アウトローに学ぶ異界生存戦略.28
聖火の燭台がある廃寺院入り口には、新たに迷い込んでしまった冒険者に状況を知らせるためカルナ等数名を残す。
聖火が途切れてはこの閉ざされたダンジョン内で安全な場所はなくなってしまう。それだけは防がなければならない。
燭台に聖火が灯っている間の効力は絶大のようで松明に灯した場合とは全く違うらしい。
特殊な工程で作られた聖品ということなのだろう。
そして、寺院にすし詰めになっていた冒険者たちを使いダンジョン内を制圧していくという単純な人海戦術を執ることになった。
「安全を優先して探索する時間はない。各パーティは担当経路を通りダンジョン内を侵攻、分かれ道に出たらその度に別れて探索を続けろ。もちろん地図を作る時間などない。」
ショーイは冒険者らを二三人の組に分けさせ、その中に経験の少ない僧なども混ぜていく。
「最低人数は三人だ。最低人数で分かれ道に出たら右から順に侵入。後から来る組のために自分たちが侵入した道を示す印を必ず記すこと!」
「ショーイ神官様。我らは神官様方をお守りするのが役目です。誰か一人は就けてもらえませんと」
「そんな下らんことで戦力を偏らせるのは――」
渋い顔をするショーイ。しかしジョアルは与えられた役割を果たすためにも食い下がってくる。
「仕方がない。ジョアル。貴様は私に付いてこい」
そして俺を指さして「カーマはダーウィルと共にだ!」と指示をだす。
俺自体カルナと負傷者と共にここに残るつもりだったのだが、許してはくれなさそうだ。
ショーイを疑うような気はないが、自分と同じ組に俺を入れなかったということはここで俺を害しようという気はないのだろう。
「他の者の死体をみたら絶対に首だけは潰しておけよ!」
「瘴気によって自然とアンデッドとなるのを防ぐためでしょうか?」
「もちろんだ!仲間だろうが例外は許さんぞ!」
そうして冒険者のパーティにショーイは加わり、俺はダレス等と共にダンジョンに潜ることとなった。
俺をダレス等と同じ組にしたのは彼なりの気遣いなのだろうか?
リーダー格のダレスと一緒であれば俺の生存率は格段に上がるだろう。
――まあ危なくなったら逃げ出すのだが。
渡された杖を両手に持つ。
人との殴り合いも大して経験したこともないのだ。魔物とどう戦えばいいのだろうか?
素人が無駄に動いて仲間を危機に陥れるわけにもいかんな。
俺は戦うことをすっぱり諦め、後ろをただ付いていくことを決意した。