ネオンテトラとミレニアム 7
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-1999年10月-
あれから3ヶ月、【わいわいげーむらんど!】は会員数が10万人を突破。
毎月2160万の収入を、【バタフライアクセス】に1512万、【ブラックエンゼル】に648万で分け合う。
労せずして毎月540万が転がり込むことになった【GOUCHI】はホクホクだ。赤字幅は縮小しつつも、三期続けて赤字決算であり、今期でようやく黒字転換が見えてきていた【GOUCHI】に、良い援護射撃が出来たのではないだろうか?
このビジネスの良い所は、この状況が少なくとも五年くらいは続く可能性がある所だ。ガラケーの月額課金ビジネスは非常に巧妙なのである。
【ブラックエンゼル】は4人出向しているので、固定費は諸々込み込み170万という所。黒転したので、そのまま資金として貯め込むことにする。
【バタフライアクセス】は固定費が200万くらいの会社なので、ちょっと儲かり過ぎだ。
無駄に貯め込むのは良くないよな。
俺の部屋にある、1メートル大の熱帯魚水槽。
ネオンテトラがたくさん泳いでいる。
前世、一番最初に飼った熱帯魚だ。
可愛いんだよなぁ。
子供の頃の感動が忘れられず、これだけは飼っている。
ベッドとPCと執務机と、水槽と。
ウォークインクローゼットを除けば、俺の部屋には、ほぼこれだけしかない。
やれ奢りだ差し入れだご祝儀だと臨時の支出は多い。また携帯は新しいキャリアが出るたびに契約するし、ジムとか英会話とかもあるので、月の支出自体は結構多いのだが、モノはあまり買わないな。腕時計くらいか。
車も中古で買った割に、ラーバー君が頑張ってくれているので、特に不便はしていない。
飲み物を求めてリビングへ。
妙子はあまり料理をする方ではないので、キッチンには最低限のものしかない。二人で食事をする時は、三軒茶屋のお店に食べにいくことが多い。
カレーとか沖縄料理とか、この辺は食べ物屋が多いので、助かる。
妙子は、リビングのソファで書類の整理をしていた。
ジーンズにカーディガン、髪はいつもの髪留めスタイルだ。
かわいいなぁ。
「ねぇねぇ」
「ん?」
コーヒーミルの手を止める。
「【シリコンズ ゴールド】の日本法人の話なんだけど」
「ああ」
再び豆を砕き、コーヒーを淹れる。
妙子は、アメリカで作った独自の人脈と、悠華さんの大学時代のIT人脈を使って、一つのビジネスを持ってきた。
カリフォルニア州サンノゼには、シリコンバレーと呼ばれる、半導体製造を主体としたITの先進地域がある。
近年、インターネットを活用したIT企業がポコポコとその辺りに出来ていて、悠華さんの友達も何人か居るらしい。
で、【シリコンズ ゴールド】は、そこを拠点としたコーヒーショップチェーンだ。起業を目指す若者が、ノートパソコンを開いてコーヒーを飲みながら仕事出来る、意識高い系の店だ。当然、オシャレで値段も張る。
シリコンバレーと言えば、青系のイメージがあるのだが、そこをあえてのシックなゴールドをイメージカラーとして、エスプレッソをベースとしたコーヒーを展開している。
展開元の会社は、通信系大手の投資会社で、妙子の知り合いなので、トントン拍子に話が進んでいる。
コーヒーを持ってソファに座る。
「日本側は、【パシフィックキッチン】に頼む予定。
ウチはエージェントとして仲介するから、【Lang-Lang Cha】と似たようなビジネスになるわね。
でも多分、株式は取得できないと思う」
「うん、妙子の良いようにやってくれて構わない。
だが、多分その先があるんだよな?」
「そう!
この件を通して、アメリカに伝手を広げたいのよ。
いずれ【ブラックエンゼル】の現地法人をつくるわよ?ウフフ」
妙子が有能過ぎて、怖くなってきた。
案件自体は、リスクのないエージェント契約で、妙子なら軽くこなせるものだ。とは言え、総額で1000万とかの契約なので、仕事としての質は問われる。
アメリカと日本を経費で行き来出来るので、妙子にとってはご褒美みたいなものだが。
……心配だから俺もついて行こう。
しかしシリコンバレーに拠点を作って、何をするつもりなんだ……。
「そ、そうだな。
ただ、早く進めてくれ。
アメリカのIT関連は、バブルと言っていい状態だ。
いつ風向きが変わってもおかしくない」
「わかったわ!」
ちなみに【ネオンテトラ】の夏合宿は、盛況だったらしい。
青木さん夫妻と、ステファニーさん夫妻を、保護者代わりに招待して、骨休めしてもらった。
ついでに有能な経営者である青木さんに、講演もしてもらった。




