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穏やかな朝、子供達の食事。

 新しいドロワとシャツに着替える。

「・・あの、ウイエさん?」私の着替えた下着を持って変な顔をしてないで、でさっさとスカートを寄こせ。


 はっ?!「失礼したしました!お嬢様の汗の香りがあまりにも芳醇だったので、つい」


・・・つい、じゃ無ぇよ。

(なんだこのぞわぞわ感は、身体を舐められるのとか、とは違う寒気がするんですが)


 確かにミスをかばったり、髪をとかさせたり、私付きのメイドにして給金を上げさせたりしたが。

(どこで間違えたんだ?

 もっと大人しくて従順で、なんでも言うことを聞くような女にしたかったんだが・・・)


 なんかこじらせてきたメイドに冷や汗混じりの笑顔を与えると、大事そうに私の下着を籠に移して背後から新しいスカートを腰にあて・・・


「はぁはぁはぁ・・・」

「あの・・」背後から荒い鼻息が当たるんですが。


(なに?マジで私に抱いてほしいのかこいつ?)

 襲われるより襲う方がマシ、襲って来る前に押し倒してやろうかこのメイドは。


「申しわけございませんお嬢様。お嬢様の腰が、足と太ももがあまりにもお可愛いらしいので、つい、欲望が」


・・・正直なのは美点として、今回は聞かなかった事にしましょう。


「ウイエ、貴女も十分に可愛いわよ?」

 ルージュは彼女の肩に手を置いて、スカートを履かせて履かせてもらい、次ぎに上着の袖に腕を通す。


「・・お嬢様、お嬢様は本気であの子供を弟にするつもりですか」

 服を着替え終え、鏡で色のバランスを確認していると急に真面目な顔をしてくる。


「・・・何度も言いましたが、ライルはもうこの家の、、、私の家族なのですよ?」

 弟にするとかしないとか、そんな話は意味がない、それにその質問は何度目ですか。


「お嬢様が反対するのでしたら、私達メイドも執事達も協力を惜む事はありません」

[協力]つまりは追い出す事に協力すると言うこと。


 イジメ抜いて屋敷に居られないように・自分から出て行くように仕向ける、そうウイエは言ってるのだ。


「あの子供は将来、お嬢様の敵になる存在です。

 外からやって来て、この家を、公爵家を乗っ取るつもりでしょう。ですので今の内に・・?!」


 面倒な事を言う彼女の口を私は一指ゆびで押え、ゆっくりとその指を自分の唇に。

「そんな恐い事を言わないでウイエ、あの子と私は姉弟なのですよ?

 もし貴女が弟に危害を加えるのなら、私は姉として弟を守ります、それが家族と言う物でしょう?

 それに・・・優しいウイエが弟を虐める姿なんか、私は見たくありませんわ」


『私は貴女も大事な家族と思ってるのよ?』

 小さく呟くとウイエは目を潤ませ、私の手を両手で掴む。

 両目に私の姿を写しゆっくりと目を閉じ・・・


(こいつ、この流れでキスをしろと?・・マジか?)


「お嬢様、朝食の準備が出来ておりますが」

 扉の向こうからの声だ。


「はい、大丈夫です」

 着替えを終えた私は、左手の指先で目の前のメイドの額を突いて正気戻す。

「では行きましょうウイエ、貴女がいないと朝食ができませんわ」


 メイドに椅子を引かせ、ナプキンの用意をさせ、水をグラスに注がせる。

 そんな面倒くさい手順を踏まないと貴族は食事も出来ないのだから。


「・・はい、では」

 名残惜しそうにしていた手をようやく離し、私に靴下を履かせるウイエ、舐め回すような細い指が足の指に絡みつつ、ようやく靴を履き支度が終わった。


・・・・・・・・・・・・・


 離れた場所に座るライルに「おはよう」の挨拶をして席に。

 『ライルは姉弟なのだから、食事も私と同じ物でないと』そう、私の説得のかいがあってスープもサラダもパンも同じ物に見える。


『ライル、なにかおかしな物が入っていたら私に言うのよ?』

 給仕をしているメイド達の前で言って置いたので、間違っても変な物は入ってないと思う。


『お父様、ライルは私の弟として他の家族の前に立つのですよね?

 皆様との食事会で弟がマナーを知らないのでは、エラム家の恥になりますわ。

なので』


『ああ解った、好きにしろ』

 ライルに興味の無いボルスの簡単な返事とマゼンダの引きつった顔、お陰で最近の夕食の静かな事この上ない状況になっていた。


(まあ、朝は時間がバラバラだからいいんだけどな)

 当主のボルスは深酒かそれとも深夜まで女に手を出していて、朝に起きて来るのは来客がある時だけ。

 母は低血圧を理由に、起きて来るのは朝日より遥か後だ。

 お陰で朝食だけは姉弟2人で平和な食事が出来る。


(静かです・・・やはり食事は、穏やかな空気で戴かないといけませんわよね)

 オヤジ達の圧の無い、ストレスの無い食事、なんて良い日だ。


(ただ・・・)


「お嬢様、本日はアベル王子がいらっしゃいますので」

「はい、お昼の用意をお願いします。弟と一緒に戴きますから、席の数は間違えないで下さいね」


 ストレスだ。

 ライルを警戒してるのか、時々棘のある空気を作るアベル王子、その気配に怯えて私の後に隠れるライル。

 

(なんだこの状況?こいつら確か、悪友的な感じじゃ無かったか?)

 って憶えてたんだが、、、


 公爵家の長男ライルはもっと軽薄な感じで、父親のボルス譲りの女好きだったはず。

 真面目で誠実な王子らしいアベル、水と油みたいな感じではあるがどこかお互い信用している、そんな感じだったはずなんが。


(私の知らない所でなにかあって、そこから親友になるとかか?

 それなら問題無いのだが・・・・どちらにしても、要注意・要監察が必要か)


 私は、私の知らない所で何かが起るのが恐い。


 知っていたら対抗作を打つ事は出来る。

 けれど知らない所で失敗していた、そして取り返しの着かない結果になっていたとか、それじゃ本当にどうしようも無い。


(もしそうなら、ライルを排除していないこの状況が間違って・・・)


「お姉・・ルージュお姉様、あの・・ボクは部屋で本を読んでますから、王子とは二人でいて下さい」


「弟が遠慮なんかしないの、

 アベル王子だって遊びにいらっしゃってるのだから、一人だけ仲間外れなんかダメに決まってるじゃない!」

 男は男と遊ぶほうが気楽に決まってる、私だって演技しながらの年下の相手はしんどいんだ。

 

 お前ら同じくらいの年齢の男どうしだろ?仲良くしろよな。

 でないと困るんだよ、私が。

 

 私だって色々やらないといけないんだからさ。

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