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スポーツニュース

相変わらず間を空けてしまい申し訳ありません。

「美夏ちゃ〜ん、宮瀬君がテレビにでるわよ〜」


 家に帰ると、ただいまを言うより早く、ママが声をかけてきた。

「わ、わわ、見る!」

 大急ぎで靴を脱いでリビングへ。

「おかえりなさい♪」

「ただいま!」

 あいさつもそこそこにテレビ前のソファーに飛び乗る。

「ぐえ!?」

 ソファーで寝てた弟を踏んじゃったけど、気にしない。

 画面には宮瀬が……

「映ってないよ!?」

「みかちゃんったらあーわーてーすーぎ♪CM明けらしいわよ」

 う、あ、な、なーんだそーか。一瞬すごくガッカリしちゃった…だから母、そんなニヤニヤと含みのある笑顔でこっちみんな。全くもう、学校だけじゃなくて家でまでこんな……

「家庭内ぼーりょくはんたーい…安眠の権利を妨害するなぁ………ふわぁ…ぐう……」

 もぞもぞとアタシのおしりの下から抜け出した弟がソファーの隅っこで丸まって再び昼寝を再開した。我が弟ながらなかなかにタフだなあ…


 CMが明けて…

『暗い話題の次は、明るいスポーツです。

 いやー、日本人でもあんな凄いダンクができるもんなんですねえ。おじちゃんびっくりしちゃったよ!』

 カツラ疑惑の晴れない人気キャスターの雑談に、お付きの女子アナがにっこり笑う。

『カッコ良かったですねー。まだ中学生の、ちょっとかわいい感じがする子なんですけど』

『そのギャップがいいのよねえ。もうたべちゃいたいわ!?』

 ご意見番の中年ニューハーフコメンテーターがくねくねと身体を悶えさせて、スタジオに笑い声が響く。こいつキモいんだけどなんでいつもいるんだろう?

 キャスターが原稿に目を向ける。

『昨日、50センチもの身長差を覆し、229センチのエゴロフ選手を撥ね飛ばしてダンクを決め、鮮烈なデビューをした宮瀬君ですが、今日はどうだったのでしょうか?

 元バスケットボール日本代表、土谷さんに取材に行ってもらっていますので呼んでみましょう……土谷さーん?』

『はーい。福岡は究電記念体育館から土谷がお送り致します』

 画面が東京のスタジオから切り替わる。

 昨日、現実とは思えないような光景を見せつけられた、今日は、入ることもできなかったあの体育館に。

 …ぎゅう、と胸を締めつける想い。

 この目で見れなかった宮瀬を、テレビのモニター越しに見られる。喜びと、嬉しさと…おんなじ街にいるのに、まるでまるで遠い国にいるような…『距離』を感じて。


『正式なプロ契約…A契約ではなく、年収二百万円以下のセミプロ契約となるB契約ではありますが、宮瀬君は日本プロバスケット界では最年少デビューとなります。

 世界のバスケットボール界では同じく十四歳でプロ入りしたスペインのリッキー・ルビオ、フランスのオルレアン公子に続く三番目に若いプロバスケット選手となります』

 髭の凄いおっちゃん…元日本代表らしいけど、知らない…が、手にしたカンペとカメラの間を視点をうろうろさせながら、解説する。画面はそのままに、東京から音声だけの質問が入る。

『そんなに若いプロデビューが多いものなんですか?バスケットって?』

 返答は、すらすらと。

『大学生の体育授業の為に考案された、という歴史のある本場アメリカでは、大卒の選手が主流ですが、アメリカ以外の国では才能を伸ばす為に積極的に若手をプロデビューさせるところが少なくありません。

 現在NBAに所属する選手にもドイツで十五歳でデビューしたダーク・ノビツキー選手や中国で17歳でデビューしたヤオミン選手などがいます。

 非常に稀にではありますが、天才と呼んでいい素質をもった選手が現れた時に、若いうちにどれだけ高いレベルに揉ませるかが素質を発揮するのに重要だと思われます。

 宮瀬くん自身は中学の公式戦に出場したことは無いようですが…もし出場していたとしても、全国大会決勝まで行ったとしても彼のライバルとなりえる選手が一人でもいるかどうか………そんな状況で、彼の才能を伸ばすためには、プロデビューというのが一番の選択肢だったようです』

 ヒゲのおっちゃんの言葉に、ちょっと目がくらむ。

(すごい………宮瀬って、元日本代表にまでここまで評価されてるんだ)

『では、そんな期待を一身に背負った宮瀬君のプロデビュー二戦目をお伝えいたします』


 リアルで見れなかった試合のハイライトが、ニュースに流れる。



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