前半戦
《ダンク王子、ダンク不発》
不吉な言葉に、胸の奥がギュッと詰まる。
………ついでに、ダンク王子なんぞというテンプレすぎるネーミングセンスにも、目が眩む。
『黒人ガード二人に常に強固なマークをされる宮瀬くん。
ノーマークだった昨日の試合と違い、仕事をさせてもらえません』
初っ端から、宮瀬のミスのシーンが連続して映される。
『富山ゴールデンナゲッツは、頻繁にトラップディフェンスを仕掛けてきます。
トラップディフェンスとは、あえてディフェンス網に隙を作っておいて、そこに宮瀬君ほか福岡の選手を誘い込み、複数のディフェンスで囲んでしまうというものです。
福岡攻撃陣、追い込まれた先で囲まれ、ボールを上手く回せません』
巨人達の罠に嵌まった宮瀬。
デイビスとヒューストンに囲まれて、ボールを保持するのでいっぱいいっぱいな宮瀬。
ドリブルをカットされる所、パスのタイミングが合わずに誰もいない所をボールが空を切るところ…宮瀬のミスからカウンターで得点される。
ドキドキハラハラ、心臓に悪い映像。フラストレーションのたまる展開。
(負けたのかな…まさか、負けちゃったのかな…)
心の中は不安でいっぱい。
『インサイド、ゴール下が強いチームのディフェンスを広げるにはアウトサイドのシュートが重要なのですが、そのアウトサイドが決まりません。
福岡は苦しい展開が続きます』
宮瀬の3Pが外れる映像に続いて、昨日は苦しいところで必ずシュートを決めていた南部さんのシュートが外れるところが挟まれる。
(どうみても負けパターンよね……)
ロングシュートっていうのは入らない時は本当に入らない。どうしようもないくらい。
アタシ達タカチュー女バスが負けるときも、ほとんどがアタシときーちゃんの3ポイントが入らない時だ。
アタシ達女バスと同じように、福岡はゴール下で頼りになる選手が足りない分、攻撃は外からが中心になる…なのに、その外からのシュートが決まらない。
その上、宮瀬と、獰猛なオフェンス力を持ったドゥドゥ選手の突破力もトラップディフェンスに捕まえられて…
(八方塞がりじゃない!)
観客も、ひどく大人しい。ぐだぐだな試合内容に、盛り上がる要素が見つけられないのか。
半分しかいなかった昨日のアタシ達の方が、盛り上がっていたんじゃないかと思うくらい。宮瀬の衝撃的なデビューやとてつもないダンクがあったからだけど。
『2ndクォーター3分、宮瀬君、流れを変えようとダンクにチャレンジしますが………』
コメントと共に、映像はデイビスを抜き去った瞬間から表示される。