アウトローに学ぶ異界.18
ショーイ(元フーガ・ハートリー少尉)の行動にも疑念が残るが、それよりも俺カーマ・ケージを神官と目した連中がなぜショーイを神職、もしくはその聖なるオーラ(魔力を扱うものに現れる残り香、硝煙のようなものだろう。)により偉大なるヤヌ神族の使いなどと判断しなかったのかそこが解らない。
たしかにヤヌ人とタイタニア人の人種的違いはあるようだが、そうだとしても彼らが敵としてはっきりと認識していた理由が分からない。俺が知らないだけかもしれないが。
もし、既にブリュータスとヤーラカーンが衝突していて敵の見た目などの情報が流れているにしても、同じ服を来た俺をしっかりと区別しているというのはあまりに不自然なように思われた。
少尉の話では魔法への適性が十分あれば引き出すことは造作もないようで、契約魔法をきっかけに目覚めた俺のように魔法に過敏な者が他にまったくいなかったというのも変だと思う。
――あ、結局契約魔法とは何だったのか……。
少尉らへの尋問(といっても大王らに話した策のための下準備の時間。)の際に、何やら俺に契約の効力が及んでいないとかなんとかブツクサ言っていた。他の奴隷に対しても仮契約で、たしかに効力が発揮されているのか確認していなかったようで、あまりのザル契約に呆れてしまった。
タイタニア人に対しては絶対服従の契約なのだろうが……。
ああ、こういうことかもしれない。
そもそも文字はヤヌ人とタイタニア人の物で違う。魔法で精神を縛るのだとしたら文字の意味を理解していない者には聞かないのではないか?
ううむ、何かこれも違う気がするが……。
ああ、こっちであるかもしれない。バベルの塔で神の怒りに触れ、人々の言語が枝分かれしたように、この世界の神(と呼ばれる物)の管轄が言語なのだ。つまり、異なる文字というのは異なる神の管轄内であるということで、その神を信仰している者にしか複雑な精神異常系魔法は効力を発揮しない。
とここまで考えて、あまりの馬鹿馬鹿しさに思考を放棄する。
こんな妄想をいくら広げても仕方がない。
それはそれとして、なぜ俺は神官と目され、少尉等は敵とはっきり区別されたのか。
やはり大聖堂のヤヌ神関係の神官などが関係しているのだろか?
あのような幼い大王を神の化身などと担ぎ上げるような輩だ。
あのくっさい大臣らと裏で繋がっていたりなど邪推してしまうのは当然だろう。
現在の時間軸でぐだぐだ言ってもしょうがない。
少尉らとキャンプ地へ引き返す途中で救われたわけで、あの時はがむしゃらであったから所々曖昧な記憶であるが思い返してみよう。それが俺の知らない情報へのヒントになるかもしれない。
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俺と少尉らブリュータスの服を来た者たちの周りを、金の胸当てをした精鋭たちが取り囲む。
その鶏冠やライオンの鬣のような装飾。武器はとても磨き上げられている。
少尉の近代武装と比べると見劣りするが、それでもヤヌ人の脚力である事を考えれば、ただの歩兵でも騎兵並の化け物だ。
少尉等は銃口を向け威嚇はするが手出しはない。圧倒的戦力の前に戦意喪失してしまっているのかもしれない。
ゴブリンといえば、この隊列すらお構いなしに包囲してきた原始の戦士たちに腰を抜かして今にも泣きだしそうだ。体を縛られていなければ、頭を抱えて見つからないように体を丸めてただただ怯えたいといった雰囲気だ。
そうして両者のにらみ合いが暫く続く中、少尉の部下たちがせせこましい状況に耐えきれず包囲された状況から脱しようと少尉の命令もなしに勝手に行動を開始しようと、ジリジリと馬の前進を開始し始めたその時だ。
二メートルを超える真の猛獣。イガ将軍がその巨躯を現したのは。




