表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

第8話 アクア色の髪の少女


 「 誰だ。」


 突如として現れ、私を助けてくれた少女に向かって、男達のリーダーと思われる者が話しかける。



 「 僕?僕は久遠!!」



 少女は元気に答える。




 少女をじっと見ていた男は、一言、



 「 その耳、お前人族だな。」



 と言った。


 確かに男の言う通り、少女の耳は魔族特有の尖った耳ではなく、人族のそれと同じだった。


 男は、少女に見えないようにニヤリと笑った。


 獲物が増えたとでも言いたげな表情。




 「 むー!筋肉のおじさん!僕のお名前はお前じゃないよ!!久遠だよ!!」




 少女は、男が浮かべた不敵な笑みに気づかず、お前と呼ばれたことに怒っている。



 「 そうか、クオンちゃんっていうんだね。」



 一人の男が少しづつ少女に近づいていく。



 「 おじさん達ね、今あの子と遊んでるんだ。悪いことなんか何一つしてないんだよ。」



 いつの間にか私の後ろに回ってきていた、別の男が後ろからナイフを突きつけてくる。



 余計なことを言うなよという意味だろう。


 私は、何も、言えなくなってしまった。



 お願い、逃げて……。


 巻き込みたくないのにっ……!




 「 ふぇ?そうなの?でもあのお姉ちゃん嫌そうな顔してたよ?」




 ゆっくりと近づいてくる男に全く警戒することなく、少女は男に質問をする。




 「 それがね、遊び相手がおじさん達だけだと寂しいみたいなんだ。だからね、クオンちゃん、君も一緒に遊んでくれるかい?」



 男の手にはナイフが握ってある。


 その刀身はヌメヌメとしており、何かが塗っていることは見てわかる。


 男に少女を殺す気がないのなら、神経毒かなにかであろう。





 男と少女の距離はあと数歩。




 「 ……ねぇ、筋肉のおじさん。」




 そのとき、少女の雰囲気が少し変わった。



 「 なんだい?」



 それに、気づいていないのか、男はニタニタと笑いながら少女に近づいていく。


 しかし、男の歩みは、次の少女の質問で、止まった。




 「 どうして───嘘をつくの?」




 騙せると思っていたのか、男は嘘がバレたことに少し動揺しながらも、まだ偽りを続ける。



 「 …急にどうしたんだい?嘘なんかついてないよ?」



 その言葉を聞いた瞬間、少女は全てを理解したとでも言いたげに、ニコリと笑った。




 「 それも嘘。やっぱり筋肉のおじさん達悪い人達なんだね。」




 その笑みは、これから起こることが楽しみで仕方がないという子供らしい興奮の中に、狩人のような、鋭いものがあるように感じられた。



 「 悪い人は、倒さなきゃ!!」




 まさか、戦う気なの!?



 彼女も私と同じ人族であり、子供……。



 自分よりも強い種族の大人になど、勝てるわけがない……。




 男達もそれを分かっているのか、その宣言を聞いた後にキョトンとして、



 「 ハハハハハッ!!!俺たちを倒すだぁ?人族のガキが?笑わせてくれるぜ!」



 大声で笑った。



 「 ここまで舐められちゃあ、やるしかねえよなぁ?」



 「 嘘がバレてんなら仕方ねぇ。お前ら、捕まえろ。価値が落ちるからあんま傷はつけんなよ。」



 「「「 了解!!ボス!!」」」



 そう言って、男達全員が各々の獲物を持ち、構えた。



 どうしてこんなことに……。


 このままじゃあの子も捕まっちゃう……


 どうしよう……、どうしよう……



 どうすれば少女だけでも逃がせるか、そんなことを考えてると、



 「 お目目が綺麗なお姉ちゃん、心配しないで!僕強いから!!」



 そう言ってきた。


 強いって……、本当であってもそれはあくまで人族の中のことでしょ…


 人族は魔族には………



 勝てないと断言しようとした私の脳内に、最初に少女が不意打ちではあるが、男の顔に蹴りを入れ気絶させたシーンが再生された。



 勝てない……?本当に…………?



 わからない……



 そう考えていると、ついに男が動き出してしまった。



 こうして、少女と男達の戦いは始まった。




 少女が腰のバックからナイフを取り出す。


 しかし、その一瞬の隙を男達が見逃すはずもなく、男達は既に目の前の少女にナイフを振り下ろしていた。



 ニヤリと笑う男達の顔は、勝利を確信したと言いたげだった。



 しかし、その顔は直ぐに驚きの顔へと変化した。




 目の前から、標的である少女が消えたのである。



 「 ──!?あのガキどこに消えやがった!?」



 「 落ち着け!!相手は人族だ。俺達はなんだ?魔族だろ?人族が魔族に叶うはずがねぇ。何か魔法を使ってやがるんだ。」



 「 そ、そうか!そうだよな!!魔法なら魔力源を探せば───」




 「 う?魔法じゃないよ?筋肉のおじさん達何言ってるの?」




 男のすぐ目の前に、そう言いながら少女は現れて、ナイフの持ち手で男の顎を殴った。



 魔法じゃない……?

 じゃあ、どうやってあんなに早く動いているの……!?



 脳が揺れたのか、倒れる男。



 「 あれ?筋肉のおじさんもうおしまい?つまんなーい。」



 倒れる男をみて、少女はそう言った。



 「 っっ!?っんのクソガキ!!」



 仲間が倒されたことに動揺を隠しきれない男が、ボスと呼んだ男の命令を忘れたのか、少女を背後から剣で切りつける。



 しかし──



 「 あっはは!遅いよ、筋肉のおじさん!」



 少女は振り返ることも無く剣を避けたかと思えば、また、私の認知速度を超える速度で男の背後に移動し、手に持ったナイフを男の背中に刺した。



 「 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」



 痛みで倒れふし、悶絶する男。



 「 うわ!?んもー!筋肉のおじさんうるさい!!」



 少女はそんな男の顔面に蹴りを入れ、気絶させた。



 5人いた男達はあっという間に2人になってしまった。


 「 こいつっ!!よくもっ!!」


 そのうちの一人が、仲間が倒されて怒っているのか、また少女に襲いかかる。



 もう1人の、ボスと呼ばれてた男は──




 急に、体が浮く感覚がした。



 へっ?



 何事かと見ると、ボスと呼ばれていた男が、仲間が少女を引き付けていることをいいことに、私を担いで逃げ始めた。



 ちょっっ!?


 「 仲間は……いいの!?」



 「 あぁ!?仲間?あんな奴ら初めから仲間でもなんでもねぇよ!!俺が生きてりゃいいんだよ!!」



 酷い……。

 あんなに慕ってくれていたのに……!




 「 っ……、最低……!」



 「 うるせえんだよ!!あんまり調子にのるとぶっ殺すぞ!?」





 「 ねぇ、筋肉のおじさん、どこ行くの?」




 「「!?」」



 いつの間にか、少女が男の隣を併走していた。



 「 チッ!!クソがぁ!!」



 男が少女に向かってナイフを投げつける。



 「 うわぁ!?危ないじゃん!!急に何するの!!」



 それをふつうに避けながら少女はぷりぷりと怒り出す。



 「 くそくそくそくそ!!なんで俺がこんなめに!!」



 男はそう言いながら、さらに少女にナイフを投げつける。



 少女はそれを避けながら、


 「 むーー……。追いかけっこもう飽きちゃった。」



 そう言って、足を止め、魔力を高め始めた。


 何か魔法を使う気なのだろうか。


 男はこれを好機と捉えて、スピードを上げる。


 魔法を使われる前に、魔法の効果範囲内から逃げるつもりだろう。



 しかし、少女の魔法の完成の方が、少し、早かった。



 『 影さん、影さん!お願いします!!』



 少女がそう言った瞬間、男の足に黒いものがまとわりつき、男は足を取られて転倒した。



 もちろん、男が抱えていた私も放り出され、お尻を強打してしまった。




 いたたた……


 そう思いながら顔を上げた私が見たものは、



 「 ふふん!!影がある所で僕からは逃げられないよ!」



 胸を張りながら、得意げにそう言った少女の姿だった。

更新不定期です……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ