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ネオンテトラとミレニアム 8

3-8


-1999年12月-


 「ちょっと、そこ駐禁!!

あ、その荷物は後!!」


「毎度〜、看板の設置に来ました〜」


「7階に上がって!上で真鍋ってのが待ってるから」


寒風吹き荒ぶ中、花明院が指示を飛ばしている。


渋谷の明治通り沿い、新南口にほど近い、10階建のビジネスビルの7階に、【シャインガレット】が引っ越し中だ。


広さは100坪。

大小3つの会議室、研修ルーム、多目的ホールを備えた、40席のオフィスだ。

施工も入れて、受付はいっぱしの企業だ。


家賃は150万と高額だが、そのうち50万は【バタフライアクセス】から出ている。どういうことかと言うと、【バタフライアクセス】は、【シャインガレット】のインフラ担当として、保守費用30万を毎月もらっていた。

が、安定収入を得て、その必要は無くなった。


なので、勤怠管理や法務処理などを【シャインガレット】に委託、またインフラ用の機材倉庫スペースを貸りる、という名目で、インフラ管理+50万を【シャインガレット】に支払うことにしたのだ。

業務提携みたいな事だな。

【シャインガレット】は【ブラックエンゼル】に対しても、似たような業務をやっているので、今更少し面倒が増えても、殊更に業務を圧迫することは無い。

……と思いたい。

事務担当の二名の残業が徐々に増えている事は、忘れるとしよう。


【バタフライアクセス】は、使い道のない金が溜まり続けているので、少しでも放出したい、と言う事だ。


新垣の負担は減る、悠華さんは面倒ごとを【シャインガレット】に任せられる、青木さんは家賃の負担が減る、と良いことしかない。


派遣会社で40席は多いと言う気もするが、この先も積極採用するらしいし、管理人材も増えていくだろうから、どんと広めのオフィスを借りて、腰を据えることにした。



 「ん?メグ、お前も来てたのか」


7階に上がると、メグとマキが雑用をしていた。


「ああ、ジュンジュン。

何か手伝える事はないかなって」


この子は良い子だよほんとに。


「ありがとな」


向こうに、青木さんもいる。

花明院が陣頭指揮を取ってくれているので、青木さんは内装の方の話に集中出来ているようだ。

これはとても大切な事で、青木さんの業務を切り離すことができている、と言う事だ。花明院のように、視野が広くカリスマがあり、誰彼構わず指示を飛ばせる人材が、いかに有用であるかを物語っている。

皿橋でも出来そうだが、あいつは女子限定の生徒会長気質だからな(笑)。


で、なんでメグに驚いたかというと、先月、【シクリッド】の店舗と権利を茂木さんごとメグに譲ったからだ。

メグは会社を作って、【シクリッド】を運営していくことになった。

これはメグと青木さん、茂木さんと相談して決めた事だ。


【シャインガレット】がバーを持っている事は、業務形態としては蛇足そのものだったから、どこかで切り離すつもりだった。

だから、どうせならメグにその気があれば……と言う事で話がまとまった訳だ。


とは言え、メグを放り出す訳ではない。

俺の個人会社【クラウンローチ】が後ろ盾になり、20%資本参加。【シャインガレット】スタッフの夜の副業として黙認するし、マキも変わらずサポートする。

引き継ぎ期間として、【シャインガレット】が1年間、コンサルに付く。


まあ、徐々に慣れていけばいいと思う。


政界の重鎮とか、変な太客がいるから、余計なお世話という気もするが、妙な下心がないから、俺の方が安心出来るんだそうだ。

俺だって下心くらいあるけど……何もしないでしょうね。

ええ、私は自他共に認める意気地なしですから。


しかし本当なら、【シャインガレット】の中枢にいるべき人材なのだが、実に惜しい。


そんな訳で、メグはもう【シャインガレット】の社員ではない。引越しの手伝いをする必要はないのだ。



 ちなみにこの場所は【シクリッド】と、【ブラックエンゼル】や【バタフライアクセス】の入っているビルの、中間地点にある便利な場所だ。

【シャインガレット】が抜けた後の旧ビル5階には、そのまま【ブラックエンゼル】が入る。

6階は【バタフライアクセス】専用となる。



なんてぼんやり考えてたら、今日の作業は終わったらしい。


「社長、文化会館の方にお店を取ってます。

行かれますか?」


「お、行く行く!」


この人たちは、2時間飲み放題付き3500円とかのお店を取るんだよな。大皿の串とか揚げ物が出て、その後山盛りのフライドポテトとか出て、最後適当な鍋が出る、例のやつだ。

もう少し良い店にしてもいいと思うんだが。

大学生じゃないんだから。

んで、カラオケ行って、最後煮詰まったメンバーで【シクリッド】に行く、お決まりのコースだ。

他の客に迷惑にならないように、奥の隠れオフィスで飲むんだが、そこは俺の大切な仕事場なんだ。

散らかさないでほしい。


ほんとにどうしようもない連中なのだが、愛すべき仲間達なのだ。




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