カリスマ
残り時間五分。
85ー88。
得点差は3。
ボールがコートを出て笛が吹かれる。
富山のベンチが動く。選手が入れ替わる。
TGNはデイビスとエゴロフがコートに入る。
獰猛な猟犬のように激しくしつこいディフェンスをする黒人ガードのヒューストンはコートに残る。
この外国人三人に富山の倉石監督は試合を託したのだろう。
スールシャール監督も、試合を託せる選手を投入する。
「ーーー来た!」
ベンチから動き出しただけで、会場が震えた。
「来た、来た、来た!やっと来やがった!!」
ベンチからコートに向かうだけで客席が総立ちになる。
(ヤダ……)
熱狂、としか言い様の無い雰囲気に
(やだよ………)
頭がクラクラする。
胸が締め付けられる。
全身に電流が走る。
(宮瀬が………遠くなっちゃうよ………)
「み、みんなそんなに俺の事を…!?」
いつの間にか医務室から帰ってきた鬼頭が涙を流さんばかりに感無量で立ち尽くしていた。
が、
「お前じゃねえよすっこんでろ!!」
「空気読めやトカゲ!」
有田その他に叱られて、しゅん、とうつむいて鬼頭は静かに自分の席に着いた。
そこで初めて気付いたように男バスの二人が声を掛ける。
「あれ?キャプテンいつの間に戻ってきたんですか?」
「あ、すんませんキャプテン。来てたの忘れてたから席に荷物置いちまってた」
「お前ら…俺の事嫌いだろ」
「あっはっはいやだなあそんなわけないじゃないですか」(棒読み)
……………男バスの話しは放っといて……
待ちに待った時が来た。
宮瀬が、コートに足を踏み入れた。
客席と、報道陣の数百のカメラからフラッシュの光が浴びせられる中、宮瀬がゲームに戻ってきた。