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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者:
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界生存戦略.31

 僧兵に続く形で突入した俺の視界に飛び込んだのはダンジョンの壁という壁に張り付いている糸であった。

 それは触れてはいけない物だとは直ぐに分かった。


 糸に包まれている袋がいくつもある。ひっかかって抵抗する巨大な虫のような魔物もいる。


 通路に張り巡らされた糸には獲物がぶら下がり、ここが狩人の腹の中だということを意識させた。


 見渡してもダレス等の姿は見えない。

 周囲の糸の袋の中にいるとすれば確かめる事すらできない。

 この辺り一帯が既に罠なのだ。

 しかし、僧兵は怯むことなく突き進む。仲間の生がまだ確かなうちに助け出したいのだ。

 通路は奥に進むほどに広さと高さを増していく。

 狩人の力によって生み出されたキルゾーン。

 この世界に潜む物こそ、異貌となった第一階層で数多くの冒険者を屠る支配者なのだろう。


 俺は腰のリボルバーをいつでも抜けるように露出させると、僧兵の後ろから息を潜めて糸に絡まらないように進んでいく。


 広がっていく視界には天井まで糸が伸びている。

 ネクロパレスが単なる地下道だという面影は何処にもない。

 完全に魔境の中の雰囲気を漂わせている。


 僧兵が目指す物はこの狩場のボスである狩人の命の灯。

 既にダレスの持っていたはずの松明の火は消え、どこにいるかも判別がつかない。

 ならば支配者を討伐し、長い時間をかけてでも仲間を見つけ出す考えなのだろう。


 俺としてもいつ襲われるかも分からぬ中、彼の仲間の救出を手伝う気にはなれない。

 後ろをダーヴィルが着いてくる。彼はその表情をさらに硬くしている。


 彼は案外頼れるのかもしれないと思った。

 こんな状況でまだ神官を守るという果たさなくともよい命令に従っているのだろう。


「カーマ様、これはやはり……」

 狩人の正体は予測はついている。

 慣れた冒険者でなくともこのゾーン形成の特徴から何がいるのかは判断できるだろう。


 内から浮かび上がる不安はどれだけその魔物が強いかの一点のみだ。

「蜘蛛か……」


 周りに囚われている他の魔物たちも相当危険な生物だろう。だが、このどこかに潜んでいる狩場の主ほどではない。


 周りの壁が光っているように見える。

 天井を見るとおそらく地上まで続くだろう穴が見える。

 そこから漏れた光が、何かに反射しているのだ。


 内部は未だ薄暗いが、多少は先の方まで見える。これならまだ戦える。

 甘い考えだろうか?


 何処までも続くかと思われた広がる洞窟が収束していく。

「上を……!」


 天井にぶら下がるのは多数の繭。

「……!」

 卵だ。


 天井を埋め尽くす無数のぶつぶつは、卵だと認識できる。いやでも判別してしまう。

 絶望的だ。


 イノシシほどの鼠と人ひとりを軽く引っ張り込む力を持った蜘蛛。

 その眷属たちが今にも生まれてきそうな雰囲気である。


 強者の巣の中、弄ばれるように蹂躙されるイメージが脳裏にこべりつく。

「なんなんだよ!ここは!」

 僧兵がついにヒステリーを起こし、地表にまで蠢く繭の一つをハンマーでぶっ潰した。


 男の表情は、焦燥に憑りつかれていた。

 潰された繭からは鶏の卵が潰された時のような音と共に液体が飛び散る。

 僧兵は液体を浴びながらも手短な卵を次々と叩き潰していく。

「ダレス!何処だ!スイ!俺はここだぞ!」

「おい……騒ぐと」


「黙れ!」

 僧兵は凄まじい形相で俺を睨む。その表情は今にも崩れそうだ。

 危うい均衡の上で精神を辛うじて保っているのだ。


 冒険者であるなら死線を潜り抜けてきたのだろう。

 だからこそ今の状況が導き出す仲間の『死』という答えに抗っているのかもしれない。


 俺の肩を後ろからダーヴィルが掴む。

 振り向くと恐怖と獲物を見つけた歓喜のようなイカれた笑いを堪えていた。


 ダーヴィルが指を口元に立て、音を立てるなとサインした後に指を刺す。


 視線を這わせなくともわかる。

 ついに見つけたのだ。

 狩人を……。


 いや見つけられたのかもしれない。

 狩人に。

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