参考にしてるだけ………だよ?
「べ、別に変な意味はないよ!?た、たた、単におんなじクラスの子がプロで試合してるから凄いな〜って思ってみてるだけだよ!?」
ママの不意打ちに、あわわと答えるアタシ。
「あらあら〜、そうなの〜?」
「アタシは、バスケの、参考になると思って!み、て、る、だ、け!!」
満面笑顔のママをほっといて、アタシは試合に集中し直す。
(そうよ、アタシは参考にしてるだけ)
宮瀬のプレイスタイルを、アタシのバスケの参考にしてるから、見てるだけなの。
――――そう思いながら、胸ポケットに入れた、預かったままの宮瀬の眼鏡に、服越しにそっと手を添えた。
うなだれて戻る宮瀬の横顔を映す画像に、ナレーションがかぶる。
『宮瀬君がテンポを挙げていった昨日の試合と違い、ずるずると富山の得意なスローペースに引き込まれて、前半戦を24対30というロースコアで折り返します』
不満がアリアリと表れた、宮瀬の顔をアップにして。
あんまりおもしろくなさそうな、観客達の顔をバックにして。
『宮瀬君自身も三点しかとれない一方、パスのミスからのターンオーバーを三回もしてしまうという失態をしてしまいます』
(疲れが残ってんのかな…昨日の宮瀬はこんなもんじゃなかったのに!)
むっとしかけたアタシの耳に、ナレーションが飛び込んでくる。
『しかし、後半、バスケ界の超新星が真価を発揮しはじめました』
アタシの目に飛び込んでくる、変わった画面右上のテロップが。
《ダンク王子、ダンクだけじゃない!》