きとうは恐竜
8組の試合は、再び圧勝に終わった。
4分ちょいで、7−0の完勝。
試合は、ゴール下の支配者、鬼頭の独壇場。
「あいつは………恐竜だよ」
そうぼやく声が聞こえてくる。
前の試合で鬼頭に叩きのめされ、哀れパワープレイの犠牲になった6組Aチームの福田君のぼやきだった。
恐竜。
怪獣。
暴君。
鬼頭はこのクラスマッチでも、大人げないほど暴れまわっていた。
剣道部期待の部長で、かなりがっしりした身体の福田君を、散々にぶちのめした試合は、鬼頭の凄さを改めて体育館のみんなに見せつけた。
あの巨体と怪力を止めれる奴は校内にはいない。
県全体でも何人かだろう。
「このままいったら、アイツらとの決勝ね」
ここまで全て完封、完勝の八組。
アイツらに勝つには――――アタシは腕に力を込めて、メンバーに激を飛ばす。
「鬼頭を止めないことには、勝利はないわ!」
「だがのぉ、どうやってとめるんじゃ?」
「宮瀬――――気合と根性!!」
「まあ、怪我しない程度にがんばるよ」
「エエイ、根性無しめ!!」
ぽやっとした笑みを浮かべる宮瀬に幻滅する。
ここまでの感じから、もしかしたら、宮瀬が、とか、おもったりもしたけど、やっぱり気合も何もなさそうなコイツの面を見てると何も期待できやしない。
「ふっふっふっふっふ……あーん・しーん・しなさい美夏〜」
ポニーテールを揺らしてニヤリと笑うのは、きーちゃん。
「校内ナンバーワン策士のアタシに任せんしゃい!!」
「きーちゃん!?何か策があるのか!?」
「ええ!ばっちりあってよ!必勝の秘策が!!檜山さん!」
「え!?ええ?………な、何?」
突如指名された檜山さんが、ビクっと肩をすくめる。
その肩を、ガシイィィと、強く、強くきーちゃんが掴む。
「檜山さん、この試合の鍵は………貴女が握っているの!」
「わ、わたしが………?」
「そうよ、檜山さん。貴女が…貴女があの鬼頭を止めるの!!」
「名づけて――――――――――――」
みのもんたばりのタメを作る
「セクハラ・トラップ!!」
見る間に、檜山さんの顔が冷たくなっていく。
「――――帰るわ」
「待てい!!逃がさんぞう!!」
回れ右した檜山さんの腕を、きーちゃんがガッシと掴む。
「うふふふふふひやまさああぁん。あなたのモデル並の身体、チームのタメに使わせてもらうわよーーー」
「ちょ、ちょっと、その言い方親父くさい………」
「そして負けチームのみんなー!!
ちょーっとお願いしていいかなーー?」
「うっせー、負けチームゆうなぁーー!!………で、なんだ?」
こそこそと根回し工作を始めたきーちゃんを、唖然とした顔で折田がつぶやく。
「なんやしらんが………何を企んどるんじゃ、あやつ」
「さあ?でもなんか面白そうだからオッケー」
呆れきった顔で笑いながら、宮瀬は呟いた。
「楽しそうだなぁ、女バスは」
それから、ちょっとだけ真顔になる。
「………じゃあ、僕も、僕なりに微力を尽くすことにするよ」