北海の氷壁
『試合の流れを変えるべく』
カメラが切り替わり、ゴール下からの、昨日アタシ達が見ていたようなアングルに変わる。
画面外から2つの影が超高速で飛び込んできて、昨日の衝撃を思いだし、ぞわっと身体が震える。
宮瀬の身体が躍動する。
もう一人は宮瀬に追走するデイビス。
追走してくるデイビスを左手で制しながら、宮瀬は飛び上がり右手でつかんだボールをリングに!!
『ダンクにチャレンジしますが………』
画面端、
伸びてくる、
不気味に、
青白く、
細長い手が、
「ああ!?もう!」
悔しさに、思わずアタシは画面に嘆いた。
その長い指の、ほんの爪先が宮瀬のボールを掠めて、ずらした。
『昨日の借りを返さんと、エゴロフ選手に、綺麗にボールだけを弾かれてしまいます』
宮瀬はボールを失った右手だけを、フープに叩きつける。カメラに映る宮瀬の驚愕!虚しく響く、金属音。
コートに着陸した宮瀬に、『北海の氷壁』が昨日のお返しとばかりに余裕たっぷりと微笑んだ。
「あーーもう!」
身長差をまざまざと見せつけられて、アタシは頭を抱えた。
アタシもよくやられるけど、ムカつくのよねアレは。
「あらあら残念ねぇ〜」
ママが頬に手を当ててため息をつく。
「でも、こんなおっきな人達に混じって試合できるなんて、この子すごいわ〜。
まるで、美夏ちゃんみたいねぇ〜」
………あの、ママ?そんなこと言われてもアタシが恥ずかしいだけなんですけど。
「それにしても美夏ちゃん、まるで自分が試合に出てるみたいな、感情移入っぷりねぇー」