかし、その意見はセリアが否定する。
「う~ん、どうかしら。隠し財産が手に入る保証は無いし、お金だという保証もないから難しいと思うわ」
「駄目かな?」
「例えば、お宝が価値のある銅像とか、宝石になってた場合、売り払わないといけないでしょ? 有名な鑑定士や買取店を探すとなると、結局王都に戻らないといけないでしょ。二度と戻れない状況になってまで情報屋の口封じをしなければいけないのって大変よね」
僕は頷いてしまう。
「そうだね、言われてみるとちょっと状況にそぐわないよね」
ケインも言う。
「それに、情報自体は出回ったあとだしな。兵士長やギルドで知られてたら情報屋を口封じしても手遅れだ」
ケインがそう言うと隊長が告げる。
「核心には近づいてる筈だ」
ローナが言う。
「でもどうするの? あと何か調べることはありそうかしら?」
隊長は言う。
「そもそもの話、隠し財産は本当にあるのか、という疑問がある」
僕は尋ねる。
「隊長はその話、信じてないの?」
「野盗の仲間のパムスは捕まるまで何をしていた? 町でコソコソしてその日暮らしのような生活だ。財産を狙うような素振りは感じなかった」
ケインは言う。
「たしかに少し変ですね」
「パムスの所へ行くぞ、奴は何か隠してる」
隊長は何か考えがあるのか、僕たちは隊長の指示で捕まった野盗の残党、パムスのトコへ向かうのだった。
牢屋から出されたパムスは取調室で僕らを待っていた。
兵士長さんはケインから連絡を受け、聴取の手続きを執ってくれたのだ。
隊長が一人でいい、と言うので隊長だけが部屋に入る。
僕らは部屋の小窓から様子を伺った。
パムスは椅子に座りながらなんだか落ち着きがないようだ。
そして言う。
「なんだよ、まだなんかあるのかよ」
隊長はゆっくりと椅子に座り、机に資料を広げながら言う。
「色々あるようだな」
「色々、ってなんだよ」
「違法薬物の売買に窃盗、不法侵入、食い逃げまで」
「ちょっとした悪さだろう、そんなに怒らないでくれよ」
「手癖の悪さは困ったものだな」
パムスはへへへ、と笑いながら答える。
「悪気はねえんだよ、でもさ、分かるだろ? 食うためにはよ」
「金が無いのか」
「あったらこんな事しねえよ」
「金ならあるんじゃないか? お前たちが隠し持ってる」
「隠し持ってる?」
「隠し財産があるだろう。それを持って逃げればいい」
「あ、あ~…あれか。あれはな、ちょっとな、大体俺は野盗じゃねえし」
「なんだ? なにかあるのか?」
歯切れの悪くなったパムスは続ける。
「いや、ほらさ、カシラにバレたらヤバイだろ?」
「何がだ」
「だってよ、おっかねえだろ?」
「野盗のボスは牢屋だ。財産を持って逃げればいい」
「いや、そうだけどよ」
「財宝に名前でも書いてあるのか? 違うだろう? 誰かがお前に問い詰めたとしてもギャンブルで大勝ちした金とでも言えばいい」
「…」
黙ってしまうパムス。隊長は静かに続ける。
「何か隠してるな」
「そ、そんな事はねえよ、へへへ」
その言葉を聞いた隊長は声を荒げる。
「いいやお前は嘘を吐いている!」
「な、なんだよ急に!」
「のらりくらりとはぐらかせば何とかなると思ってるな? そうはいかないぞ!」
「いやだから俺は何も…」
隊長は声のトーンを戻し、言う。
「はっきり言うぞ、私は隠し財産なんて無いと思ってる」
「いや、何言ってんだアンタ…」
「お前の態度には信用できない部分がある。隠し事をしてる奴特有のな。最後のチャンスだ、知ってる事があるなら今言え」
「ううっ…」
「正直に言えば今後の処遇について口添えしないでもないぞ」
その言葉に苦渋の表情を見せるパムス。
それから言う。
「あ、あんたにそんな権力あるのかよ」
「国王とは握手をする仲だ」
「~~!」
頭を掻きむしるパムス。
それをじっと見る隊長。
少しだけ間を置いた後、パムスは言う。
「分かった、分かったよ。喋る、喋るよ」
「早くしろ」
「隠し財産自体はあったんだ。でも言う通りだ、今は隠し財産なんて無えよ」
「どういう事だ」
「他の残党が持ち逃げしたらしいんだよ、あんたらと兵士たちがアジトを攻めた時に軍全アジトに居なかった仲間が、隠し財産を持ってトンズラだ、もう町には居ねえだろうよ」
「なぜ黙ってた」
「だってよ、野盗の残党狩り~、なんてクエスト出されて俺まで狙われてムカつくだろ? 兵士にも冒険者にも追われてよぉ。だからそういう奴らがもう存在しない隠し財産の情報で右往左往したらスカっとすると思ってよぉ」
「憂さ晴らしのためか」
「まあ、そうだな、ちょっとした抵抗ってやつだよ」
「お前、その事を誰かに話したか?」
唐突な質問にパムスは少しハッとしたような顔になり言う。
「誰かに? そ、そうだな…」
「…」
「話したような、話してないような…」
「はっきりしろ!」
「ひっ!」
バンッ! と机を叩かれ、ビビるパムス。
隊長は鋭い視線をパムスに向ける。
まるで睨むような視線を受けたパムスは目を逸らすが、やがてチラっと隊長の方を見ながら言う。
「情報屋の奴によ、話したんだ」
「やはりか」
「誰かに言いたかったんだよ、みんな有りもしない隠し財産を追って良い気味だぜ、ってな」
「だがなぜ情報屋とお前が話なんてしていた」
当然の疑問にパムスは答える。
「そりゃ俺だって世間話ぐらいするぜ」
「嘘だな」
「おいおい、俺はホントの事を」
「まだシラを切るのか。お前の処遇は決まったな、長い刑期を楽しめ」
「分かった、分かった! 言うよ! 言うから待ってくれ!」
隊長が見限ろうとするのを見て、たまらずパムスは待ったをかける。
そして観念したように告げる。
「アイツに葉っぱを売ってたんだよ」
「情報屋にか。なぜ庇う」
「一応色々世話になってるからよ、兵士からも冒険者からも追われる身じゃ数少ない情報源の相手だ」
「奴も売人なのか?」
「いいや、あいつは単に使うだけだ。あいつも情報を得るためにあちこち奔走する時があるみたいでさ、仕事が立て込んで気が滅入った時とかに気分を良くするために使ってたよ、売りさばく量は渡してないぜ」
それだけ聞いた隊長は書類を束ねて立ち上がる。
パムスは驚いて言う。
「お、おい! 終わりか? ちゃんと本当の事を話したぜ!」
「聞きたい事は聞けた」
「じゃあ俺の、その、罰の方も」
「考えておいてやる」
こうして聴取を終えた隊長は部屋を出た。




