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ちっちゃい妖精さんになりました! 暇なので近くにいた少年についていきます  作者: SHIRA
第2章 グルメな妖精と絶景のブルーメ
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61.大会の前に・・・

「えっと・・・、ソニアちゃんのお友達かしら?」


窓の外で手を振り続けている水の妖精を見ながらジェシーがh頬に手を当てて言った。


「うん、前にマリちゃんが話してたでしょ?」

「あ~、そういえば朝起きたらマリちゃんがやたらと興奮してた時があったわね」


コンコン・・・


水の妖精がもう一度窓を叩いた。


 開けてくださいって? おかしいな・・・水の妖精なら開けなくても水になって隙間から入れるんじゃ? 前にそう自分で言ってたよね。


「開けてあげて?」


わたしがジェシーにそう言うと、ジェシーは「はいはい」と窓を開けてくれる、水の妖精が若干食い気味に部屋に入って来た。


「なんですぐに開けてくれないんですか」


頬を膨らませて、腰に手を当ててわたしとジェシーを細い目を更に細くして睨んでくる。


「勝手に入って来ればよかったじゃん! 水になれるんでしょ? 前はそうしたんだよね!?」

「・・・以前雷の妖精に実演して見せた際に、こわいと言われたので」


 あ~・・・そういえばそんなこと言った気がする。意外と繊細なんだね。


わたしは「ごめんね」と一応誤っておく。


水の妖精が気持ちを切り替えるように一度目を閉じて、とてもいい笑顔でわたしを見る。


「そんなことより、今日はお魚の日ですね」


顔が近い。わたしの目の前に水の妖精の顔がある。わたしはずいっと水の妖精の肩を掴んで引き離す。


「お魚の日・・・? ああ、料理大会ね。水の妖精も審査員役で参加するんだったね!」


 昨日アザレアに会った時に、水の妖精が参加することも話しておけばよかったかな?


「・・・あら? 雷の妖精のその髪型、似合ってますね。とっても可愛いですよ」


水の妖精がわたしの髪をサラリと触りながら言う。


「え、そう? ありがとう。ジェシーにやってもらったんだよ!」


わたしがそう言いながらジェシーの肩に乗ると、ジェシーが優しくわたしの頭を撫でたあと、どこからかわたしの髪を縛った小さいヘアゴムを取り出した。


「えっと・・・水の妖精さんよね? よかったらソニアちゃんとお揃いにする?」

「雷の妖精とお揃い・・・?」


水の妖精はわたしの髪を見たあと、自分の髪をそっと撫でる。


「そうですね。とても素晴らしい提案です。雷の妖精がやっくれますか?」

「え、わたし? 別にいいけど・・・」


わたしはジェシーからヘアゴムを受け取って、水の妖精を鏡の前にあったいい感じの何かのフタの上に座らせる。


「水の妖精の髪はツルツルなストレートだね。少し羨ましいな」

「そうですか? 私は雷の妖精のふわふわな髪の方が羨ましいです」


 ・・・隣の芝生は青く見えるのかな。妖精になってからは無いけど、人間だった頃は蝦夷梅雨の時期とか苦労したもんだよ。うねうねしちゃって。


「はい、出来た! ・・・どお?」

「雷の妖精とお揃いになりましたね」


水の妖精がサイドの髪の束を触りながら鏡に映る自分を見て、満足そうに笑った。ジェシーがわたし達を微笑ましそうに見下ろしている。


「微笑ましいわね。マリちゃんが起きてたら大興奮・・・」

「あ! 妖精さんだ!!」


ジェシーの言葉を遮って叫んだのは、ベッドから勢い良く飛び降りたマリちゃんだった。目をキラキラに輝かせながらテテテッと元気に駆け寄ってくる。


「水の妖精さんだよね!?」


マリちゃんがダンッとテーブルの上に両手を乗っけて、ずいっと顔を水の妖精に近付ける。


「はい、そうですよ。以前にも会いましたね」

「ソニアちゃんとお揃いの髪型だー?」


わたしと水の妖精を羨ましそうに交互に見る。


「わたしの髪はジェシーが、水の妖精の髪はわたしがやったんだよ」

「はい、雷の妖精とお揃いです」


マリちゃんが「いいなぁ」「可愛いなぁ」と言いながらチラチラとジェシーを見上げる。


「フフッ、マリちゃんの髪も同じようにしてあげるわよ、先に着替えておいで」


ジェシーが急いで着替えたマリちゃんを手招きして自分の膝をポンポンと叩いた。ジェシーの膝の上にマリちゃんが座る。


 マリちゃんの髪の長さじゃあ、同じにはならないと思うんだけど・・・


「うーん、ちょっと後ろの長さが足りないわねぇ」

「同じにならない?」

「ううん、ソニアちゃん達と同じように可愛く出来るわよ、任せてちょうだい!」


ジェシーがマリちゃんの寝癖に悪戦苦闘している間に、わたしは水の妖精に料理大会の前に武の大会があることを説明する。


「せっかく山から降りてきたんです。その武の大会とやらも雷の妖精と一緒に見ましょう」

「うん!」

「本当!?やったー! 妖精さんと一緒!!」


ジェシーにわたし達と同じような髪型にしてもらったマリちゃんが嬉しそうにピョンピョンとテーブルを叩きながら跳ねる。テーブルの上に座っていたわたしと水の妖精も振動で跳ねる。


「フフッ、3人とも罪深いくらい可愛らしいわよ」


わたしと水の妖精とマリちゃんでお揃いの髪型になった。ジェシー曰く罪深いらしい。


 可愛い罪で捕まっちゃうね!・・・なんて、冷静になると恥ずかしい。


朝食を食べる為に皆で食堂に移動すると、ディルとデンガが先に朝食を食べていた。山盛りの親子丼だ。


 ・・・朝からよくもまぁ、そんなヘビーな物食べられるよね。見てるだけで気持ち悪いよ。


「おはようディル、デンガ」

「もぉ! もばばびょ! びぼぼぶぼうべえぼびょっば!?」

「ぼばべば! ばんばぼぼばみ!?」

「・・・なんて?」


訳の分からない事を言っている2人は無視して、わたし達も同じテーブルの席に着く。


「おはよう! ソニア・・・その髪」

「おお!? 妖精が増えてるな!?」


口に含んでいた物を飲み込んだディルがわたしを見て驚き、デンガは水の妖精を見て驚いている。すると、その大声を聞いたプラティが何事かと厨房から顔を出して、物凄い勢いでわたし達がいるテーブルまで走って来た。


「ちょ!なにこれ!? なに? めっちゃ可愛いんだけど!?誰か画家を連れてきて! 」

「ちょっと! なんだいさっきから大声ばっかり・・・・おや可愛い」


プラティの声を聞きつけて、今度はカカが厨房から出てきた。


「人間ってこんなにうるさい感じでしたっけ?」


水の妖精が耳を両手で塞ぎながら言う。


「こんな感じだよ」

「そうですか」


一通り騒いだプラティは「朝ごはん持ってくる!」と宣言して厨房に戻ったあと、ジェシーとマリちゃんの分の朝食を持って来た。美味しそうな目玉焼きだ。わたしと水の妖精は午後から料理大会の審査員役でたくさん食べる予定なので朝食は遠慮した。


 ・・・妖精の胃は小さいのだ。


「ところで、ディル達はこんなにゆっくりしてて大丈夫なの? 大会に間に合う?」

「ああ、本戦は予選ほど人数が多くないからな。開始時間も遅いし、選手の受付にも時間はかからないから大丈夫だ」


デンガがそう言いながら、親子丼をおかわりする。ディルも一緒におかわりしたあと、わたしを見て口を開く。


「ソニアこそゆっくりしてていいのか? 料理大会のことでアザレア様とかと話すんだろ? 試合が始まる前に終わらせないと観戦できないんじゃないか?」


 確かに!!


「いっけない! 早く行かなきゃ!」


わたしは慌てて水の妖精の手を取って飛び立とうとする。


「ま、待って! 私も行きたい!」


 マリちゃんがガタッと立ち上がる。ジェシーが「まだご飯が残ってるわよ」と注意する。


「急いで食べるから!」


マリちゃんは座り直して、慌てて口にご飯をかけこませる。


 危ない!危ない!


「マリちゃんが食べ終わるくらいまでは待ってるから慌てないで! 詰まらせちゃうよ!」


急いで食べ終わったマリちゃんと一緒に、わたしと水の妖精は町中を通って島主の屋敷に向かう。マリちゃんの歩幅に合わせたスピードなので、かなりゆっくりめだ。水の妖精がじれったそうにマリちゃんを見つめている。


 仕方ないよ。マリちゃんは子供だし、飛べないし。


わたしが水の妖精の肩に手を置いて「ゆっくり行こうよ。きっと間に合うよ」と言っていると、マリちゃんがキョロキョロと辺りを見回し始めた。


「なんか色んな人に凄い見られてる気がする」

「気のせいじゃない?」

「気のせいですよ」


わたしと水の妖精が否定すると、マリちゃんは「そうかな?」と首を傾げた。


 まぁ、確かに見られてるけど、視線を感じるのはいつものことだからね、気にしない方がいい。・・・いつも以上に見られてる気もするけど。


お屋敷に着くと、見張りをしていた人が急いで前回案内してくれた執事を呼んできて、屋敷内に案内してくれる。


「ここで何の話をするんですか?」


水の妖精がわたしの腕をツンツンと突いて聞いてくる。


「人間の偉い人に水の妖精も審査員をやるよ・・・って報告するんだよ」

「私から言うんですか?」

「別にどっちでもいいけど・・・その方がいいんじゃない?」


コンコンコン


執事が扉をノックして「お客人です」と言うと、中から「もしかしてソニア様かしら?」とアザレアの少し弾んだ声が返ってきた。執事が扉を開けると、目の前にアザレアが立っていた。


「ソニア様、申し訳ございません。こちらから一度会いに行くと言っておきながら中々行けず、昨日も・・・え?」


アザレアはわたし、マリちゃん、水の妖精と視線を滑らせたあと、固まって「尊い・・・」と呟いた。そんなアザレアにはお構いなく、わたしは2人をアザレアに紹介する。


「この子はマリちゃん、わたしのいも「お姉ちゃん!」みたいな子だよ!」


わたしの「妹」という言葉に被せてマリちゃんが「お姉ちゃん」と叫んだ。わたしはジトーっとマリちゃんを見つめる。マリちゃんはニコニコだった。


 可愛いから許しちゃう!


「それで、こっちの妖精は水の「偉い」妖精・・・」


今度は水の妖精が被せてきた。わたしが水の妖精を見ると、プイッと顔を逸らされた。


「初めまして、私は水の妖精。水の山を管理している偉い妖精です。私も雷の妖精と一緒に料理大会で審査員をします」

「はい・・・え?偉いって・・・ 大妖精様!?」

「そうです。じゃあ用事は済みましたし、武の大会とやらを見に行きましょう」

「あっ、待って・・・」


水の妖精がわたしの手を引っ張って部屋から出る。凄い力だ。マリちゃんもアザレアに手を振りながらわたしと水の妖精に続いて部屋から出る。


「ぶ、武の大会が終わったら呼びに行きますから! どこか・・・えっと、目立つところにいてくださいませ!・・・それと、その髪型とっても似合ってます!」

「ありがとう!分かったよ~!」


 ・・・目立つところって何だろうね?


わたし達は屋敷から出て、会場に向かった。そこには昨日と同じように観戦客の受付の行列が出来ていた。水の妖精がそれを見て不満そうに口を開く。


「なんですか、これ?」

「この列に並んで会場に入るんだよ」


水の妖精が凄く嫌そうな顔をした。


 昨日のわたしは並ばないで飛んで上から入ったけど・・・今日はマリちゃんが一緒だからね。置いて行くわけにはいかない。


「飛んで行きましょう」


水の妖精が空を見上げて言う。


「私飛べないよ・・・」


マリちゃんが悲しそうな顔で首を横に振った。


「飛ばします」

「「・・・え?」」


水の妖精が得意げに腰に手を当ててマリちゃんをドヤ顔で見下ろした。

読んでくださりありがとうございます。意外と表情豊かな水の妖精です。

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