第6話 魔力登録
更新不定期です。
多分少し百合注意
今、私の目の前にはちっちゃくなった魔王がすねた様子でちょこんと椅子に座ってる。
何を言ってるかわかんないと思うけど私もわかんない。
正確には、「ちっちゃくなった」というより、「元に戻った」という方が正しいのかな?
ルクスさんの話によると、元々魔王は大人ではなく子供らしい。
ルクスさんも魔王が大人になっていることを知らなかったらしくて、扉が開いた時にビックリしたんだって。
その割には全然態度に出てなかったけどね…、流石と言うべきなのかな……?
なんで大人の姿だったのかは、カイナさんが教えてくれた。
というか、魔王を大人の姿にしたのはカイナさんだったらしい。
どうやら今までの生贄に、見た目が子供だからいけると思ったのか、奴隷紋を解除した途端に襲ってきた人がいたらしくて、今回から始めた対策らしい。
ただ、それだともし生贄が魔族に味方するっていう選択肢を選んだ場合、いつ本当の姿を見せるかが問題で、結局カイナさんが上手く時間調節をして、丁度いいタイミングで魔法が解けるようにしていたらしい。
けど、途中で魔法が解けることを魔王は知らなかったらしくて……、堂々と名乗ろうとした瞬間に魔法が解けた……というのが今さっき起こったこと……らしい。
いや、うん、それにしてもほんとに小さくなっちゃった。
180くらいあった身長は今では150ちょいくらいになってる……。
漆黒の髪と真紅の瞳はそのままだけど……、アホ毛がぴょこんと生えて、目が、子供特有のクリクリ感が少し出ちゃってる……。
恐れられる魔王というよりは、可愛がられる魔王になっちゃった……。
「 おい、何を見ておる……。」
ジロジロ見てると睨まれちゃった……。
「 ……いえ、名前……結局聞けてないと思って……。」
「 む?ああ、そうだったな。改めて名乗ろう、我はワズ、ワズ・ハウトン、魔王だ。」
ワズ……、か。
「 魔王様こそ……いい名前、ですね。」
「 そうだろう?両親がつけてくれた自慢の名前だ。」
名前を褒めると、魔王様も少し機嫌が良くなったみたい。
「 話を戻そうか。シアは我々魔族の仲間になると言ったが、実はそれには条件があるのだ。」
え……?条件……??
ちょっと、聞いてないんだけど……
「 ……なに。」
「 魔力登録だ。」
「 魔力……登録?」
初めて聞いた……。
「 ああ、我の国には少し特別な力を持つ者がいてな、その者に他人の魔力を覚えさせると、不慮の事故で亡くなってしまったときに、いつ、どこで亡くなったかが分かるのだよ。人類は生きている限り魔力を生産する。だから、登録した者の魔力に動きが無くなったら、亡くなったと分かる、ということらしい。」
へぇ〜、そんな人が居るんだ。
「 それに、もし、魔力を登録した者が犯罪を犯した場合、魔力を遠隔操作し、魔法を使えなくさせることが出来るのだ。」
それはすごい。
他人の魔力を遠隔操作、かぁ……。想像出来ないや……。
「 我の国では安全を考慮し、その者に協力してもらい、住民全員に魔力登録を義務付けているのだ。」
ふむふむ、それならとくに身構えるような事じゃない……よね?
じゃあ、なんで私に説明してくれる魔王様はこんなに申し訳なさそうな顔をしているの……?
「 ……すまんな、シア。」
「 ???」
ねぇ、どうして謝るの?理由を言ってよ、ねぇ!?
嫌な予感しかしない……!
その時、静まり返ってしまった室内に扉を叩く音が響いた。
「 失礼するわよぉ♪」
扉の前に待機していたそっくりな2人のメイドさんが扉を開けると、そこには20代前半と思われるナイスバディの女性が立っていた。
その瞬間、部屋の中の人全員に緊張が走ったのは気の所為ではないはず……。
隣のルクスさんだけは、私たちと違う感じの緊張をしてる気がするのは気の所為……かな?
コツコツと、こちらに歩いてきた女性は、私の隣に跪いた。
「 結界師兼魔法団団長レヴィリア、呼びかけにより、ただいま参上しましたわぁ♪」
「 うむ、ご苦労。」
すると、魔王様はこっちを向いて、
「 シア、聞いていたと思うが、この者の名はレヴィリア、先程言っていた能力を持つものだ。」
このお姉さんのことを教えてくれた。
この人が……。
魔王様に紹介されて、私はレヴィリアさんの方を向くと、バッチリと目があった。
「 あらぁ!!可愛い子ね〜。この子が魔力登録をする子なの?ワズちゃん?」
「 ああ、そうだ。」
「 了解。お嬢ちゃん、お姉ちゃんの名前はレヴィリアよ、よろしくね♪」
「 ……シア、です。」
「 シアちゃんね!可愛いわねぇ〜!それに、ヘテロクロミアなんて珍しい、赤と青の対比が綺麗だわ♪ 」
「 あ、ありがとうございます……?」
しょ、初対面のはずなのにめちゃくちゃ褒められて、めちゃくちゃ頭を撫でられてるんだけど……これは……??
「 それじゃぁ、さっさと魔力登録終わらせちゃいましょ!私、シアちゃんとまだまだ話したいわぁ♪ 」
「 は、はぁ……」
気に入られちゃったみたい……?
それとも誰に対してもこんな感じなのかな……?
「 シアちゃん、魔力の譲渡の仕方は分かる?」
魔力の……譲渡?
聞いたことはあるけど……、やったことないし、魔力なんて普段はあんまり使わないから多分出来ない……。
「 ……。(フルフル)」
首を横に振ると、後ろで魔王様があっちゃーって感じの顔をして、レヴィリアさんが何故か嬉しそうに、
「 あら、そうなのね。じゃあこれは仕方が無いことなのだわ!ええ!!しょうがないのよ!!」
って言った。
何がしょうがないの???
置いていかないで!?
「 手短に済ませるのだぞ……。」
魔王様は諦めたようにそう言って後ろを向いた。
え、なんでうしろを向くの……?
というかよく見たらレヴィリアさん以外が私に対して背を向けてるんだけど!?
ねぇ!?何が起こるの!?すごく不安なんだけど!!?
オドオドしてるとレヴィリアさんに顔をがっしりと掴まれた。
「 はーい、こっち向いてねぇ〜。」
「 なにをっーーー!?」
何をするつもりですか、と言おうとした私の口は、レヴィリアさんの唇によって塞がれた。
「 〜〜〜〜っっ!!??」
舌を使った濃密なキス。
ほんとに何してくれてるのこの人!?
力ずくで引き離そうとした時、私の身体から力が抜ける。
あ、れ?なんで?どうして?
魔力の流れを集中して見てみると、私の魔力がどうやらレヴィリアさんに吸われているらしい。
しょうがないって……このことだったのかぁ……、それに、魔王様達が緊張してた理由も……。
なんで先に教えてくれないのよぉ……。
身体が完全に脱力仕切ったとき、私はやっとレヴィリアさんから解放された。
「 あ〜、美味しかった♪ 終わったわよ、シアちゃん!」
どこかつやつやしたような気がするレヴィリアさんが元気にそう言ってきたけど、私には返事をする気力がもうない……。
「 あら?少し吸いすぎたかしら?」
ううう……、初めてだったのにぃ……。
そのまま私の意識は暗闇へと沈んで行った。
お久しぶりです!
更新不定期ですみません!!
レヴィリアさんは一応言いますと別にレズビアンって訳じゃないですからね!?
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用語解説
結界師:結界を専門的に扱う人の事。
魔法団:簡単に言えば騎士団の魔法バージョン。