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パンクジャズ  作者: 林広正
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 文字を読むことは、知識やルールを知るための勉強の他ならない。それで十分だった。この世界の文学は、その程度であり、それでよかったんだよ。そんな文学の世界だけで、勝手に偉そうな賞を作り、自己満足のようにお互いを賞賛しあっていた。けれど奴らは間違いを犯した。ボブをそこへ引き込んだことは、ある意味罪だよ。ボブの言葉は、勉強にはならない。当たり前だよな。知識の押し売りはしないからな。あくまでも感情を吐き出しているだけなんだ。その言葉に意味を感じたり、影響を受けたりってことはいいことだ。ボブの音葉は、そんな力が強いんだ。それを文学的だって? 確かにあんた達が表現している文明以前の文学を基準にすればその通りなのかも知れない。だが、例えそうだとしても、ボブはそれを認めないだろうな。ボブの言葉は、読むものじゃない。聞くものであり、歌うものだ。さっきも言ったか? 俺たちの言葉だってそうだ。歌い継がれてこそ意味がある。読んでもいいが、深く考えるようなことは言っていないからな。感じたことを感じたままにってのが歌のいいとこだって俺は思う。あんた達の文学は確かにこっち側に近いよな。感情に溢れている。だからだな。読んでいて楽しくなるんだ。まぁ、俺の物語も楽しいものにしてくれればそれで大満足だよ。あんた達ならきっと、できるんだろうな。

 俺たちの物語はさ、これからも続いて行くんだ。こんな風にして話す機会はもうないかも知れないが、別の方法できっと、届くだろうな。明日もまたシライヴショウがある。死んじまうかも知れない危険な地域でな。よかったら見にきてくれよな。俺には自分の未来が見えている。それがいつかはわからないが、まだ少し先だとは思うんだが、ステージ上で息途絶えるんだよ。それが俺にはお似合いだと思うだろ?

 俺が死んでも、俺の物語は終わらないんだろうな。それは分かっている。今でもそうだ。俺がこうして語っている言葉以外の物語が紡がれている。スティーブ内ではもちろん、形のある本も普及はしていないが多くが出版されている。色んな形態の形のある本が登場しているのは、明らかに文明以前からの影響だ。しかしそんなことはどうでもいい。文学ってのは、危うい。文字に残すっていう行為は、危険なんだ。例えどんなにバカげた大嘘でも、それを証明できなければ、真実として受け止められてしまう。過去にそんな物語があっただろ? 今でも多くの奴らが信じているよな。あれは嘘の塊に真実を塗っているだけだ。俺もまた大嘘つきだから、俺がやってきたことが歴史になるんだろうな。この世界は大嘘ってことだ。

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