アウトローに学ぶ異界生存戦略.27
ネクロパレス内部、第一階層を突き進む。
聖火を松明に灯し、周囲の様子を隈なく探索。そしてスクロールへとマッピングをする。
「はははっ、これは面倒だな」
戦闘を歩くショーイが苦笑気味に独り言を呟く。後方に伴ったジョアル、剣闘士風冒険者ダレスとその仲間のハンマー僧兵と槍使いの女は異界迷宮となったダンジョンを踏破していく。
本来の形状を歪めてしまったダンジョンは、生き物のように唸りを上げながら入り込む者たちを奈落へと誘う。
松明の照らす先、力尽きた様子の冒険者が三つも壁にもたれかかっている。
「警戒を怠るな……」
杖でつつくも反応はない。
次に勢いよく叩く。
「よし」
「ショーイ神官様何を!?」
遺体から遺物を漁る神官の様子にジョアルが戸惑う。
「お前も持っておけ」
草臥れた円形の木盾を押し付け、自分はナイフを懐に忍ばせる。
「剣やなんかも使えそうだな……。あと衣服も必要ないだろう」
「神官様……」
「なんだ貴様、こういうのは初めてか?なら私に従っていろ。死にたくないならな」
そう言うと死体から衣服を剥ぎ取りはじめた。
―――
――
カーマ神官は廃寺院でショーイの帰りを待っていた。
こんな事態に順応できるのは経験が豊富な人間である。
冒険者たちは今の事態を体験したことがないようだが、ショーイは違ったようだ。
聖火にくべる燃料が足りない。
聖火の灯といっても絶やさず燃やさなければ意味がない。だからこそ冒険者や巡礼者が往来するというのは重要なのだそうだ。
ダンジョンがある所が繁盛するのではなく、常に人がいなければならないということなのだろう。
ショーイの口ぶりからは人の手に管理されないダンジョンの恐ろしさを知っているようだ。
周辺の同人種と戦争をするタイタニア人はダンジョンの使い方を弁えているということだ。
戦乱となり敵地を襲撃、敵領土の奥まで浸透したら最も効果的な場所に位置するダンジョンを荒廃させて魔物のアウトブレイクを起こし敵の領地を蹂躙させる。
ダンジョンとは見える災害なのだ。
「ふうううぅ……」
地下道への入り口から全身正装の神官が現れる。ショーイのご帰還だ。
「とりあえず安全を保障できるエリアまでは行ってきた。複数の分かれ道があるが、ほとんどはダミーだろう。本命の道には必ず死体が転がっている」
経験則というものだろう。
「カーマ神官。どういたします?」
スクロールに記された道を見て考え込むのを横でカルナが見つめてくる。
「団子状態でダンジョンを行くのは危険……か」
「当然だ!」
ショーイが嘲笑気味に吹かす。
「だからと言って分担して探索するというのも……」
「時間が足りんな。聖火が燃え尽きればこの場所さえ危うい」
持って帰ってきた剣を指でなぞる様にして答える。
「神官様方。名もなき城にも聖火は灯っています。まずはそこにいるであろう他の者との合流を優先するべきかと」
この場の冒険者の意見を取り纏めるリーダーであるダレスの言うことも最もだ。が……
「あちらから来れるのなら既に来ているはずでは?」
「……そうかもしれませんが」
「もしかしたら既にあちらの聖火は消えているのかもしれない。だとしたら無駄足になるかと」
「ですが、この数で異空間の連なりと化した迷宮を彷徨うというのも――」
なかなか方針が決まらないその様子にショーイが一声呟いた。
「こちら側にいて変異に巻き込まれた冒険者たちはダレスが取り纏めている。内部で見つけた死骸はグループから生き急いだ離反者でもないようだ……。つまり――」
「つまり……?」
「私が見つけたのは城側に逃げ込んだ者だろうというのが私の考えだがね。それがこちらに到着する前に何か第一層の脅威にさらされ命を失った。」
「この異変を抑え込む方法はご存じなのでしょうか」
ダーヴィルはいたって冷静を装っているのか本当に危機的状況に何も感じないのか。
「簡単だろう?原因を切り分けることだよ君」
ショーイは剣を横なぎに素振りをする。
「……聖地の奪還だよ」




