富山からの刺客・ヒューストン
サイドラインから宮瀬がインバウンズプレイ(サッカーのスローインみたいなもん)で試合再開。
宮瀬から南部へボールが渡る。南部にはデイビスがつく。
南部、無理せずにボールを宮瀬へリターン。
ビタ、と鼻先がくっつきそうなほど密着マークするヒューストン。宮瀬が面喰らった。
「あのディフェンスはキツいよ」
アタシも、思わず口に出した。
「デイビスは直線のスピードは速いけど、横のゆさぶりには弱かった。
多分膝が悪いんだろうな。左に体重が乗った時の反応が遅いんだよ。それに、あんまりディフェンスが上手く無かったから宮瀬に抜かれまくった。
でもあのヒューストンってのは違う。 宮瀬とほとんど同じ身長だけど、ディフェンスの気合いの入り方が違うし、反応が超速い。ディフェンス力だけならデイビスより遥かに上だ。あんなのついてたらキツイぞ、宮瀬」
アタシは言い終えて、男バスの野郎どもがポカーンとアタシを見てるのに気づく。
「………何さ?」
「…いや、お前…よう見とるな」
「……こんくらい普通じゃない?」
「いや、普通じゃあないな」
男バスどもが今さら感心したようにアタシを見てくる。散々試合見ときながら、なんで気づかないかなコヤツら。
宮瀬がドリブルをつく度に、アタシの胸が高鳴る。期待と不安がごっちゃになって。
宮瀬はヒューストンに背を向けて、相手の届かない所でドリブルをつきながら肩越しに戦局を見極める。
ゴール下ではゾーンを崩そうと内柴とクラレンスがちょっかいをかけるが、エゴロフはどっしりと構えて動かない。
南部はデイビスのマークを外そうと走り回るが、スピードで負けている為降りきれない。
左ウイングに突っ立ったドゥドゥが
「おーい、ボールちょうだーい」と大きく手を振るが、
「いや、アンタ3ポイント撃てねえくせにそんなとこいるなよ」
てな感じで宮瀬はスルー。
パスの出してが無いまま、シュートクロックはカウントダウン。
「あ、あんなに固められたらもう無理だ」
後田がチッと舌打ちした。