我慢の時間
二メートルを越える日本人トリオがしっかりとゴール下を固め、背は低いが運動能力は抜群のベンチから出てきた二人の黒人選手がアウトサイドの選手にしっかりとマンツーマンで警戒する…TGNは守備を強化してきた。
残り時間が十分を切る。
79−81
ラスト五分の勝負どころへ向けてデイビスとエゴロフという戦力を温存するTGN。
二枚看板がいない…それでも体格差を活かし、単純明快にして王道なパワープレイで着実に追い上げてくるTGN。
逆転されたFFSはイライラが増していく。
試合全体を通してもゴール下を支配され続けたFFSの攻撃は、今のところ南部のロングシュート頼み。
81−83
残り時間が減るごとにピリピリと高まる緊張感。
一つのミスが即敗北に繋がるかもしれない…そんな緊張感が、みなぎる。
84−86
残り時間七分。
予断を許さない状況で、アタシの視線はコート外に向けられていた。
ゆっくりとストレッチをしながら、鷹の目で十人の動きを観察する…その横顔を見ていた。
きーちゃんも、見ている。その横顔を。
前橋も、後田も、クラスのみんなも。
この究極電力記念体育館のみんなが、待ち望んでいる。
いつ投入されるか。
全身の震えが止まらないまま、アタシは待ち続ける。
並行して、檜山さんの説明は続く。
「スターリーグはサッカーでいえばJFL、野球でいえば社会人野球連盟です」
「………ん?」
「………あ?」
試合に魅入っていた二人が、檜山さんに眉根を顰める。
「スターリーグはプロではなくアマチュアリーグなんですよ」
「はあ!?」
度肝を抜かれたように、二人が声を上げた。
「サッカーでいうならJリーグを無視してJFLの選手を日本代表にするようなものですね。
そんなことでは、W杯出場なんて夢のまた夢でしょう」
「そらそうだ、W杯に行くために、Jリーグが創設されたんだからな」
有田が困惑しつつも答える。
「なんでプロを差し置いてアマチュアが代表になっとや?」
「大人の事情ですよ。お金と、利権という」
折田の問いに、檜山さんのメガネが曇った。