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才能の片鱗

 相変わらず宮瀬のドリブルは変に高くて危なっかしいし、動きはぎこちなくて素人丸出し。

 ここまでの1オン1では簡単に止めてきた宮瀬のオフェンス。


 でも、


 メガネを外した宮瀬に、アタシの体は警戒心を強める。


なんか違う。

さっきまでと、なんか違う!


 メガネの下に隠れていた瞳は鋭い。

 何かを狙っている目付きに…アタシは緊張を高めた。


 シュン、と宮瀬の顔が近づく。

 宮瀬の瞳の中に、焦ったアタシの顔が映るほど。

(はわ、あわわ!?)

 びっくりして下がるアタシに宮瀬が追走する。

 気を取り直して、これまで以上に真剣にディフェンスにかかる。

 宮瀬は左手でアタシの動きを抑えつつ、右手でドリブル。

 狙いは、アタシの左側を抜いて、外回りにリングを目指すコースか!?。

 宮瀬が、グン、と圧力を増して、

(来る!)

と思って大きく下がったら

「あら?」

 来なかった。

 L字。

 ズバリ直角90度。

 宮瀬が真横にワンドリブル。

 リングから遠ざかるように。


 二人の距離が開く。

 そのままジャンプシュート。

「この…!」

 ブロックに飛びついても、もう遅い。宮瀬のシュートは弧を描き………



 バックボードの上に当たって、バコンと音を鳴らした。

(外してやーんの) という思いを込めてジト目を向けると、宮瀬がすました顔で、弁解した。

「ハズレてもいいんだ。

 まあ、入った方がいいに決まってるけどさ」

 といいながら頭をかきつつ宮瀬は語る。

「そんな技があるって、相手が警戒しさえすればいいんだ。そうすれば、相手が迷う」

「迷う…ねえ」

「今みたいに離れて距離をとって…」

 宮瀬がさっきと同じように横にスライドして、更にリングから遠ざかる。

「で、シュートを警戒してディフェンスが近づいてきたら…」

 宮瀬が手招きするからテテテと早足で近づいたら

「焦るディフェンスを、今度はドリブルで抜けばいい」

 ボールを持たないまま、宮瀬がアタシの左横を走り抜けた。リングにレイアップの真似をして、アタシに振り返り解説を続ける。


「迷わせるにはパスもだね。いいパスが出せれば、更にディフェンスは迷う。……まあ今回は1on1だから必要ないけど」

 宮瀬は近くを転がっていたボールを拾う。

「迷わせたら、迷って、相手が中途半端なディフェンスをしたら、相羽さんが勝つ確率は高くなると思う」


夕日を背にして、微笑む宮瀬。


「ここ数日一緒に練習してみて分かったから」


「分かったって……な、何がさ」


宮瀬の笑顔が……もとい、夕焼けが眩しくて、アタシは視線を逸らして…


「相羽さんは、バスケのセンスがいいってこと」


恥ずかしげもなく、

惜しみなく、


アタシを誉める宮瀬の声に、アタシの身体が奮えた。



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