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見習い勇者と落第魔王の大冒険  作者: 話太郎
出会いと旅立ち
2/69

降臨

 村に戻る途中でローナに話しかける。

「そう言えば、君はなんで空を飛んでたの?」

「あ、その事なんだけど、実は、なんか追われていた気がしたのよ」

「追われてる? 誰に?」


 そう尋ねた時だった。

 ピカッと。

 空が光った。

 そして木々の奥の向こうに、光の柱が落ちたような光景が広がる。

「きゃっ」

 ローナは短く呻く。

 それから、ドン、と小さく衝撃が響いた。

 ローナは「…なにかしら」とつぶやく。

「行ってみよう」

 僕らはその方向へ行ってみる事にした。


 ガサガサと…

 茂みをかき分けた先の小さな広場みたいな場所。そこに居たのは天使様だった。


 すごい美人だ。

 輝くような銀髪。端正な顔立ち。そして白い羽毛の羽と頭の上の輪っか。

 天使様だ。

 すぐに分かる。

 にわかには信じられないけど、天使様が居る。目の前に。

 だけど、その天使様はどこか、冷たいような印象を受ける。

 一見すると無表情だけど、鋭い目線は全ての者を射貫くような厳しさを感じる。

 そして綺麗な刀身の剣。


「て、天使様?」

「お前は何者だ?」

 天使様にそう問われた。

 ローナは僕の後ろに隠れながら言う。

「あ、あいつよ多分。私を追ってたの。ラルス、助けて!」

 そんな事を言うローナと僕に天使様は鋭い視線を向ける。

 そんな中、ローナは怯えながらも言うのだ。

「わ、私を殺してもいい事なんて無いわよ!」


 僕は聞いてみる。

「天使様、貴方は、どうして…ここへ?」

 すると天使様は答える。

「私はやるべき事をやるだけだ」 

 後ろのローナがビクっと震えた。

 僕はこわばりながらも、拳を握りしめ言う。

「て、天使様はやっぱり、悪い奴を倒すんですか?」

「そうだ」

 抜き身の剣が怪しく光る。

「そうですか…」

「…」

 ローナが僕の服をぎゅっと握ったのが分かった。

 僕は意を決して言う。

「でも、この子は、悪い子じゃないと思うんです!」

 鋭く睨みつける天使様。

 でも僕は続ける。

「魔族だからって、悪とは限らない事もある筈です!」

 ローナは「ラルス…」と小さく呟いた。

「だから、天使様でも、いきなり切り伏せるのは待ってくれませんか!」


 そこまで言うと男性が飛び出してきた。

「おい! ガキんちょ! こんなトコに!」

 村に来ていた調停官、ケインさんだ。どうやら僕らと同じように光の柱を見たんだろう、それを確認しに来たようだ。

 それから彼は言うのだ。

「天使様…いや、まさか、隊長…いや、ヴァルキリー・ヴァネッサ様…」

 天使様も「ケインか」と短く答えた。

 ケインさんはどうやら、このヴァルキリーのヴァネッサという天使様と知り合いのように見える。

 そのケインさんが僕に続けて言う。

「お前何やってんだよ。 それに後ろのそいつ! 魔族だろ」

「僕は、この子が悪い子だと思えません。まだ悪い事をしてる所も見てません。だからどうか、退治しないようにお願いしてるんです」

「このお子様め、なんて口聞きやがる…」

「僕は、勇者になるんだ…勇者は、困ってる人の味方なんだ!」

 そう叫んだ。

 すると天使様は言うのだ。

「それがお前の意志か」

 天使様の握る剣の刀身が怪しく光る。


 怖い。

 でも僕は引き下がりたくなかった。

 一度言った事は曲げたくない。

 ケインさんも「お前、相手が誰だか分かってのか!?」と言う。

 でも僕は言う。

「今、この子は僕に頼ってる。だから、僕もそれに応えたい…」

 天使様は「どういう結果になってもか?」と問う。

 なので答える。

「未熟だけど、僕は、自分を頼ってくる相手を見捨てたりしない!」

 そう叫んだ。

 今の僕じゃ到底天使様に適う筈もない。

 切り伏せられるかもしれない。

 でも精一杯、主張した。すると、天使様は意外な言葉を発した。


「別に退治するなんて一言も言ってない」


 …

 え?


「必要ならそうするが、様子を見に来ただけだ。物音がするから確認をしにな」

 なんだか拍子抜けした。

 この天使様はローナを退治しようとしに来た訳じゃないみたいだ。

「よかった…でも天使様がなんでこんな所に」

「私の事はいい。お前はなぜそいつを庇う? お前の目的はなんだ?」

 そう問われて、僕は答える。

「はい、僕の名前はラルスです。僕はこの近くの村を旅立ち、勇者になりたいと思います」


 そう主張する僕だったけど天使様は非情な言葉を向けた。

「ラルスよ、残念だがお前は勇者になれない。今のままではな」

「ぇ…そんな…ど、どうすれば勇者になれますか…?」

「足りていない。基礎すら出来ていないのだ」

 厳しい言葉に僕は黙ってしまう。

 でもここで引き下がる訳にはいかなかった。

「教えてください! どうすれば足りない部分を失くせますか? どうすれば強くなれますか?」

「まずは冒険者の見習いから始めろ。それから見習い勇者を目指せ。話はそれからだ」

「は、はい。精一杯頑張ります! でも、誰の見習いになればいいんですか」

「それぐらい自分で見つけろ」

 厳しい指摘に、僕は負けそうになりながらも指導を乞う。

「僕には、教えてくれるような強い冒険者の知り合いはいません」

「ならばそこから始めろ。人脈作りも立派な冒険の基礎だ」

「人脈なんて…」

「辞めるか? 別に構わんぞ。わざわざ危険な人生を送らなくても生きていく方法や職業はある」

「でも…僕は、夢を諦めたくはありません」

「…」

 見下ろしながら僕を見つめる天使様に、僕は意を決して進言する。

「あなたが…」

「…」

「あなたが僕に教えてください! 僕を弟子にしてください。貴方なら出来る筈です。さっき、あの人が言ってました」

 少しだけケインさんの方を見ながら僕は続ける。

「ヴァルキリー。そう言いました。あの人は。天使様の中でも強い人だというのは分かります。だから、そんな貴方に僕は指導を受けたいです」

 そんな風に言うがケインさんが割って入るように言う。

「おいおい、ちょっといくらなんでも弁えろ、相手が誰だか分かってないだろ」

「でも僕は…」

 食い下がる僕に天使様は少し思ってもみないような事を言う。

「お前は少し勘違いしているようだ」

「な、なにがですか?」

「ヴァルキリーの名前から強さを想像しているようだが、お前が得なければいけないのは単純な力ではない」

「よく分からないけど、それも貴方からなら学べると思います! どうか…」

 でも天使様は僕を突き放すように言う。

「私は行く所がある」

「どこですか?」

「揉め事の解決だ。込み入っているようで見に行かねばならない」

「…僕も」

「…」

「僕も行かせてください!」

「今のお前では太刀打ちできない場所だ」

「天使様の戦いを見て勉強したいんです。冒険者とは…勇者とはなんなのかを」

「勇気と無謀は違う物だ」

 必死になる僕をケインさんが止める。


「おい、もうよせ。ちょっと駄々が過ぎるぞ」

 でも僕の懇願についに折れたのか、天使様が言う。

「何も出来ないぞ。今のお前では」

「見てるだけも構いません。得る物は探します、自分で!」

「望んだ結果になる保証は無いぞ」

「それでも…次への勉強に繋がるなら!」

「…」

 見かねたケインさんが言う。

「ボウズ、気持ちは分かるがこの人は忙しいんだ、お前が思ってるよりはな。だから相手はできなんだ」

 でも天使様が言った。

「いいだろう」

 ケインさんが言う。

「な? 駄目だって言ってるだ…え?」

 天使様は表情も変えず言う。

「そこまで言うならお前にその資格があるか見届けてやる。ケイン、支度しろ」

 そう言いながら、言葉を続ける。

「四人でパーティーを組むぞ、そこの魔族もだ」

 言われてローナはやや驚きながら言う。

「わ、私も?」

 天使様は言う。

「自分を庇った相手だ、義理ぐらいあるだろう」

「わ、分かったわよ! 望むところよ!」

 ローナはなんだか引くに引けないようだ。

 そんな中、突然話を振られたケインさんはびっくりした様子で「ええっ、俺もですか? ヴァネッサ様」と言う。

 それに天使様は答える。

「隊長で構わん。以前のようにな」

 こうして僕らはあっと言う間に四人パーティーになった。



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