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【連載完結】あなた達に復讐するまで、私は死なない  作者: 逆立ちハムスター


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4/4

煤煙の都

風が、私の白磁の皮膚を叩いていた。

いや、正確には「風の圧力を示すデータ」が、私の頭脳へ極めて正確な数値として流れ込んでいた。

時速、数百。

人間の肉体であれば、眼球は乾き、呼吸すらままならない暴風の領域。しかし今の私にとって、それは心地よい微風にすら満たなかった。


私は滑走していた。

灰色の、草木も生えぬ荒野を、地を滑るような歩法で疾走している。一歩踏み出すごとに、私の脚部に組み込まれた鉄の筋肉としなやかな金色のフレームが、爆発的な推進力を生み出す。地面の岩が私の足裏によって粉砕され、後方へと凄まじい速度で弾け飛んでいく。


視界の右上、インストールされた3Dマップのナビゲーションが、目的地までの距離を刻一刻と縮めていた。


(見えてきたわね……奴らの巣窟が)


地平線の向こうから、巨大な黒い影がその姿を現した。

帝国の首都、かつて私が『聖女』として崇められ、そして家畜として穢された、忌まわしき場所。

今のその都市の姿は、私の記憶にあるものとは大きく変貌していた。


空を覆うのは、太陽の光を完全に遮断する、どす黒く重苦しい煤煙。

都市のあちこちからは、天を突き刺すような不格好な鉄の煙突が無数にそびえ立ち、不気味な黄色の火花と黒煙を絶え間なく吐き出している。

帝国は、私が地下に囚われている間にも環境汚染を繰り返し、肥大化を続けていたのだ。ドワーフの古代遺跡から掘り出した遺物や技術を、彼らは貪欲に流用していた。しかし、彼らには古代ドワーフのような、自然と調和する洗練された技術も美学もない。ただ遺物を分解し、歪に継ぎ接ぎし、出力を上げるためだけに周囲の自然を極限まで搾り取った結果が、あのグロテスクな「機械都市」だった。


ガチチ、と私の奥歯――発声装置の奥が、憎悪で鳴動した。


あの街を流れるエネルギーのすべてが、かつて私から搾り取った結晶の応用であり、そしてドワーフの遺物を弄んだ冒涜の産物なのだ。

私の脳内ディスプレイが、都市の防衛網を検知して赤く明滅し始める。


―― 前方に帝国軍・外縁警戒線を感知。 ――

―― 警備オートマトン:420機。生体反応(衛兵):2080名。 ――

―― 排除プロトコル承認――


私は速度をさらに上げた。背中の羽状のブレードが、キィィィンと高周波の音を立てて展開し、姿勢を完全に固定する。

私は一筋の純白の流星となり、帝国の城門へと正面から突っ込んだ。


────


「な、何だあれは!? 待ちやがれ! 停止しろ!」


城門の手前に築かれた鉄製の防塁から、人間の衛兵たちの動転した叫び声が響いた。

同時に、彼らが使役する帝国の警備オートマトン――ドワーフの意匠を真似た、しかし不格好にリベットで固められた鉄の歩行機械たちが、一斉に私へと銃口を向けた。


タタタタタタタタタタン!!


激しい銃声とともに、無数の銃弾が私に向かって放たれる。

しかし、私の高性能な光学レンズと演算装置は、空中を飛来する弾丸の「軌道」をすべて完全に予測していた。

避けるまでもない。私はわずかに首を傾げ、最小限のステップで弾幕の隙間をすり抜ける。いくつかの不良弾が私の白磁の装甲をかすめたが、硬質な合金の表面に火花を散らすだけで、傷一つ付けることはできなかった。


「化け物め! 撃て、撃ち続けろ!」


衛兵の恐怖に満ちた叫び。それが、私の最高の潤滑油だった。


「まずは、あなたたちからよ」


一瞬で間合いを詰める。

最初に立ち塞がった、全高二メートルを超える頑丈な鉄躯のオートマトン。そいつが大きな鉄の拳を振り下ろしてくるよりも早く、私の右腕が動いた。

しなやかな純白の腕が、真っ直ぐに突き出される。


――ドン!!


爆音。

私の白磁の拳は、オートマトンの分厚い胸部装甲を、まるで腐った木板のように容易くぶち抜いた。私の手が、相手の体内にある真鍮の歯車や魔導コアを直接掴み、力任せに引き摺り出す。

火花と黒い油が盛大に飛び散り、オートマトンは一撃で沈黙、鉄の屑となって崩れ落ちた。


「ひっ……ああああ!」


隣にいた人間の衛兵が、恐怖に顔を歪めて腰を抜かす。

私は、その衛兵が手放した大口径の魔導小銃を、空中で華麗にキャッチした。重さ数十キログラムはある、人間が両手で構えるべき重火器。それを、私は片手で軽々と弄ぶ。


流れるような動作で、銃身を逆手に持ち替える。

そして、迫り来る別のオートマトンの頭部に向けて、棍棒のように叩きつけた。


――ガギィィィン!!


凄まじい金属音が響き、オートマトンの頭部がひしゃげて吹き飛ぶ。それと同時に、小銃も私の怪力に耐えかねて真っ二つに折れ曲がった。使い捨ての武器としては十分だった。


私は折れた銃床をそのまま後ろへ放り投げ、驚愕に目を見開いている別の衛兵の顔へと、正確に投げ、突き刺した。

肉が裂け、骨が砕ける生々しい音が響く。かつての私なら、その音に吐き気を催していただろう。しかし今の私は、その音を聴くたびに、胸の奥のジェネレーターが歓喜で熱を帯びていくのを感じていた。


「楽しいわね」


私は踊るように戦場を駆け抜けた。

人間の衛兵たちが放つ槍を素手で受け止め、そのまま奪って周囲の肉体を一閃で両断する。迫る機械の腕を掴み、関節を逆方向にへし折り、その引き千切った機械の腕を別の敵への投擲武器に変える。

私の動きは、完璧に洗練されていた。最高管理者の肉体に刻まれた戦闘モーションが、私の復讐心と完全に同調し、戦場に純白の死の舞踏を現出させていた。


わずか数分。

城門を守っていた数十の戦力は、文字通り「塵」と化した。

床一面に広がるのは、ひしゃげた鉄の残骸と、赤黒い血の海。

私はその中心に立ち、一切の汚れもない純白の肢体を陽光(煤煙に遮られた鈍い光だが)に反射させていた。


城門の巨大な鉄扉が、私の目の前にある。

私は最高管理者権限の電波を放射した。


『―― 外部システムへのハッキングを感知。 ――』

『―― 帝都第一正門、セキュリティを強制上書き。開放します。 ――』


ギギギギ……と、重々しい音を立てて門が開いていく。

その向こうに広がるのは、パニックに陥った機械都市の市街地だった。


警報のサイレンが、街全体に響き渡っていた。


「敵襲! 敵襲! 正門が突破された!」

「機械の化け物が侵入したぞ!」


街のスピーカーから、絶叫に近いアナウンスが響き渡る。

街路にいた平民や商人たちは、悲鳴を上げて四方八方へと逃げ惑っていた。上空を見上げると、ドワーフの遺物を改造したと思われる、不格好な飛行機械エアシップが数艇、私を捕らえようと旋回を始めている。


だが、私の目的は彼ら平民ではない。

用があるのは、この街の頂点に君臨し、かつて私を地獄へ突き落とした「あの一族」とその一派だけだ。


3Dマップに、かつて私が囚われていた地下実験室を所有していた、有力貴族たちの邸宅の位置がピンポイントで強調表示される。


「まずは、あなたからね……バルドゥア侯爵」


私は地面を蹴った。市街地の石畳が爆発するように弾け、私は建物の壁を蹴り、屋根から屋根へと跳躍しながら、標的の邸宅へと向かった。

上空の飛行機械から、私を狙って魔導レーザーや大砲が放たれるが、どれも私の残像を捉えるのが精一杯だった。放たれた砲弾が民家に命中し、街に火の手が上がる。自らの防衛システムによって自らの街を破壊していく帝国の無能ぶりに、私は冷酷な嘲笑を漏らした。


ドゴン!!


バルドゥア侯爵邸の、豪奢な大理石の門と魔法障壁を突き破り、私は中庭へと着地した。

すぐに、侯爵お抱えの精鋭衛兵たちと、重装甲の戦闘オートマトンが群がってくる。


「何奴だ! ここをどこと心得る!」


「エルザよ」


私は鏡面のマスクの奥から、美しく、そして呪わしい声を響かせた。


「地獄の底から、あなたたちにお礼を伝えに来たの」


衛兵たちがその名を聞いて、ハッと息を呑んだ。数年前、彼らが使い潰して消滅したはずの、あの『聖女』の名。それが、なぜこのような神々しくも恐ろしい機械の姿となって目の前にいるのか、彼らの脳は理解を拒絶していた。


理解を待つ必要はない。

私は一歩を踏み出し、彼らの肉体と機械を、徹底的に解体し始めた。


しかし、私は彼らを「一撃」では殺さなかった。


「あ……あがっ……、足が、私の足が……!」


衛兵のリーダーの、両足を膝から下を鉄の爪で正確に切断する。絶叫を上げる彼の首筋の血管を、私は寸前で傷つけないように配慮した。

オートマトンの装甲を剥ぎ取り、その駆動パーツを、衛兵たちの肩や腕に、生きたまま「楔」として深く打ち込んでいく。

肉が焦げ、骨が軋む。彼らがかつて、私の肉体に結晶を無理やり押し戻した時の、あの痛みを、肉体的な物理破壊という形で模倣して差し上げたのだ。


「ぎゃあああああ! 頼む、殺してくれ! 殺してくれぇ!」


「まだ死なせない。あなたたちが私に強いた時間に比べれば、これでもまだ、ほんの一瞬でしょう?」


ドアノブを持つが、ドアがそのまま外れた。


邸宅の奥へと進む。

怯えきった使用人たちを無視し、私は最奥のシェルターへと逃げ込もうとしていた、肥太った老人――バルドゥア侯爵の襟髪を掴み上げた。


彼の首筋には、私がかつて持っていた【美貌の結晶】の、劣化した模造品が埋め込まれていた。そのせいで、老人の皮膚は不自然に若々しいが、私の姿を見た恐怖で、その顔は醜く歪んでいた。


「ひ、ひえぇっ……! 悪魔……悪魔め……!」


「いいえ、私はあなたたちが偶然作り出した最高傑作よ、侯爵閣下」


私は彼の四肢の関節を、一本ずつ、極めてゆっくりと、カチ、カチ、と音を立てて脱臼させ、さらに鉄の指先で骨を粉砕していった。

悶絶し、白目を剥いて泡を吹く侯爵。しかし、私は彼の胸の魔導コア(今の私には彼のバイタルデータが完璧に見える)を刺激し、ショック死することすら許さない。

完全に動けなくなった、瀕死の侯爵を床に転がし、私は次の標的へと向かった。


一人、また一人。

かつて私を実験台の上で嘲笑った宮廷魔術師、私の結晶を奪い合って着飾った貴族の女たち。

私は彼らの邸宅を順番に襲撃し、その自慢の肉体や美貌を、徹底的になぶり、破壊していった。

誰も殺さない。ただ、呼吸と苦痛だけを残し、生ける屍としてその場に放置していく。街は、私の通った跡に沿って、凄惨な絶叫の連鎖に包まれていった。


そして、残るは「一人」となった。


────


帝国の中心、皇宮の玉座の間。


そこに、今回の政変の首謀者であり、私からすべてを奪った張本人――現在の皇帝となった、あの暗殺された王子の「叔父」がいた。


玉座の間の巨大な扉を、私は蹴り破って進入した。

部屋の中には、国中の最高戦力である親衛隊のオートマトンが数十機、幾重にも壁を作って皇帝を守っていた。


玉座に座る皇帝は、最初は毅然とした態度を装っていた。

彼は贅を尽くした衣服をまとい、胸元には私の【尊厳の結晶】と【能力の結晶】が、怪しい光を放ちながら埋め込まれている。


「ふん……。ドワーフの泥人形風情が、我が帝都をよくも荒らしてくれたな。聖女の魂を宿していると聞いたが、所詮はただの壊れた機械だ。者ども、その忌まわき白磁を粉々に砕け!」


皇帝の傲慢な命令。

しかし、私はただ、静かに右手を挙げた。

戦う必要すら、もうなかった。


「システム・ハック。識別:プライム・ディレクター。この空間に存在するすべての魔導回路の、最優先制御権マスターコントロールを要求」


私の声が玉座の間に響き渡る。

次の瞬間、皇帝を守るはずだった親衛隊のオートマトンたちの、目のレンズが一斉に青から「深紅」へと切り替わった。


『―― 最高管理者の命令を受理。目標は更新』


「な、何……!? お前たち、何を動かぬ! 敵は目の前だぞ!」


皇帝が狼狽して叫ぶ。

しかし、オートマトンたちが向けた銃口と刃は、私ではなく、玉座に座る彼自身へと一斉に転じられた。


「バ、馬鹿な! 止めろ! 私は皇帝だぞ! 開発部! 何をしている、制御魔術を繋ぎ直せ!」


皇帝は立ち上がり、狂ったように周囲のレバーを操作しようとする。

だが、すでにこの国のすべてのネットワークは、私の頭脳へと吸い込まれていた。壁の通信管からも、オペレーターたちの絶望的な悲鳴がノイズとなって漏れ聞こえてくる。

「だめです! メインフレームが完全に占拠されました!」

「すべての機械兵が……私たちの言うことを聞きません……!」


私は、静かにキャットウォークを歩くように、玉座の階段を上っていった。

一歩、近づくごとに、皇帝の顔から血の気が引いていく。


「ひ、ひぃっ……! 来るな……来るな!」


先ほどまでの粋がっていた態度が、嘘のように崩壊していく。

彼を囲む機械兵たちが、じりじりと刃を突きつける中、皇帝はついに足をもつれさせ、玉座の前で派手に転倒した。


「ま、待て! エルザ! 私が悪かった! すべてはあの魔術師たちの進言だったのだ! 私はお前を救おうとしていた! 信じてくれ!」


彼は、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃに変形させながら、床に何度も頭をこすりつけた。

ゴン、ゴン、と床の大理石に額を打ち付け、血を流しながら、必死に命乞いをする。かつて帝国を支配し、私の尊厳の結晶を身にまとうことで「高潔な王」を気取っていた男の、これが本性だった。


「つまらないわね」


私は皇帝の前に立ち、見下ろした。

私の鏡面のマスクには、床に這いつくばり、犬のように許しを請う皇帝の、醜悪な顔が哀れに映り込んでいた。


「私の【尊厳】を身につけていても、あなた自身の魂の底にある『卑賤さ』までは隠せなかったようね」


私は手を伸ばし、彼の胸元に埋め込まれていた二つの結晶――【尊厳】と【能力】の結晶を、指先で直接「抉り取った」。


「ぎゃあああああーーーーーッ!?」


胸の肉を抉られ、結晶を強引に引き抜かれた皇帝が、激痛に身を悶えさせる。

私は手に入れた結晶を、自らの白磁の装甲の隙間へと滑り込ませた。それを私の魔導ジェネレーターが吸収し、エネルギーへと変換する。私の失われた概念が、機械の力として完全に私のものになる。


私は、息を絶え絶えに這いつくばる皇帝の背中を、白磁の足で冷酷に踏みつけた。


「死なせないわよ、陛下。あなたには、これから始まる『新しい帝国』の、最初の礎になってもらうのだから」


私は皇帝を蹴り転がし、誰もいなくなった黄金の玉座へと、ゆっくりと腰を下ろした。


白磁のドレスの座りを直し、両腕を玉座の肘掛けに置く。

そして、玉座の裏側にある、都市全体のメインフレームへと繋がる有線コネクタに、私の背中から伸びる光のケーブルを直接突き刺した。


――接続プラグイン


私の意識が、国全体のネットワークと完全に同調する。

脳内に、街中のすべてのオートマトン、すべての防衛兵器、すべての工場の稼働データが、無限の濁流となって流れ込み、そして私の完全な支配下へと置かれていく。


「全システムへ」


私の声が、帝都にある数十万の機械たちのスピーカーから、同時に鳴り響いた。


「これより、この国は私のもの。人間たちの統治は終了。これからは……機械による、永遠の管理の始まりよ」


街中のオートマトンたちが、一斉に天を仰ぎ、駆動音を轟かせた。

人間たちの反抗の芽は、瞬時に摘み取られた。武器を持った騎士も、高名な魔術師も、彼らが作った機械の兵隊によって、一瞬で拘束され、制圧されていく。

恐怖による、完全な支配。

私が座る玉座の間からは、都市全体のハッチが閉鎖され、人間たちが一歩も外へ出られない「巨大な檻」が完成しつつあった。


────


数日後。


帝都の最下層、かつて私が『聖女』として囚われ、数え切れないほどの夜を絶望の中で過ごした、あの薄暗い地下実験室。

そこは今、奇妙な静寂に包まれていた。


かつて私を縛り付けていた、冷たい魔導の実験台。

そこには今、別の「肉塊」たちが、頑丈なスチール製の枷によってガチガチに拘束されていた。


バルドゥア侯爵。

宮廷魔術師たち。

貴族の女たち。

そして、元皇帝。


彼らは全員、私が与えた「瀕死の怪我」を、私のハッキングした医療オートマトンによって、死なない程度に、しかし苦痛を維持したまま完璧に生かされていた。彼らの手足は不格好な機械のパーツで補強され、逃げることなど絶対に不可能な状態にされている。


彼らの頭上には、ドワーフの遺物を改造した、巨大な【結晶抽出装置】が、怪しい駆動音を立てて設置されていた。


「あ……あ……エル、ザ……。許……し……」


元皇帝が、濁った目で、部屋の中央に立つ私を見つめた。

今の私は、玉座から有線で繋がったまま、自らの精神投影として、この地下室に純白の体を佇ませていた。


「許す? 何を?」


私は冷酷に微笑んだ(鏡面のマスクに、笑みのラインが青く明滅する)。


「あなたたちが私にしてくれたことを、そのままお返しするだけよ。これが『因果応報』というものかしら」


私は装置の起動スイッチを、指先で軽やかに押した。


ブーーーーン……。


重低音とともに、抽出装置から無数の電磁触手が伸び、実験台の上の彼らの肉体へと突き刺さった。


「ぎ、ああああああああああああーーーーーーーッ!!」

「いやだ! 抜ける! 私の、私の何かが抜けていくぅぅぅ!」


一斉に、凄まじい絶望の叫びが地下室に満ちていく。

彼らの肉体から、彼らの魂の根底にあるもの――【強欲】【傲慢】【色欲】【虚栄】といった、醜悪な概念が、濁ったドロドロの結晶として、メキメキと音を立てて抽出され始める。

結晶が引き抜かれるたびに、彼らの肉体は老婆のように萎び、精神は虚無へと叩き落とされていく。


そして、その結晶吸い取られると完全に曇り、エネルギーを失う……。

装置は自動的に、その汚れた結晶を、彼らの肉体へと【再び無理やり突き立てる】のだ。


「ひぎィィィィッ!! あ、ああ、頭が……!」


正気に戻される苦痛。

自分がどれほど無残な姿になり、どれほど惨めに搾取されているのかを、完璧な正気をもって理解させられる、あの無限の地獄。

かつて私が流した涙の数だけ、彼らはこれから、永遠にこの地下室で結晶を生産し、消費し、装填され続けるのだ。彼らの命が、機械の力によって、尽きることすら拒絶されながら。


私は絶叫と嗚咽がこだまする地下室に、背を向けた。


カツン、カツン、と白磁の足音が、かつてとは違う「支配者の響き」を持って、暗闇へと消えていく。


地上では、私の意のままに動く数十万の機械兵たちが、新しい秩序の元で街を再構成していた。

私はもう、泣かない。私はもう、奪われない。

この鋼鉄の体と、無限の軍勢とともに、私はこの歪んだ世界のすべてを、私の色――純白の檻へと、染め上げていくのだ。

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