3
文学っていうのは、どうも苦手だな。まぁ俺は実際になにもしていない。これを文字にするのはスティーブの仕事だ。そしてそれを本にするのは、あんた達の仕事だろ? これを俺の作品とは呼んでは欲しくない。これでも俺は言葉を商売にしているからな。けれどあれだ。文学ってのは読むものだろ? けれど俺の言葉は、聞くものであり、歌うものだ。おぉ、そうか! そういうことなら話は分かる。俺の物語だからな。俺の言葉で聞くのが一番ってわけか。だったら文字にしなくてもいいだろ? 音源で発表すればいい。まぁ、形のある本にしたいと言ったのは俺なんだけどな。あれはただのリップサービスだよ。まさか本気にする奴が現れるとは驚いたよ。
あんた達の仕事は俺だって知っている。色んな物語を敢えて形のある本で出版しているんだよな。そもそも物語を生み出したのがあんた達だって俺は感じている。まぁ、それはちょっと大袈裟なんだけどな。人が生きている。それだけで一つの物語だからな。世界は物語で溢れている。それが事実だ。スティーブの中にはそんな物語を綴った本も多く存在している。光媒体の本だけどな。俺から言わせると、今までの物語はクソだよ。あれはただの文章の羅列だな。教科書よりもつまらない。あんなんで文学だなんて、ふざけているよな。中にはまぁ、それなりの言葉も埋まっているが、物語とは少し違うだろ? 物語ってのは、生き様だ。文学ってのは、生き様の表現だ。
この世界に存在していた物語は、ほとんどに政府の息がかかっている。無理やり詰め込んだ教訓になんの意味がある? つまらない物語が多過ぎた。それを文学だと大袈裟な言葉で語る意味も分からなかった。しかし、あんた達がそれを変えてくれた。正直に言うが、俺は気づいている。あんた達が発表した形のある本の多くは、文明以前の物語だろ? 空想には限界がある。あの世界観は、この時代に生きるあんた達には不可能なんだよ。それともなにか? ノーウェアマンのショウと同じ様に過去に流されたって言うのか? どちらにしても、そう言うことだろ?
と言っても、文明以前の言葉を読み解くってのは凄いことだよな。完璧じゃなくても構わない。なんとなく感じたことをあんた達なりに表現したんだろ? 素晴らしいことだ。俺がしてきたことと同じだろ? 文明以前の物語だとしても、間違いなくあんた達の物語でもあり、今の物語になっている。分かるか? 俺は褒めているんだぜ。あんた達の物語を読んだからこそ、俺の物語をあんた達に任せたんだよ。
しかしまぁ、本気なのか? 何度も言うが、俺の言葉をそのままにってのは、まぁ発想は面白いが、正直俺は読みたくない。そりゃぁあんた達が書いたマルコメの伝記は読んださ。あれは素晴らしかったよ。選んだ人物からして大正解だ。あいつは確かに世界を動かしたからな。同世代として誇りに思う。けれど俺はまだ生きていて、あいつは殺された。それにあの物語は、客観的な事実だろ? 古いインタビューや知人の言葉を混ぜながら進んでいく。多少の創作もあるようだしな。俺の物語とは質が違う。俺の話を元にあんた達が物語を仕上げるんじゃないのか? 俺はずっとそう考えていたんだ。
まぁ、今更どうでもいいか? ただ一つ言いたいんだが、これをつまらない文学作品になんてしないでくれよな。俺の願いはそれだけだ。
文学ってのは、文明以前と今とではきっと、まるで別物なんだよな。詳しくは知らないが、文明以前の文化っていうのは、飲食、スポーツ、映画、漫画、音楽、そして文学だと言われている。まぁ、俺が勝手に言っているんだがな。俺に調べられたのは、その程度だ。文字を楽しむってのは、なかなかに楽しい発想ではあるが、難しいよな。あんた達の文字を読むまでは、バカバカしいとさえ感じていた。俺は文明以前の文学らしき形のある本を手に取ったことはあるが、中身はまるで読めない。挿絵があるものを読めばなんとなくな話の流れを感じることはできるが、文字を楽しむってこととは意味が変わってしまう。文明以前の文化の中で、文学だけがその中身を紐解けなかったんだ。今のこの世界にも存在する文学は、独自に生まれたんだって俺は思う。だからつまらないんだよ。ボブが文学的だと評されたことに不満を感じたのはそういう理由からだよ。ボブの言葉は、そんなに退屈じゃないだろ?




