ネオンテトラとミレニアム 4
3-4
-1999年6月-
「おひいさま!
原因不明のネットワークエラーが止まりません!」
「【GOUCH】の鈴原殿に電話せい!
絶対プラットフォーム側が原因じゃ!」
「さっきから電話してるんですけど、つながりません!」
「悠華さん、画像がちゃんと表示されてません!」
「そりゃ回線の問題じゃ!」
「フルハウスなのにツーペアに負けました!」
「バグじゃ!」
「トップページが表示されなくなりました!」
「ええい!脆弱なサーバー組みおって!!」
【わいわいゲームらんど!】リリース初日。
悠華さんが、頭を掻きむしっている。
今日の悠華さんは、【namidas】というスポーツメーカーのクラシカルな赤のジャージに、インナーは黒のVネック、暗めの柄もののロングスカートに、よくわからんごついスニーカー。髪型は頭頂部でお団子にしてリボンで結んでいる。
簡単に言うといつも通りなのだが、だんだん洗練されてきているような気もしないでもない。
「ちょっと【GOUCH】に行ってくる!」
「助かるわい!」
新垣が飛び出して行った。
「悠華さん、大丈夫?」
何をできるわけでもないが、一応声をかけてみた。
「うむ。アクセス集中で色々不具合が出ておるようじゃ。
会員登録数は5,000程じゃからたいしたことはないんじゃが、いかんせん【NDDT】のサーバーが、思ったより脆弱じゃ」
「何か出来ることはあるのか?」
「うーん。ソースを更新するにも、プラットフォームに申請が必要じゃから、【GOUCH】と連携出来んと、どうにもならん。まあ、しばらくは様子見になるかの」
「そうか」
サービスが始まったばかりのYYモードは、思いの外、問題が多い。そこに加えて、ほぼ初となるまともなゲームコンテンツの提供だ。苦労するのはまぁ、織り込み済みだ。
しかし、YYモードビジネスは、先行者利益が明確に現れるビジネスだ。参入が早ければ早いほど良い。
今、悠華さんが見ている登録者数のデータも、分刻みで更新され、どんどん登録者が増えている。
「今日は帰れんのぉ」
とは言いつつ嬉しそうに見えるのは、俺だけだろうか?
「あまり根を詰めすぎないようにしてくれ」
「大丈夫じゃ。たいしてすることもないしの」
「何かご飯を頼むなら、新垣に言ってくれ」
「わかったのじゃ」
「みんなも、悠華さんと一緒に、頑張ってくれ。
必ず、未来に繋がる仕事だ」
「「「はい!」」」
その頃【GOUCH】の担当、鈴原さんは、【NDDT】の子会社で携帯電話事業を担当している【NDDTミンナモ】に詰めて、サーバーについて苦情を入れていた。
正直な話、どの会社もここまでアクセスが殺到するなど、思ってもいなかったのだ。
「一両日中には、なんとかします」
という言質を取って、【GOUCH】に帰社したところ、新垣が憤怒の形相で仁王立ちして待っており、小一時間ほど詰められることになった。
鈴原さん、かわいそうである。




