表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/102

14.

「結論から言って、ルルドール様はルルドール様だから目立ってしまうんですよ。」


 宿屋の娘、カサンドラが分かるような、分からないような説明をする。


 ここは宿屋の1階にある食堂だ。建物の正面入口から中に入るとカウンターのあるフロアが広がり、左に食堂、右には客室がある2階に続く階段があった。この食堂は宿泊客以外にも大勢の人間が食事をするために訪れる人気の店でもあった。もちろん今は真夜中なので一般の客はいない。侵入者はこの正面の入口から押し入ってきた。鍵は壊され扉は開いたまま、風でカタカタと揺れていた。さすがにこのままにはしておけず、宿屋の主人は応急処置で開きっぱなしの扉を直した。しかし夜盗の襲撃後、ルルドールたちの泊まっていた部屋は全く使い物にならない状態だった。


 三人が切り盛りするこの宿屋は2階建てで、1階は食堂と宿屋家族の住居になっており、2階には客室が全部で10部屋あった。中心地から少し外れた場所にあるこの宿屋は周囲に人家が無く、静かで落ち着いた環境を売りにしていた。しかし、今回はそれが災いし、夜盗たちは音など気にする様子もなく、宿を破壊した。


 ルルドールたちは1階に繋がる階段付近の部屋を使用していた。真夜中の侵入者達との大立回りで宿は入り口から彼らの部屋の中まで酷い有り様に変わり果てていた。破壊された扉、階段には剣が刺さっている。部屋の壁や床は血だらけでところどころ、凹んでいた。


 これでは改修が済むまで数十日間も営業することが出来ない。そんなことになればこの家族の生活はすぐに立ち行かなくなるだろう。改修費に加え、その間の収入の補償と大切な家を壊してしまった事への慰謝料。そういった意味合いもあり、ルルドールは金貨5枚をカサンドラ渡したのに、彼女はいくらなんでも多すぎるので返すと言い出した。


「もー!そんなのは黙って貰っちゃえばいいんだよ。カサンドラはホントに正直者だよね。顔だけじゃなく心も綺麗なんだね!」


 なんて妖精王子じきじきに誉められてしまい、かえってこちらがお金を払いたい気持ちにさせられた。カサンドラはこの気前のいい王子を助け、いかに城内に忍び込ませるかが自分に与えられた使命の様に感じ始めていた。


 そして、これまた義理堅く、妖精王子の『お願い』を叶えるために先ほどの憲兵、ダン、ロイド、エスターは生き残った夜盗を牢屋に叩き込んだ後、早々とこの宿に戻って来た。そしていよいよ今から『輝け!第1回妖精王子城内潜入方法検討会』が始まろうとしていた。その会議?で先陣切って意見を言ったのがカサンドラだった。


「金髪でサファイアの瞳って目立ちますよ。凄く。」


「じゃあ、どうしたらいいんだい?ルルドール様はルルドール様なんだから仕方ないじゃないか。」


 ダンが言った。


「そうか、ルルドール様がルルドール様じゃなくなればいいんだよ。」


 ロイドが言う。


「それで、ルルドール様をルルドール様にしない方法はあるのかい?」


 エスターが尋ねた。……もうなにを言っているのかさっぱり理解が出来なくなりそうだ!クリストファーはため息をついた。


「はあ、全く、意味がわからん!じゃあ、あいつを性転換でもさせて、女にでもするか!?」


 あまりの馬鹿馬鹿しさにとうとうクリストファーが茶々を入れ始める。すると突然、


「「「「それだっ!!」」」」


 皆、一斉に叫んだのだった。 


「ああ、なんで気づかなかったのかしらっ!その手があったわ!!さすが、クリストファー様!」


 カサンドラは興奮した面持ちで立ち上がり、調理場に入っていった。そして一枚の紙を持って帰ってきた。


「皆さん、これを見てください。」


 差し出された紙は舞踏会開催の知らせだった。カサンドラは城勤めをしている友だちにこの紙を食堂に貼るように頼まれていた。もちろん、この舞踏会にカサンドラ達のような庶民は参加できない。しかし、自国の女王を祝おうという動きが国民全体に広がりを見せていた。


 辛く苦しかった10年前、女王は国民に寄り添い、お互いを励まし合いながらイール復興の為、力を尽くしてきた。今までこんなに身近に感じる王がいただろうか?この王になら命を預けられると彼らは思った。たった16歳の少女が10年もの間、祖国の為、国民の為に、ひたすら走り続けて来た事を彼らは知っている。だからこそ、女王の花婿選びはイール国民挙げての一大イベントになっていた。まるで我が子の結婚を祝う親の様に彼らは喜んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ