メガネレスメガネ
昼休みと放課後、宮瀬を相手に1on1で練習しまくった。
「ああ、でもアイツ、ディフェンスはうまかったな」
何日かすると、1on1で宮瀬に止められるようになっちゃったんだ。
「なーんーでー!?」
それがもう悔しくて悔しくてOh!Goddam!ってな感じだったよ。
「………ストレートすぎると思うんだ」
オーバーリアクションで悔しがるアタシに汗を拭いながら宮瀬は語る。
「攻撃のパターンが少ないから、読みやすい。
強引に突っ込むだけじゃなくて、かわすこと、タイミングをずらすこと……そういうパターンを増やしたらいい、と思う」
「なんだよ、下手なくせに偉そうな事言うなお前」
野外コートに仰向けに寝転びつつ、宮瀬にムスッとした顔を見せた。
「体格差があるんだから、距離を空ける工夫をしないと」
転がってるボールを左手に抱えて、宮瀬がアタシのそばで右手をさしだした。
「ん………あ………あー、ありがと……」
ちょっとためらってから、宮瀬の手に捕まって、起こされる。男の子の、手に。
(………ちょ、ちょっとくらい…恥ずかしがってもいいじゃんかよ、宮瀬。仮にも女の子の手にぎってんだぞ!)
そーんなアタシの乙女心なんて気付きもせずに、
「まあ、無難なとこではサイドステップとステップバックかな」
宮瀬が、メガネを外した。
(…………あれ?)
宮瀬のイメージが変わる。
メガネをかけている時の、のんびりとして、ぼんやりしたイメージがなくなる。
メガネを外した宮瀬は、アタシを鋭い目つきで、射抜くように鋭い目つきで、
「じゃあ、ヒントをあげようかな」
タン、と一つドリブルをついた。