62話
僕と遥君は、アデレード先輩に自己紹介を済ませた。
「ふ〜ん。」
自己紹介を済ませた僕を、アデレード先輩がじっくり見ている。
気のせいじゃないよね?
なんか、舐め回すかのように見られてるんですが・・・。
僕は、腕を組んでるアデレード先輩に、視線を送り過ぎないようにするのに必死なのに。
先輩の腕の中で、ドンッと存在を主張してる部位が、気になってしょうがない。
「本当に彼がパーティーのリーダーなの?そっちの彼じゃなくて?」
おや手厳しい。
僕じゃなくて、うちのパーティーのリーダーは、遥君じゃないのかと聞いて来た。
「違うぞアデレード、確かにうちのリーダーはコウタだ。こう見えてコウタは、頼りになるんだよ!」
ありがとうございます!エミリアに褒められる日が来るとは。
何気に、遥君も頷いている。
初対面の人の前で高評価を受けるとか、ありがたいですね。人間関係が面倒な事にならなくて済みます。
初対面で、言外に頼りになりそうにないって、そう言いましたねこの人。
アデレード先輩、心の中のブラックリストに記載しておきましょう。
今の生活になって、貴女で4人目ですよ。
母親
沼田
城咲
そして、アデレード先輩だ。
「そう、でもエミリア、ちゃんと避妊はしなさいよ?」
・・・は?
今、なんて?
「まあ、出来たら、子どもを抱えて学校に行きますよ。」
「日本の高校では、子どもは預かってくれないわよ。」
「え?嘘でしょう!?」
「エミリア、本当だ。日本の学校には、そういう部屋は用意されていない。」
お、お、お、おーい。それって日本だけなの!?
欧米の教育現場はどうなってるの・・・。
「うん、それだけは徹底しないとダメだよ。」
遥君?何会話に参加してるの?
え?おかしいよね?
もしかして、イケメンは同じ人類じゃないの?
ホモ・サピエンス、ヒト科、ヒト族、ヒト種じゃないの?
ヒト科、ヒト族、イケメン種とか?そういう別の生物なの!?
「子どもは宝だよ!?地域で育てていくものでしょう?」
「日本では、各家庭が育てて行くものなのよ。」
「じゃあ、出来たらどうするの?」
エミリア・・・。
嫌われてはいないと思ってたけど、なんでそんな話にまで飛ぶの!?
「意中の相手の子じゃなかったり、誰の子か分からない場合は、中絶したりもするでしょう?」
「日本では、中絶に踏み切れずに、殺してしまう、死んでしまう、事件が後をたたない。日本の高校生では、子どもを育てる覚悟もない奴がいるらしい。」
ミラ?ほとんどの高校生は、そんな覚悟はしてないと思うよ?
これが、教育の違い?国の違い?
「いくら想っていても、避妊だけは絶対してねエミリアさん。」
だから、何で遥君はこの会話に参加出来るの!?
「そういえば、2人は何してたんだ?」
ミラによる明らかな話題転換だけど、何か雰囲気が暗くなってたし、ありがたくこれに乗らさせてもらう。
「遥君と配信をしようと思って。色々試してたんだよ。」
「バズる踊りや、写し方なんかの研究だね。」
何だろう?再び空気が重くなった。
「背信だと?幸太は国にでも逆らうつもりなのか?」
・・・翻訳機・・・。
「違うよ、僕や遥君は国に逆らったりしないよ。動画や映像を、ネットに上げる事を言ってるんだよ。」
「そうなのか?なぜ、こんな誤変換が・・・?」
「日本語だと、発音が似てるんだろうね。」
「・・・なるほど・・・。」
ミラが顎に手を当てて、何か考えてる様子だ。
「踊り?幸太が?」
「いや、僕はおまけだから。ほら、遥君が踊ってる姿とか、人気が出そうじゃない?」
「お小遣い稼ぎにでもなればなってね。」
「せっかくだから、僕らがゴブリンの群れと戦ってる所から、撮ってもらえるかな?」
これには、3人が色良い返事を返してくれたので。
僕はミラにスマホを預けて、僕らが走り出す所から、動画を撮ってもらった。
僕らは、近くにいたゴブリンの群れを殲滅して、踊りまでキッチリと決めた。
「良いな!決まってたぞコウタ!こんな風だったか?」
エミリアが、踊りに興味を示した。
「えっとね、こんな・・・。」
遥君が踊って見せるのを、アデレード先輩とエミリアが2人で見ている。
ミラは俯いて考えてる感じだったけど、チラッとこっちを見た。
僅かな時間、しかしハッキリと僕と目が合った。
・・・ミラは、何か感じとったのかもしれない・・・。
「2人とも、覚えるのはやいね!でも、せっかくだから、腕を動かす時は肩甲骨から、脚を動かす時は骨盤から、これを意識して出来ると、もっとダイナミックな動きになるよ。」
「肩甲骨から・・・。」
「こう、かな?」
エミリアの踊る姿が美しいのは、言うまでもない事だけど。
アデレード先輩が踊る姿は、今晩のソロ活動が捗りそうな勢いだ。
あの姿を見て、ダンスの改善点を注意出来る遥君は、やっぱり、違う生物なんじゃないだろうか?
「幸太、その配信、是非とも協力したいなぁ。この後、時間はあるかな?」
僕は、どこで間違えた?
貴女で4人目ですよ。(フリー◯様風に)




