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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者:
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界生存戦略.29 第一階層

 ダレスとその仲間二人を先頭に、割り当てられた経路を辿る。

 後ろはダーヴィルが警戒してくれているが、第一印象の悪さから気が散ることもしばしば。


 未踏破地に入りしばらく進むと待ち構えていたかのように二手に道は分かれていた。

 右からは風が唸る音が聞こえる。ということはこちらは城にでも繋がるのだろうか?


「右の経路を進めと言われていますが……。どうしましょう?」

「自分たちだけで判断して動くのは危険です。指示通りこの道を進みましょう」

 より安全そうな道を進めることは俺としては願ったりかなったりである。


「では」

 ダレスが指示を出すと、仲間の僧兵の男が両手もちのハンマーで手ごろな石ころを粉々に砕き、それを積み上げ進むべき道の方へと目印のように配置する。


「念のために」

 そういうとダレスは腰から皮の水筒の一つを取り出し中身を地面にぶちまける。

 中には雑草をすりつぶしたような青臭いドロドロの液体が入っていた。


「気付け薬として調合してましたが、なかなか使いどころがあって幸いです」

 青みがかった液体は乾燥してもその青みを残すらしい。

 こんなゲテモノを飲まされる身にはなりたくないと心底思った。


 そしてまたダンジョン内を彷徨い歩く。


 聖火を灯した松明の照度は次第に弱まっていく。

 その度に衣服を剥ぎ取り巻きなおす。これで繋いでいくしかない。


「瘴気がこのように目に見えるとここまで薄暗くなるとは思いもしませんでしたよ」

 ダレスに続く女槍使いが笑いかけてくるが、そのような話をする余裕は俺にはなかった。


「神官様も気をお張りにならなくとも我々がついています」

 勇気づけるために話しかけてきてくれているのだろうが、それよりも警戒を厳にして欲しいと思ってしまうのはいけないだろうか?


 ダンジョンの通路は意外に広く、地下通路と言われた時の狭苦しいイメージを払拭した。

 これもダンジョンの異界化が原因らしいが、このように広くなるのがダンジョンの特性であるなら第二階層に確認されていた礼拝堂も今もそこにあるのかさえ不明である。


「ダレス殿……」

 異変に気付いたのはダーヴィルであった。


「この少し先は空間が開いているようです」

「空間というと……」

「ダンジョンフロアの部屋でしょう。そこから風の音がしているようです」


 ダレスは恐れ知らずのようにどんどんと先に進んでいく。

 松明を持っているのはダレスなのだからあまり先に行かれると辺りが暗くなって仕方がないのだが……。


「――どうやら天井の穴から風が吹いているようです!」

 先の方から声が聞こえる。ダレスの姿はこちらからは見えず、ただ松明の明かりだけが見えている。


「――周囲には。うわっ!」

 ダレスが何かを見つけたようだ。

 冒険者たちと共に松明の下へとひた走る。


 ダレスは穴に落ちそうになっていた。

 踏ん張りを利かせ体制を戻すと悪戯っ子のような明るい声でダレスが笑う。


「いやぁ見落としてました。どうやら階段ではなく通れそうな穴で階層を潜るのかもしれませんね」

 近づいてみてみると穴からは下には石畳が見える。

 明かりが付いているようだ。


「ここは洞窟でしたから、もしかしたら元の第一階層である地下道が第二階層へと動いているのかもしれませんねぇ」

 ダレスは感慨深げに穴の下を眺めている。


 その時。


 けたたましい雄叫びが通路の先から反響してきた。

 そしてすぐさま乾いた足音が部屋内にまで聞こえてくる。


「ダレス!魔物!」

 女槍使いに尻を叩かれ、ダレス等冒険者は通路からすぐに扇状に陣取り始めた。

 部屋に入ってきたところを仕留める気だろう。


 キルゾーン形成による見敵必殺。

 敵が通路から出た瞬間、それを狙って常に三体一で仕留めようというのだ。

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