アウトローに学ぶ異界生存戦略.60
俺はもうどうしていいか分からずに組みあう二人に近寄り、次はマウントをとってショーイの首を絞め始めた亡者の身体を蹴り飛ばす。
脚力任せの一撃で体は宙を舞い壁まで吹っ飛んで激突する。
頭にも蹴りをお見舞いするとショーイの肉に歯を何本か残しながらもボールのように剥がれ落ちた。
ショーイの腹からは血が流れていたが伝う血が地面に落ちる量から軽傷だろう。
死に物狂いで絞められた首には青黒い絞め痕がくっきりと残っている。
俺は乞われたままに拳銃を渡さなかった情けなさと、あの記憶を掻き乱された辛さと怒りから亡者の首を激しく蹴りつける。
そして、そのまま立ち上がろうとする亡者の首なしの身体を張り倒すとその心臓を踏み砕き、右足にバキバキと骨が砕ける音と共に床を踏みしめる感覚が伝わってきた。
べっとりと血が付く。
広がる液体はどす黒かったが嫌に新鮮な血の匂いがした。
自分の心臓が破壊されるのを瞼をパチリと開きながら見上げてくる亡者の骸骨のような顔。
今度は容赦はしない。
近づくとその半壊した頭部を強く踏みつける。
ひしゃげる頭部。
まだだ……
さらに強く踏みつける。
こんどは柔らかい頭部内の脳みそを潰す感覚が足から伝わる。
さらに踏みつける。
飛び出た眼球を潰す。
さらに踏みつける。
鼻と口のあった部分から変な空気が漏れる音がして、頬骨を砕く。
さらに。
さらに……。
眩暈がする。痛いのは踏みつけられた亡者の方であろうに、俺の頭をズキズキと鈍痛が蝕む。
やがてミンチとなった脳髄から液体が広がり、俺はその生暖かい温度を感じていた。
この亡者は亡者ではなかったのだ。
生きていたのだ。
ふと思った。
俺はこの超人的な脚力で人間を蹴り殺したのだと。
それを否定する材料は幾らでもある。しかし、俺の脚から伝わる生き物の温かみが俺を不安にさせた。
「カーマ様!もう終わりです!倒したのです!」
引き連れた冒険者の言葉に頷く。
後ろで横たわっているショーイを見る。
荒く呼吸をしながらも目を閉じて安堵しているようであった。
目をつぶったままショーイが言葉を発する。
「もう少しだ。辛抱もこれまで……。ダンジョンの力を再び弱めれば終わる……」
――ぱちっ。
瞼を開ける。
――ばちり。
瞼を閉じる。
城からの視線はますます強くなる。
その視線には明らかに意思が宿っている。
無機質な視線は俺たちへの興味を孕み、凝視し続ける。
それを感じているのは俺だけであるようだ。




