ネオンテトラとミレニアム 11
3-11
-2000年4月-
「つう訳で、株式の運用で30億稼いだ」
「「「はあ!?」」」
【ブラックエンゼル】の期初報告会。
皿橋、新垣、妙子、花明院、二戸、真鍋、宮下の7人が揃っている。妙子には予め伝えてあるが、他のメンバーには、初めて報告する。
「今年の初めに、IT関連の株価が爆上がりしてな。
うまく売り抜けることが出来たんだ」
「え、先月大暴落してたけど、その前に?」
花明院だ。
「うむ。運が良かったな」
「預言者過ぎでしょ!!」
「ですねぇ、もう驚かないですけど!」
皿橋、付き合いが長いと楽でいいな!
真鍋と宮下については、ピンと来てないようで、ポカンとしていた。
「【わいわいゲームらんど!】からの収入もあるし、かなり資金面は安定したと思う」
「安定というか、何と言うか……」
「ただな、俺が株式を運用するのは、ここまでだ。
これからは、お前達で運用するんだ」
「「「え!?」」」
「アホ、いつまでも俺がやってたら意味ないだろ。
それに、この先も俺が予言者よろしく予測を的中させるとも限らん。
これからはお前達の力で、この会社を成長させるんだ」
「「「ええーー」」」
「その方が、やり甲斐もあるだろ」
「軽く言ってくれますね!」
「で、ひとまず一人当たり5000万の運用権を与えることにした。会社全体で3.5億だ」
「「「おお!!」」」
「2年間、運用してみてくれ。
これは競争だぞ。毎年、期末に順位発表するからな。
皿橋、おまえが取りまとめて運用してくれ」
「え!私が!?3.5億も!?」
「アホ、俺たちの商材は金だ。
ビビってどうする。慣れろ!」
「で、でも〜」
「仕方ないな。しばらくは俺が付き添ってやる。
後、新垣」
「はい?」
「おまえも付き合え。
大事な事は、ダブルチェックが基本だ」
「承知しました」
この施策は、勉強代だと思っている。
多分、みんな金を減らすだろう。
こういうのは慣れだ。
一喜一憂せず、市場の流れを感じる事を学んでほしい。
前世で俺は、それほど上手ではなかった。
俺よりは勘所に優れた奴がいるはず。
「ルールはありますか?」
真鍋か。冷静だなこいつは。
「うむ。信用取引はするな。
インサイダーに気をつけろ。
それから、チマチマとやるな。
分散投資は10銘柄までにして、取引は月一回にまとめるんだ」
「配当も利益として換算していいんですか?」
「構わない」
「投資信託は?」
「やめとけ。個別の銘柄で勝負しろ」
「わかりました」
真鍋らしい、リスクの少ない選択肢を提示してきたな。
「他になければ、この件はそれで終わりだ。
みんな、頑張ってくれ」
「「「はい!」」」
「次に、皿橋、新垣、妙子。
お前達は執行役員にする」
「執行役員?」
「ああ。会社の事業を管掌する責任者って事だ。
厳密に言えば、会社は執行役員が回すんだ。
厳密に言えば、だが。
自分たちで会社を運営する自覚を持って欲しい、って事だ」
「なるほど」
「あと、お前達は外と話をする方が多い。
肩書きがあった方が、何かと便利だからな」
「ふむふむ」
「ざっくり担当を言うと、皿橋は本社担当。新垣は【バタフライアクセス】担当。妙子は海外とやってる事業の担当だ。
今まで通り話し合って決めてもらいたいが、ある程度の裁量は持たせるつもりだ。それを超える判断時は、担当者が責任を持って、俺に承認を取りに来てくれ。
細かい事は後で伝える」
「承知しました」
「【シャインガレット】は引き続き俺が見る。社長だしな。
それから宮下」
「は、はい」
「おまえは出向を終了だ。皿橋の下に付いてくれ。
新垣や妙子のサポートもしてもらうぞ」
「しょ、承知しました!」
「芳江ちゃん、よろしくね!」
「はい!」
「次に花明院」
「なに?」
「聞いてると思うが、青木さんがおめでただ」
「うん、聞いた」
「すまないが、今期いっぱい、青木さんのサポートとして、【シャインガレット】の全体の面倒を見て欲しい」
「だろうなぁ、とは思ったよ。
まぁ、今の仕事は性に合ってるから、苦ではないよ」
「すまんな。
【シャインガレット】の執行役員の役職を付けるから、フレキシブルに動いてくれ」
「それは有難いね」
「真鍋。花明院の直属の部下として動いてくれ」
「承知しました」
「二戸」
「はーい」
「色々と面倒な仕事をしてもらって、助かっている」
「本当ですよ!」
「現場サポートの部署が落ち着き次第、【ブラックエンゼル】に戻ってきてもらいたい」
「わっかりましたー」
「ぶっちゃけ、沙苗がいなくなると困るんだけど」
「困らないように、社内で人を育てろ」
「会長!無茶言うよね!」
【シャインガレット】に、いつまでも人手を割いてはいられない。花明院と青木さんと相談して、自走体制を整えていくことにしている。
どうでもいいけど、花明院は、【ネオンテトラ】の頃からずっと、会長呼びなんだよな。
「各員の動きについては、以上だ。
次に新卒についてだが、今年は取ってないんだな?」
「はい、昨年は景気が良くて、みんなすぐ就職先が決まっちゃっていたのと、あまり欲しいなって子が居なかったもので……」
皿橋が残念そうに答える。
確かにおっしゃる通りだ。
各企業、市場の風向きが180度変わって、今頃は頭を抱えているかもしれないが。
「そうか。それで良い。
ウチは少数精鋭でやってる。
無理して取る必要は、無い」
「今の部長のさくらちゃんは、興味を持ってるらしいですよ」
最上な。一度会ってみるか。
「うん。引き続き【ネオンテトラ】とは、コミニュケーションを取ってくれ」
「承知しました」
「次に、会社全体について。
聞いている者も多いと思うが、今期から社保を入れる。
利益も確保できているしな。
【シャインガレット】や【バタフライアクセス】も一緒に導入する」
「それは助かります!
親から、お前の会社、大丈夫なのか?なんて言われるんです」
「二戸。そうだな、そういう所も考慮した」
ここにいるメンバーは、何だかんだ良家の子女が多い。
外聞を気にする部分は、大いに理解出来る。
「それから、業績が良かったから、全員の給与をアップする」
「「「おおお!!!待ってました!!!」」」
「予め言っておくが、人によって差をつけることは考えていない。全員一律で上げる。後で一人ずつ呼ぶからな」
「「「はい!」」」
今の給与は、概ね年収250〜350万の辺り。
一応年次の昇給もしているが、何せ業績が上がっていなかったので。
昨年は、【わいわいゲームらんど!】の成功があったので、大手を振って昇給出来る。
社保を入れることで間接的に昇給することになるんだが、加えて、全員25%程度のアップをすることにした。
この会社、この先人が増えるのかどうなるのか、あるいは続くのかどうかすらわからないが、初期メンバーは、絶対に手放してはならない。
仕事が出来る出来ないではなく、信用の問題だ。
今のメンバーは、海の物とも山の物ともつかない【ブラックエンゼル】に来てくれた。
俺を信じて、付いてきてくれたメンバーだ。
この先、このようなメンバーは絶対に手に入らないのだ。
優遇してもバチは当たらない。
「話は以上だ。
各人、自分の業務に取り組んでほしいが、有望な会社は引き続き探して欲しい。ウチは投資してナンボだからな」




