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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者:
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界.19

 イガ将軍の二の腕の血管は凄まじく猛る様子で、片方の手に握った長剣バスタードソードが陽光に照らされている。

 そして反対にはかなり特徴的なタワーシールドを装着している。

 この"装着"というのがミソで、彼の左手の小手はタワーシールドをマウントする細工がしてあるようだ。小手というには大きすぎる手首から肘にかける装甲にはタワーシールド側の凹凸を肘側からはめ込み手首側までスライドさせるというはめ込み式になっていた。

 重さで腕を振りづらいなどの欠点があると思うが、巨人が大盾を構える光景は示威的効果もあるのだろう。

 先陣を切って斬り込む巨人の光景を思い描くがとてつもなく恐ろしい。

 この時はまだこのストロングビーストが将軍格だとは思いもしなかったが、その武具の絢爛豪華さには最低でも決戦兵器ぐらいの扱いなのだろうと感じていた。


「うぬ。どうやらヤヌ神は我々に試練を与えたもうたようだ……」

 巨人が人語を語る様子を少尉たちは見上げていた。そして、俺もまた愕然としていた。

 あまりのインパクトにコレが人間だとは考えがつかなかったのだ。

 見た目の獣臭さは見間違いのようで、どうやら毛むくじゃらではなく、ただ日に焼けた肌とその髪が巨大な彼を魔物と錯覚させていたようなのだ。


「そこの御方を解放せよ。さもなくば貴様らの残骸を荒野鼠の餌としなければならない」

 フーガ少尉は巨人から瞳を逸らすことなく、俺を鞘に収まった銃剣で小突いた。

「いけ……」

 武器を捨てる様子はない。つまり隙をついて死線から逃げ出そうというのだろう。

 俺は後ずさりしたい気持ちを抑えてイガ将軍へと近づいて行った。

 あれだ。野生の獣に背を向けて逃げると襲われると思ったからだ。


「マダイラの神官様とお見受けしましたが、なぜこのような者共と行動を共に……?」

 

 ここだ。

 このイガ将軍の発言がヒントだ。


―――――

―――


 イガ将軍は他の者(魔法を判別できるような神官など)に話しかけられていた様子は見ていない。

 もしも、テレパシーのような魔法があり、遠くから俺と少尉たちを区別した者がいたとしてもやはりヤーラカーンではブリュータス帝国人の魔法的能力の特徴が解っていたのだろう。


 ということは、驚くことにイガ将軍は魔法やマナに適性のあるヤーラカーンの神官位でもあるのかもしれない。直接聞けば教えてもらえるのだろうか。


 しかし、これで分かった。

 ブリュータスはマダイラの地以外にも、少なくともヤーラカーンには戦線を広げているのだろう。実際に何度かブリュータス帝国兵とも戦ってもいるのだろう。

 ブリュータス帝国は周辺国を裏から操作し高みの見物をするなどといった狡猾な手段はしていないようだ。やろうとしたが失敗しただけかもしれないが。

 ヤーラカーンに敵対する周辺国と足並みをある程度は揃えているのかもしれない。

 しかし、困った事になるのかも……。用意した策が機能しないという最悪の結果が脳裏を過ぎる。


 とりあえず帝国との戦闘行為があったかもそれとなく聞いてみよう。

 その情報によっては帝国の侵攻部隊が想定より遥かに大規模な可能性も考慮しなければならない。


 その場合は仕方がない。亡命を考えなければならないだろう。

 裏切り者と謗られるのも異世界出身の俺には関係ない。

 右も左も分からない世界でまずは生活基盤を固めることが最優先だ。

 奴隷にはなるべくなりたくないので、集めた情報をなるべく高く売るのだ。


 そしてヤヌ人にとっての『冒さざる血』の部族という稀少価値が付き、少尉たちが手当たり次第に殺し、売買することでさらに希少な博物学的生物。自称文明人が荒らしまわったので誰が本当のマダイラ族なのかは誰にも分からないだろう。

 であるならば、大国ヤーラカーンから認められたマダイラ族神官という地位は役に立つはずである。

 少尉のような学者肌の人間が大陸には大勢いるという浅はかな計算の下にではあるが、帝国本国にまで行ってしまえば俺のパトロンはいくらでも釣れるだろう。

 俺の嘘がばれるまでの間は、という条件付きではあるが。

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