正体不明
5月発売を予定していたとあるpcのゲームが延期して6月になっていることを友達から聞いてモチベがだだ下がっています
予約もして楽しみにしてたのに!
これはまずいかもしれない
僕が目指していたのはイースダン、1世紀前の戦争に敗れて何もかもを持っていかれ既に中には何も無い国だ、建物などは辛うじてその原型をとどめているレベル
問題なのは建物がボロイとかそんなことじゃない、問題なのは魔物が門の前に2匹いることだ、種族はリザードマン、蜥蜴を人型にしたような見た目に皮膚は緑の鱗に覆われている、手にはどこからか拾ってきただろう歪な形をした槍を持っていた
リザードマンは魔物の中でも真ん中より少し上ぐらいの強さだ、昔の僕なら死んでいたかもしれないけど今の僕なら大丈夫だろう、リザードマンがたまたま門の前に2匹並んで立っているのなら何も問題は無い。だけどあれが誰かの命令によるものだとすれば話は変わってくる。おそらくあのリザードマンを従えているのは魔人だ。
魔人と魔物の違いは明確だ、知能と強さ、魔物は知能がさほど高くなく強さもそこそこだ、中には例外として強い者もいるけど。魔人は知能が高く力が巨大だ、普通は国が動くレベルの敵
「うーん、どうしよう」
確かに魔物がいるだろうとは思った、長年放置されている場所だ、魔物にとってはさぞかし住みよい場所だろう。普通の魔物なら実力差が歴然としていれば逃げていく、だが魔人などに従えられている魔物は逃げたりしない、主の命令を忠実に遂行するようになる。突撃して時間を稼げといえば喜んで死地へ一目散に走り出すだろう
「ここは慎重に進んでいこう、騒がれる前に倒せば何とかなるはず」
魔人とは戦ったことがないので実力は知らないがおそらく相当の力を持っているはずだ。魔人とはそうそういるもんじゃない、いても2桁が限度だろう。だけどその分強いとも聞いている。
相手の実力をはかるためにまずは慎重に中に進入するべき―――
「なんでそんなに慎重に移動してるっすか?」
「その声はトーレスかな」
黄色の光の球が前をフヨフヨしている、ていうか僕の命令とか関係なく自分の意思で出てこれるのか
「ここはドカッといったほうがカッコイイっすよ!」
そういうとトーレスは金髪の少年になると突撃していった……え!?なにしてんのトーレスは!
見ると門番兼見張り役のリザードマンは崩れ落ちていた、崩れ落ちたリザードマンの上にトーレスはスタッと降り立つとこっちを見た
「さ、ちゃっちゃといくっす!」
あとでトーレスにはお説教をしなくちゃいけないな
中に入るとそこには崩れ落ちた家屋に焼かれて炭とかしている木々が広がっていた
かつては貿易の盛んな国として栄えていたらしいイースダンだけどこうなってしまうとその頃の面影は一切感じられない
戦争とはここまで国というものを変えてしまうものなのだろうか
遠くに見える城のような白い建物が視界に入る、城と呼ばれていたであろうその建物は屋根の部分を隕石か何かでも落とされたようにえぐり取られている
魔人がいるとすればあの城の中だろう、自分の威厳を象徴するかのように城の周りには石のような体をした石魔と呼ばれる魔物が数匹飛んでいた
「トーレス、さっきのような突撃は一切禁止ね、相手の実力がわからない以上慎重にいくよ」
「わかりましたっす」
「ていうか僕の意思と関係なく出てきたけどなんで出てこれたの?」
「わからないっす、なんか出ようとしたら出られたっす」
うわ、アバウトだな。まああのラトなら曖昧に片付けてしまっているだけなのかもしれないけど
元々はこの世界の力ではないわけだし、ゲームでいう不具合的な物なのかもしれない
「それよりもどうするっすか?」
トーレスが言っているのはおそらく敵をどうするか、ということだろう
「うん、相手が好戦的なら戦うしかないけど」
「ならその時は俺がやってもいいっすか!」
自分を指差しながら好奇心の塊のような顔で聞いてくる、まるで子供だ、いやまあ子供なんだけどね
「それでもいいけど、僕の今の力がどんなものなのかってのも確認しておきたいんだよね」
確かに僕は力をラトからもらった、セイリスオンラインという僕が誰にも奪われることのない世界の力を。だけどそれがこの世界でどの程度の物なのか、それを僕がこの世界でも使いこなせるのか。それはまた別の話だ
ここに来るまでの魔物との戦闘では圧勝してきたがただ単に相手が弱かっただけの可能性もある、だからここで魔人と戦って自分の力がどの程度のものなのか測りたかったというのがここに来て増えた目的だ
元々はここにある誰も使っていない土地なら好きに使ってもいいと思ったから来たんだけどね、運がいいやら悪いやら
「じゃあ他の奴らは俺が貰ってもいいっすか!」
「ごめんね、でも相手が強すぎたら無理しないで僕に言ってね、ウーヌスたちも呼んで後退しよう」
「はいっす!」
僕とトーレスは城に向かって悠々と歩き出した、こんなにも敵地の中で堂々としていられる。それは僕が間接的にとはいえ沢山の人間の命を奪ったからだろうか、それともラトがくれたこの力のせいなのだろうか
わからない、けど今の僕はたぶん人を躊躇なく殺すことができる、それはたぶん力とかは関係なく僕の中の何かが壊れてしまったからだ、それだけはなぜか言い切れる。
城に着くまでに現れは魔物はトーレスとの約束で僕は手を一切出さずに観察していた
石魔や人間に鳥の羽を生やしたハーピィ、さらにゴブリンなどが現れたがトーレスに指1本触れることなく死んでいった
10分ほど歩いたけどまだ城には到達しない、ああ焦れったい。だいたいなんでこんなに慎重にならなきゃいけないんだ、ゲームの時の僕は派手好きなプレイをしていた、余分とも思える戦力に見栄えのいい装備に派手な大技、それらを多用していた
焦れったい、ああ焦れったい
もうこうなれば迷うことはない、自分のやり方を貫く事にしよう、天上天下唯我独尊、そこのけそこのけ僕が通るってね
「【主人の呼び声】、ここを僕らの物にするよ!」
呼び出されたのは50体の灰炎龍、全員に名前をつけているわけじゃない、それぞれが似たような顔立ちや体をしているがアインには目印として赤の首輪が付けられている
「アイン!」
僕の声を聞いてアインがドタドタと走ってくる、僕の隣まで来るとその足を止めて腰をかがめる、ちょうど僕が乗れるぐらいの高さだ
「いくよみんな!」
アインに乗りながら後ろを見る、アインを入れた総勢50体の灰炎龍の遠吠えに似た鳴き声が空気を揺らした
僕が負けるわけない、なぜかって?今の僕はセイリスオンラインの時の僕だ、その頃の僕は自分に1つの制約とも呼べるルールを決めていた、それはもし万が一誰かに負けたならゲームを止めるというものだ
僕がセイリスオンラインで求めたのは奪われない力だ、守れず奪われてしまう程度の力ならそんな僕はもういらない、それは僕が求めていた僕ではないのだから。
あの頃の僕は世界から、痛みから、恐怖から、悲しみから逃げていた、だけど今は違う。誰にも負けなかった力が、求めていた力が今はゲームの自分のキャラではなく現実の僕にある、もしそんな僕が負けてしまうのなら僕はその程度の存在だったということだけだ。
それに今はウーヌスたちがいる、情けなく逃げるなんてことはしたくない、それは僕に付いてきてくれたみんなにとって失礼だ
逃げ腰になって怯えていたあの頃に戻るくらいなら死んだほうがマシだ!
読んでいただきありがとうございます




