第十九話 森の中でのスローライフ
森の中に戻った俺。
小川の近くのベースキャンプは、数日経ってはいたが、俺がいなくなる前と変わっていなかった。
朝日が差し込む中、簡易テントセットで目を覚ます。
これ、昨晩のうちにショップで購入したものだが、やっぱり買って正解だった。
「ふぁあ……」
伸びをしながらテントのジッパーを開けると、小川のせせらぎが耳に心地いい。
顔を洗いに小川へ向かう。
冷たい水で顔を洗うと、一気に目が覚める。
手をすくい、頭にも水をかけると、心がスッとする。
「さて、ラジオ体操でもするか」
腕をぐるぐる回しながら体を動かす。
隣ではウルフも首を傾げながら同じ動きをしているように見える。
「お前もやるのか? 偉いな」
「クゥーン!」
ウルフが元気に吠える。朝の澄んだ空気の中、その声が森に響く。
※ ※ ※
朝食は昨日、エルフのみんなからもらったお土産の焼きパンと乾燥果実。
小川のそばでゆっくりといただく。
「やっぱこれ、めちゃくちゃうまいな……」
焼きパンはほんのり甘く、外はカリッとして中はふんわり。
乾燥果実は噛むたびに濃厚な甘みが口いっぱいに広がる。
「ガウガウ!」
隣でウルフも満足そうに乾燥果実をかじっている。その表情に思わず微笑んでしまう。
「エルフ村、最高かよ」
※ ※ ※
午前中は魚釣りだ。
「今日はどんな魚が釣れるかな?」
釣り糸を垂らし、小川のほとりで待つ時間は意外と好きだ。
ウルフは近くで見張りをしている。
たまに小さな鳥が水辺に降り立ち、それをじっと見つめるウルフの姿に思わず微笑んでしまう。
「釣れた!」
釣り上げたのは虹色に光る『グリッタースケール』だ。
こいつ、いつもこの小川にいるな。
さらに釣りを続けると、『ブルーストライプフィッシュ』と『レッドフィンパーチ』も釣れた。
どれもショップに登録しておこう。
※ ※ ※
午後はウルフと一緒に森を探索する。
リンゴっぽい果実を見つけて収穫し、草や木材を拾い集める。
さらに鉱石も見つけた。
「この鉱石、ショップに売ったら結構なクルナになりそうだな」
ウルフが「ここほれワンワン」とばかりに掘る場所を示してくれるおかげで効率が良い。
掘り出した鉱石を手にしながら、ふとウルフを撫でる。
「お前、本当に役立つ相棒だよな」
ウルフが尻尾を振りながら「ガウ!」と鳴き返してきた。
※ ※ ※
昼食は近くに生えていたキノコを軽く火であぶって食べる。
「うーん、ちょっと味は微妙だけど、まあ腹は膨れるな」
「クゥーン」
ウルフも同意しているようだった。キノコの香りがほんのり漂い、森の中での簡素な食事でも悪くない気がする。
空を見上げると、鳥が群れを作って飛んでいく。
青空の下で風がそよそよと吹き抜け、なんとなく平和な気分になる。
「ま、贅沢言わなきゃ、こんな生活も悪くないかもな」
ウルフが俺の隣に座り込み、静かに尻尾を振っていた。
「よし、森の探検を続けるか」
「クゥーン!」
※ ※ ※
日中、一通り森を探索して。
「結構、アイテムが貯まった。今日はかなり充実してるぞ」
いつもの小川のほとり、ベースキャンプに帰ってきた俺。
夕食は釣った魚を焼いて食べる。
「やっぱ焼き魚が一番だな!」
「ガウガウ!」
ウルフも尻尾を振りながら嬉しそうに食べている。
焚き火の炎が魚の表面を香ばしく焼き上げ、黄金色の輝きを放っていた。
※ ※ ※
その後、DIYでウルフのための犬小屋を作ることにした。
「これでお前も快適に過ごせるだろ」
DIYは俺の得意分野だからな。
こんなの楽勝だぜ。
エルフ村でもらってきたDIYキットと、森で見つけてきた木材を使用して、テキパキと作る。
テントの横に犬小屋を設置すると、ウルフが中に入って嬉しそうに吠えた。
「気に入ったか? よかったよかった」
ウルフが中で丸くなり、満足げな表情を見せる。
テントの隣に並んだ犬小屋が、どこか微笑ましい。
※ ※ ※
夜、テントに戻って。
「あー、いい1日だった。また明日も頑張るかー」
「ガウガウ」
「おー、ウルフもおやすみ」
横になってふと考える。
……
……
……
……
「……このままじゃ、一向に借金返済できねえ……!!」