【第09話】ヌクドナルド2
家に帰ったあたしはテンションダダ下がりだった。
お兄さんの対応、大人だったと思うよとレイナは言っていたが、関係ない。
あんな奴、殴り飛ばしてやればよかったのだ。
死武矢男が去ってから、席に着いてビッグヌックを食べるお兄を置いて、
あたしはさっさと帰ってきた。
「ただいまー。」
お兄の声だ。
「ウミ、帰ってないのかー?」
何ごともなかったかのようなとぼけた声が近づいてきて、
あたしの部屋のドアを開けた。
「なんだ、いるならお帰りぐらい言ってくれよ。」
「帰れ。」
「いや、帰ってきたんだけど……。」
「自分の部屋に帰って。あたしの部屋に勝手に入るな!」
あたしは近くにあったぬいぐるみを投げつけて、
お兄を追い払った。
「ウミ、大丈夫か?」
ドア越しにお兄の声。まだいたのか。
「何がよ。」
「いや、さっき怖くなかったかなと思って。」
「全然っ!」
あんな格好だけの男、怖いはずがない。
こちらは煮えくり返っているのだ、お腹が。
「さっきから的外れなことばっかり!」
「そっか。まあ、平気ならよかった。」
「よくないよ!あたしはお兄に、あいつをやっつけて欲しかったの!」
「……。」
返事がない。
あたしが怒鳴ったから驚いたのか?
いや、そんな兄ではなかったはずだ。
あまりに静かなのであたしがドアをそっと開くと、
お兄はこちらに背中を向けて立っていた。
「ウミ……空手は、ケンカで人を傷つけるのに使っていいものじゃない。」
「それは、あたしだってもちろんわかってるけど!
……でも、あたしが言いたかったのはそういうことじゃなくて……!」
「俺、夕飯作るから。」
あたしの言葉をさえぎってお兄は自分の部屋に戻って行った。
なによ、人をケンカ狂いみたいにさ。