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ビハインドバック………?

 このプレイを皮切りに………宮瀬の3Qにやられた分のお返しが始まった。

 FFSに立ち塞がる高い高い人間山脈に…トンネル工事を開始する。


 ヒューストンのお株を奪う密着マークで、宮瀬がヒューストンの動きを封じる。

 まともに進めないヒューストンはサポートにきたデイビスにバックビハインドパス(ボールを持っている手を背中に回して、そこからパスを出す。相手の意表をつけるが、パス精度・パススピードは落ちる)でボールを託した。

 デイビスからエゴロフへの米露ホットライン。

 巨体とは思えぬ器用さでクラレンスのディフェンスをずらし、エゴロフはシュートを放つが、外れ。

 クラレンスがディフェンスリバウンドをもぎ取って、宮瀬にパス。



 速攻だ!



 宮瀬が中央を走り、それに少し先行して南部が左を走る。

 リバウンド争いに加わっていて遅れたドゥドゥも速攻に参加しようと爆走する。

 TGNディフェンスはデイビスが南部に着き、ヒューストンが宮瀬を待ち構える。

 巨漢三人は間に合わない。


 宮瀬が左右へのフェイクを織り混ぜるけどヒューストンの軸はブレない。


 全速力だった南部が急ブレーキ、3ポイントライン左45度で。

 デイビスは急に止まれない。二人の距離が開く。南部フリー。


 宮瀬、右手を背中に回して左の南部へビハインドバックパス!

(そこダメ!?)

 ヒューストン、宮瀬の動きを読んで、パスコースに手が伸びる。

(盗られる!)

 そう思った、瞬間。


 「ぉうわぁぉぉぅぅわんわぃぇ--!」


 破壊音が、怒号が、体育館全体に轟いた。


 ……………ドゥドゥが、リングに腕を突っ込んでた。


 ボールはテン…テン…とコートを転がっていた。


「………へ?」

 

 ドゥドゥのダンクが決まっていた。


  89ー88


 デイビスとヒューストンがあごが外れるほど口を開けて立ち尽くしていた。

 その表情は「理解できない」と物語っている。


 キツネにつままれたように、会場が変なテンションでざわつく中、ディフェンスに戻るドゥドゥが大はしゃぎで宮瀬にハイタッチした。


「じゅるじゅふ・ミャーセ!」

「ん、にょこぼっく」

 それをウザそうに横目に見ながら、南部も帰ってくる。


「あ、今のはセネガル語ですね。意味は『ありがとう』と『どういたしまして』ですね」

「………なぜ分かるの!?」

「昨夜、チームにセネガルの人が居ると分かりましたので、ついでにセネガル語を………」

「………調べすぎやろ」

 檜山さんの解説に天田さん他がビビる中、アタシ達バスケ部員は揃って唸っていた。


「さっきのプレイ…分かった?」

「さっぱり」

「分からん」

「見当すら……」

 きーちゃんの問に、男バスが次々と首を振る。

「美夏は?アンタでも分かんない?」

「んっと……速すぎて良く見えなかったけど……」

 数秒前の視界を巻き戻して分析する。

 ボールを持った右手が背中越しに回って………うん、多分間違いない。

「バックビハインドを一周させてたように見えた」

「…どゆこと?」

 首を傾げるきーちゃんに実演してみせる。

「右手をこう後ろに回して…普通、どっかで離してパスするやん?」

「うん、普通はね」

「離さなかったんだよ、宮瀬は」

 きーちゃんが、更に首を傾げる。

「右手に持ったまま更に腕を回して、………イタタ、アタシの手の長さじゃ無理ね。

 とにかく、宮瀬は左のわき腹…腋の下辺りから、右のドゥドゥにパスしたんだよ」

「超光速で?」

「おまけにノールックで」

 バスケ部員全員が一斉に溜息をついた。


「そんな魅せ技としか思えんようなトリックプレーを、実戦で、ここ一番で、やりやがったのか………あいつは」

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