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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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特別編:感謝を捧げる・奇跡の産物

みなさまチョコ食べてますか?


作者は甘いモノは苦手なので、バレンタインデーでチョコを貰った時はコーヒーで流して過ごしてます。

今年も頼むぜ、黒い相棒!

2月14日。別名バレンタインデー。

この日も年末の聖人の誕生日同様、いやそれ以上に天国と地獄に別れる運命の日。


それはCWOでも例外ではなかった。薬草についてアリアさんから学んでいるときに訪ねてきたアリサさんが持っていたモノがそれを証明した。


「チョコレートですか、それ?」

「あ、アルケさんも知ってるんだ。古くから伝わる魔法のアイテムだからかな?」

「魔法のアイテム?」

「うん。作った時は同じなのに渡す人によって大きさやデコレーションが変化するんでしょ?」


ナニソレ怖い。


「俺が知る限りだと女性が好きな異性に渡したり、女性同士で交換したりしてるな。渡す相手によって大きさやデコレーションを変えてるけど」

「そういえば魔法が無い文化でしたね。私には全く想像できないですけど」


魔法が無い代わりにCWOには家電が無いんだよな。ドワーフ族エリアならもしかしたら車くらいはあるかもしれないけど。

可能なら炊飯器くらいは実装してほしい。お米は正義!


「アリアさん達は誰にあげるんですか?」

「私はお父さんとアルケさんだけですね」

「私も同じだね。あまり異性で仲がいい人いないし」


どうやらこちらでも異性にあげるものらしいが、それ以上に嬉しいことを聞けた。俺も男である以上、バレンタインでチョコをもらえるなら喜んでいただく。


アリサさんが来たらアリアさんもチョコ作りを始める予定だったみたいで、本日の講義は終了。帰ろうと勝手口を開けたところでアリサさんが声をかけてきた。


「あ、忘れてた。アルケさんは当日『水仙』に寄ってね」

「なんで?」

「ティニアが『遊女の皆さんがチョコを用意してる』って伝えてくれって」


なんと、総勢30名以上からチョコをもらえるだと! これは過去最高の一に『パリン』ちになる……うん? 何だ今の音は?


「ちょっと姉さん! 大丈夫!?」

「エエ。スコシ、オドロイタダケヨ」

「大丈夫じゃないよ! なんか黒いの溢れてるよ!?」


俺からは見えないが、状況的に調薬に失敗したのだろうか? まあ当日が楽しみだ!





そして迎えた当日。

今年の暦上、2月14日は土曜日なので週休二日制を導入している我らが母校はお休み。

「俺達の義理チャンスがー!」と嘆いている集団とそれを冷たい目で見ている女子というお約束な展開をした昨日から明けた日。


俺は完成した昼食を持ってリビングに入る。いつもならキッチンの近くなのだが今日は人数が多いのでリビングにテーブルを移すことにした。


ちなみに、増えた人数は両親ではない。


「ほら、グラタンできたぞー」

「待ってました!」

「さすがお兄ちゃん!」

「聞いていた通りですね。美味しそう」

「早く食べよう!」

「心ちゃん、そこにいると置けないからどいてあげて」


口調だけでわかるかもしれないが、今リビングにいるのは空・努・心ちゃん・栞ちゃん・世良ちゃんだ。後輩三人がいるのはわざわざ俺と努のためにバレンタインチョコを作って持ってきてくれたからだ。ありがたやー。


昼食後に食べたそれらはそれぞれの個性があってとてもおいしかった。


しかし努? 涙が出るほどうれしいのかお前?





腹ごしらえをした後はCWOへダイブ。努は俺の部屋から、後輩三人は空の部屋から機器をつないでダイブしている。


機器を同じにしたことで努もアトリエからスタートとなってしまい、そこで一波乱が起きてしまった。


「おはよう。これチョコ」

「おはようございます。コレ良かったら食べてください」


出会い頭にセリムさんとエイミさんからチョコを頂く俺。受け取ったまま努、じゃなかったラインに振り向いたらいきなり首を両手で絞められた。


「何で!? 何でお前ダケ!!」


セリフの最後の方で力が強くなりもう少しで意識が飛ぶところでエイミさんが魔法を放って救出。その後「バカヤロー!」の言葉と共にアトリエから去っていくライン。


向かう先はブレイズのギルドホームだと思うので念のためアーシェに『そっちに狂乱したラインが向かってるからよろしく』とメールと打っておいた。

しばらくして『任せて♪』と返ってきたので問題ないだろう。


……♪マークに一瞬寒気を感じるが気のせいに違いない。



二人と軽く話した後、納品のためルーチェに向かう。「ここ最近は納品が多かったのに今日は少ないな」と思っていたが、ルーチェには長蛇の列ができていた。


急いで空き家に設置した転移魔法陣から中に入ると、ちょうど休憩中だったマリルさんがいた。


「すいません! 急いで補充を!」


焦る俺に対し、マリルさんは慌てることなく、なぜかため息をつきながら納品を受け取った。


それで急を要する事態ではないと察し「行列の理由について心当たりがありますか?」と訪ねると「クララとクラリスがチョコをプレゼントしているのです」と答えてくれた。

なんでも二人はこの機会に自分を訪れる客を増やそうとティニアさんに提言したらしい。

ティニアさんも「お客さんが増えるならそれくらい許してあげる」と答えたらしく、それ目当てで長蛇の列が完成したということだ。


「どうりで今日は納品が少ないわけだ」と納得し、納品分を渡す。マリルさんも「今日は売上期待できないですね」と苦笑いを見せ、俺に三人分のチョコをくれた。


これまでもらったチョコは全てランクR。アリサさんが言っていた大きさやデコレーションはランクごとに異なる仕組みらしい。参考までにランクRはハート形のチョコの表面に生クリームでチョコより一回り小さいハートが描かれている。

この時点で「義理のレベル超えてないか?」と思ったが、ランクRなら多少は高級品扱いなのだろうと解釈した。


ついでに言うとこのイベントチョコレートは女性プレイヤー全員にも配布されており、ルーチェに来るまでに女子同士で交換している光景もいくつか見ている。

…………それをうらやましそうに見つめている男性プレイヤーもいたが。


当然ながらエルジュたちにも配布されているが、それらはヴァルキリー内部で消費されることになっている。まあ、現実でもらってるから十分だ。






ルーチェから転移してアトリエに戻り、『水仙』に転移する。転移すると転移部屋にはすでにティニアさんが待機していた。


「こんにちはアルケさん。どうですか、コレ?」


くるっと一回転するティニアさん。いつも通り紅い着物だが黒のさし色が施され、袖に刻まれた金色の模様と所々に散りばめられた桜の花びらがいつも以上に豪華に魅せている。


「とても素晴らしいと思いますよ」

「あら、つれないですね」

「こういう時の受け答えに慣れてないんですよ」

「なら、今度練習してみますか?」

「遠慮させてください」


将来的に役に立つかもしれないがCWOの中でまで勉強はしたくない。ティニアさんも冗談のつもりだったらしくそれ以降は話題にしなかった。


ティニアさんに付いていくと大広間に通され、そこには遊女の方々が勢ぞろいしていた。途中から部屋に入ってきた人もいたが、おおらく接客中だったのだろう。それなのにわざわざ渡してくれたことに感謝する。

それにしても一人一人から手渡しでチョコをもらったのはうれしいのだが、遊女の方々だけで合計54個。これまでにもらった五人も含め、全部食べられるのだろうか。


そして最後はティニアさんと思ったら「それでは移動しますね」と言われ、大広間から出ると階段を上がって行く。辿り着いたのはおなじみの『フライパン部屋』で、中にはアリアさんとアリサさんもいた。二人ともアリサさんと初めて会った時の着飾った服を着ていた。


「どうせならみんないっしょに渡したいと思ったので」


アリアさんの好意を嬉しく思い、三人からもチョコを頂く。


遊女の方々からもらった中にはランクHRも含まれており、「すげっ!」と内心驚いていたのだが、三人からもらったのはそれ以上の驚きだった。


(ランクSRにランクLd!? しかも二つ!?)


三人同時に受け取ったので誰がどれかは分からないが、それほどまでに慕われていることに感動し、思わずうれし涙を流してしまう。

それを勘違いして慌てる三人を何とか落ち着かせ、せっかくなのでこの場で頂こうとすると「「「恥ずかしいから止めて!」」」と言われてしまったので断念。


その後少しお茶を頂いてから『水仙』を後にした。


実はもう一件約束があるのだ。





現実ではすでに夕方の時間、俺は目の前のドアを開ける。


「ぃらっしゃーーーぃ」


ある程度想像はしていたがそれ以上に疲れた声で、しかもカウンターに伏したまま声を発する目当ての人物。しかしだるそうに顔を上げて入ってきたのが俺だと確認するといつもの、いやいつも以上に明るく、ついでに慌てた声を発した。


「あ、あああ、 アルケさん! 来てくれたんですね!!

「うん。約束したからね」


カウンターから勢いよく立ちあがったシュリちゃんを落ちつかせ、せっかくだからと奥に入れてくれた。擦れ違いに入り口に向かったシュリちゃんは『本日の営業は終わりました』と書かれた木製の看板を掛けていた。


「すいません、何も無くて」

「確かに、これは驚いたかな」


実は奥、つまりシュリちゃんの自室に入るのは初めてだったが、壁には渾身の出来なのか一本の剣が飾られているだけで他には最低限の家具しか置いてなかった。


「どうしても、鍛冶で精一杯になってしまっちゃうんです」

「まあ、俺も似たような感じだしな」


実はアトリエにも俺の自室があるのだが、現在そこはセリムさんの部屋になっている。アトリエにいるときは大抵調合の実験をしているが、いつでも【錬金術】を使えるよう窯の近くにいるため、部屋を全く使わなかった。それで「好きに使っていい」と言ったのだ。

なお、今ではエイミさんの宿泊部屋にもなっている。


「あ、あの、それで」


アトリエの状態を思い出していると、俺をここに呼んだ理由を思い出して顔を赤く染めるシュリちゃん。今日という日に「渡したいモノがあるので来てください」と言われればどんな用事かは想像がつく。


顔を赤くしたまま中々切り出せないシュリちゃんだが、ここで俺が「チョコもらえる?」なんて言ったら勇気を出してくれたシュリちゃんに失礼だ。先ほどカウンターに伏していたのがシュリちゃんのチョコ目当てで訪れた男性プレイヤーへの対応とわかっているだけに、ここはシュリちゃんが渡してくれるのを待つしかない。


果たしてどれくらい経ったのか、ようやくシュリちゃんの手元にラッピングされた箱が現れる。今日何度も見たバレンタインチョコが入ってる箱だ。


「あ、あの……こ、これ…………受け取って、ください!」


「ください!」のところで箱を乗せた両手を前に突き出し、頭を下げるシュリちゃん。見えないが耳まで真っ赤に染まっているところを見ると、おそらく顔はトマトにも負けないくらい真っ赤に染まっているだろう。


少しばかりクスッと笑ってしまったが、ありがたくその箱を受け取る。


「ありがとう」


本来バレンタインデーのお返しは1ヶ月後の3月14日、ホワイトデーに渡すのが定番だが、ここまで勇気を出してくれたシュリちゃん相手に1ヶ月も待たせるのはダメだろうと、予め用意しておいたモノを突き出したままのシュリちゃんの両手に載せる。


両手に新たな重みを感じたことでゆっくりと顔を上げたシュリちゃんはその手に乗っているモノを見て目を見開いて驚いてくれた。


それはシュリちゃんも見慣れている長方形の物体。しかし、いつも見ているよりも小さいが、重みは今まで体験したことが無いモノだろう。



〝聖鉄(下位)″・インゴット・HR

聖なる力が宿った鉄。持ち主の清らかな心により、その輝きが増すと言われている。

*本来備わっている聖なる力が不足している劣化品*



〝職人の心得″においても最上級インゴットの一つとされている〝聖鉄″。そして以前俺が作った〝清鉄″の中間にあたる鉄のインゴット。ティニアさんから頂いた〝生命の甘露″を〝清水″の代わりに使用し、他の材料も現状持っている最高ランクを使用して調合した結果、完成した代物だ。

実は思いつきで挑戦して成功した、偶然が産んだ奇跡の一品のため、もう一度同じ調合をしても今の【錬金術】の腕前ではおそらく一回も成功しないだろう。


シュリちゃんはじっとインゴットを見ているが、【鑑定】スキルを使わなくても【鍛冶】で鍛え上げられたシュリちゃんの眼ならそれがただの鉄インゴットではないことがわかっているだろう。

その証拠に、顔表面から赤色が一気に消え、今度は青ざめて始めた。


「こ、ここここ、これれれれれれ」

「大丈夫! 頂いたチョコのお礼だから!」


しばらくして落ち着いたシュリちゃんは一目散に工房へ突入。その後何回もハンマーが叩く音が聞こえてくる。


当然この時点でシュリちゃんが何をしているかわかっているが、シュリちゃんの【鍛冶】レベルで果たして成功するのだろうか。どのくらいまでレベルが上がっているかは知らないが、それでもあのレベルの物を使ったことはあまりない筈だ。


そんな疑問を思っていると、いつのまにかハンマーの音が百以上を超えていた。


流れてくる冷や汗にも気づかず、じっとハンマーの音を聞いているとようやくその音が止んだ。終わってから間もなく出てきたシュリちゃんの手には一本の剣が抱えられていた。


間違いなく先ほど渡した〝聖鉄(下位)″から創られた剣をおそるおそる受け取る。

白く輝く刀身、その幅が厚いことから分類的に両手剣だろう。

しかしながら鍛えていない俺でも持てるほど軽いそれを両手で載せ、能力を確認する。



〝クロスカリバー″・両手剣・SR

とある聖剣が鍛冶師の想いを受けて形を変えた姿。別名〝想いを伝える親愛の剣″。同ランクの剣とは比べ物にならない強さを秘めている。

*【剣】系のスキルの熟練度によって威力が変化する*

*【剣】スキルが無くても装備可能*



名前から由来になった剣が想像できるだけに、これがいかにとんでもない剣なのかがよく分かる。単に喜んでもらおうと思って持ってきたのがとんでもないモノに化けてしまった。

〝聖鉄(下位)″から剣を創れるシュリちゃんの腕前にも驚くはずなのだが、それ以上にこの剣のヤバさが際立ってそれどころではない。


しかし、心を冷静にしてしなくてはならない。あることを確認するために!


ごくっと息をのみ、剣に向けていた視線をシュリちゃんに向ける。今のシュリちゃんは「わたしやりました!」と全身で表現しており、どことなく興奮しているように見える。


「参考までに、シュリちゃん」

「はい、なんでしょうか!」


元気よく答えてくれるシュリちゃん。表面上は冷静な顔をしているが、心の中の俺が「予想が間違っていることを切に願う!」と必死に祈っている。


「これ、成功率は?」


俺の質問に「ハッ!」と声を上げウィンドウを開くシュリちゃん。そして見つけたそれを見て紅く染まっていた顔がまたしても青く染められていく。


頼む! その青は俺の予想とは異なっていてくれ!


「…………0.01%です」


その瞬間、俺は膝から崩れ落ちた。



よかった。まぐれだったか。









その後復活した俺はシュリちゃんに泣いて謝られた。「せっかくもらったプレゼントを無駄にするところだった」と。それに関しては「成功したんだから良しとしよう」と水に流し〝クロスクリバー″を返した。

シュリちゃんは「アルケさんが持っていた方がいい」と言ってくれたが「俺が持っていても宝の持ち腐れになる」と言って断った。


結果〝クロスカリバー″はシュリちゃんの自室に飾られることになり、元から飾られていた剣は俺のアトリエに飾られることになった。





それをラインに見つかり問い詰められたのはまた別のお話。


というわけで、初代ロリヒロインのシュリちゃんを出してみました。皆さん覚えてますか?

ちなみに、シュリちゃんが渡したチョコのランクは秘密。あと、パニヤードからのチョコはありません。欲しい人は夢の中でもらってください。


なお〝聖鉄″で出来るのは騎士王の剣ではありません。そう簡単に出来てたまるか。



ちなみに〝クロスカリバー″およびアルケが受け取った剣は後に本文でも登場予定ですが、今の調子だとまだまだ先になりそうですね。せっかく登場させたのでそこまではなんとかがんばって執筆を続けていきます。


次回は2月18日(水)に本編再開です。申し訳ありませんが、3日ごとの更新は厳しそうです。チクショー!

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