ネオンテトラとミレニアム 12
3-12
引き続き、
-2000年4月-
【バタフライアクセス】のオフィス。
「初めまして、ソフィです」
「ステラです」
ソフィさんは、金髪で蒼い瞳の快活そうな印象。
ステラさんは、黒髪で褐色の、理知的な女性だ。
どちらもたいしたナイスバディで……ゴホンゴホン。
胸元のばっくり空いたTシャツとYシャツでしっかり谷間を見せつけてくる辺り、文化の違いを感じる。
目のやり場に困るんだけど。
「はじめまして、岸谷 順也です」
「悠華に聞いてるよ!
日出る神の国の生んだ、本物の予言者だってね!
シリコンバレーでも噂になってるよ!」
「フゥ!クールだね!」
もう海外にまでそんな噂が……。
頭痛がしてきた。
「お二人とも、プログラマーだと聞きましたが」
「そうじゃ!
ワシの大学時代の後輩でな!
なかなかのものじゃぞ!」
「そうですか」
「先月までは、空を飛べる自立型ロボットを開発するベンチャー企業で、運動制御のプログラム開発と、ナビゲーションAIの研究をしていたんだけど、資金難になってクビになっちゃったの」
何を言ってるのか、よくわからない。
◯イアンマンかよっ!
米国企業の冒険心には頭が下がる。
「そ、そうか」
「そしたら、ちょうど良く悠華から連絡があって。
働かせて貰うことにしたって訳!」
「妙子に話を繋いでもらってね!
妙子はやり手だね!」
妙子はちょくちょく渡米してるからな。
人材確保の手伝いまでしてるのか。
「悠華の会社の親会社の、社長さんだってね?よろしくね!」
「ジャパンに興味あったから、楽しみだね!」
「寿司、芸者、フジヤマね!」
二人でガッツポーズされてもな……。
「あ、ああ。よろしく。
悠華さん、これってこの前言ってた……」
「うむ!
ワシの大学時代の研究テーマである、人工知能の研究をするためじゃ!もちろんYYモードの仕事も疎かにはせんぞ!
その為の二人じゃ!」
そう。悠華さんは、大学時代にAIの研究をしていたらしい。
食うに困らなくなってパーツも経費で買い放題となった今、その研究意欲がむくむくと湧いてきたそうだ。
まあ、これからの発展分野だし、いいんじゃないか、って同意しといたけど、こんなに早く体制を整えてくるとは……。
「なるほど、わかった。
手続きとかは、新垣に相談してくれ」
「もうしてあるのじゃ!」
手回しの早い事で。
「あと、この前も伝えたけど……」
「JavaScript環境でのゲーム制作じゃな?
もう着手しておる」
「……そうか、なら良いんだ」
携帯電話の発展は、凄まじいスピードで進む。
好調な【わいわいゲームらんど!】だが、携帯電話の性能向上に伴って、数年内にクオリティアップが求められることになる。
なんて話をしたばかりなんだが、そうですか、もうやってらっしゃる。
【バタフライアクセス】は、大丈夫そうかな?
プログラム部分が悠華さん頼みになっていたのが、ソフィさんとステラさんが入ることで安定化する……のかな?
悠華さんの後輩なら、多分腕は確かだと思うけど。
ちなみに、経営には一切ノータッチの悠華さんに替わり、俺と新垣で、給与水準を整えた。
総合職よりは高めだが、それほど違いはない。
悠華さんの思想は、「腹一杯食えて、パーツ買い放題」が全てなので、それに沿っている。
特に上場ゴールとか考えてないんだ。
なので、給与はそこそこ高め程度だが、どんな機材でもソフトウェアでも、基本は買い放題使い放題。
まあ限度はあるが。
3000万のスーパーコンピュータが欲しい、と言われた時は、流石に止めた。そもそもここに設置出来んし。
実用化されたばかりの100万以上する最新ドローンは、仕方ないから買った。そういう、俺から見たら高いだけのガラクタの類が、ここには山のようにある。
エレクトロニクスの雄、【RONNY】が昨年発売した、犬型ペットロボット【ZUTTOMO】も、2台あって、その辺を歩いてるし。
まぁ、みんな高そうなPCや機材、そしてオモチャを使えて嬉しそうだから、良いけど。
海原に、入手困難と言われている、評判のシナモンロールを10個ほど渡して喜ばれた後、渋谷を後にした。




