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2nd quarter

試合の臨場感を高める為に改編しております。

 2nd quater開始で、宮瀬がコートに戻ってきた。

 黄色い歓声が響く。


 2Q早々、デイビスが今日二本目の3Pを決めて、追い上げムードを作る。

「やっぱり高さでこられるとツラいわね」


 24―20


 その六秒後、ボールを運んだ宮瀬、味方がオフェンスを組み立てる前に………

「やり返した!?」

 突然の、3ポイント。

 高い放物線を描いたシュートは綺麗にリングを通過して、宮瀬の八点目が加算される。


 27―20


「スリーまで撃てるのか!?」

「完璧じゃないか……!」

 前橋と後田が二人して天を仰ぐ。

 追い付こうとした矢先の3P。

「これほど嫌なものはないわよねー」

「美夏が大好きなプレーよね。追い付いてきた相手を突き放すの」

「…………なんだよ〜人聞きの悪いこと言うなよ〜好感度下がるだろ〜」

 茶化されるが、結構勇気がいるプレイなのだ。

 決まれば、突き放せる。決まれば、相手の追い上げムードに水をさせる。

 でも、外したら相手の追い上げが更に加速する…一か八かの賭け。

 気楽に打てるもんじゃない。でも、何の気負いも無しに宮瀬は撃った。

 その気の強さが、恐ろしい。

「プロを相手に、真っ向勝負…か」

 デイビスのボール運びを妨害する宮瀬が、あまりにも普段の宮瀬と違いすぎて、怖くなる。


 2nd quaterに入って、TGNは宮瀬への対策を打ってきた。

 デイビスがリングに背中を向け、宮瀬にぶつかる。

「うわ、ゴリ押し」

「えげつねえ……」

 デイビスが、パワープレイで宮瀬を押し込み始めた。

 PGに似合わない巨体を活かしてしっかりとポジションを取り、そこからプレイの起点になる。

 1Qには通らなかったデイビスのパスがTGNに周り始め、2Q中盤はTGNの時間になる。

「あー!また入った!!」

 デイビスからエゴロフへ、米露ホットラインが繋がりついに二点差に追い上げられる。


 38ー36


 TGNがじわじわと追い上げてくる。

 ボールが入る前の一瞬だけ息を抜く瞬間、宮瀬が汗を拭った。

 ものすごい汗。きっと、とてつもなく消耗してるのだろう。デイビスのパワープレイを止めるのは大変だろう。

(がんばれ…!がんばれナオキ……!)

 メガネを手に、アタシは祈る。


 ………突き放すか、追い付かれるか。

 ボールを持つ宮瀬を究極電力体育館の全員が固唾を飲んで見守る。

 TGN監督平石は立ち上がり選手達に指示を出す。

 FFS監督スールシャールはコートに片膝をつき、ただ無言で宮瀬に目配せした。

 宮瀬→ゴール下の内柴にパス。

 内柴から逆ウイングのドゥドゥにパス。

 ドゥドゥ、ドリブル突破→でも、ゴール下をエゴロフに固められてボールをフォローに来た宮瀬にリターン。

 宮瀬、逆ウィングの南部に即パス。(直後、走り出す)

 南部、シュート→小嶋がブロックに飛ぶ→南部、実はシュートはフェイク、小嶋をかわして走り込んだ宮瀬にパス。

 宮瀬が跳び、エゴロフのブロックをかわしてのレイアップ…は

「ファーーック!!」

 追随したデイビスに後ろから叩き落とされた。

 バシィーーン!!という嫌な音が響く。着地につんのめった宮瀬がアタシの目の前で膝をつく。手を伸ばせば、届く距離に。

「だ!?だいじょうぶ!」

 アタシの声に宮瀬が顔を上げる。その顔には悔しさが溢れている。

「やり返して、くる!」

 宮瀬はすぐに走り去った。でも、返事が返事が帰ってきたのは嬉しかった。ああ、あれは本当に、ちゃんと『宮瀬』なんだって思えて。当然のことかもしれないけど。



 宮瀬がブロックされたボールはTGN松山が確保。

 速攻に移ろうとしたが南部が松山をディフェンス、内柴がパスコースを塞ぐ。

 その間にドゥドゥ、クラレンスが防衛体制を整え、速攻を断念した。

 デイビスがパワープレイで押し込み、攻撃の隙を窺う。

「また、あのデカイのでくるかな……」

 エゴロフはここまで12点。

 高いだけでなく、得意技のフックシュートが曲者だった。

 ディフェンスがいるいない関係なしに決めてくる。

 そして、エゴロフを止めるのに人数を割いた所にデイビスが的確にパスを入れてくる。

 ゴリゴリと押し込んでくるデイビスを、宮瀬は18センチも小さな体で受け止め続ける。

(やり返してくる、か……)

 悔しげに吐き捨てたシーンを思い出す。そう言えるアンタは、すごいよ。


 デイビスからエゴロフにボールが渡る。エゴロフのディフェンスにクラレンスだけでなく内柴がカバーに着く。

 でも……

「やられたァー!?」

 エゴロフから、内柴が離れてノーマークの松山に渡る。

 ゴール下、外しようの無い松山の同点弾は………

 後ろから、

 バレーの、

 アタック、

 見たいに、

 飛んできた、

 宮瀬が、


 弾き、飛ばした。

「うっそだろー!?」


 悲鳴の様な歓声の轟音が鳴り響くなか、

 ボールを取った内柴から走り込む南部に、

 南部からドゥドゥに、

 追いすがるデイビスをコケにするようにドゥドゥからまた南部に。

 そして南部がイージーレイアップで悠々と決めた。


 40ー36


 TGNがタイムアウトを取る。

 同点を掴み損ねたTGNが項垂れて戻る。

 FFSは全員で宮瀬をもみくちゃにしながらはしゃぎまわっている。

 完璧に明と暗に分かれていた。


「やり返し……」

「………やがった」

 男バスの二人が呆然としている。

 ブロック。

 宮瀬が、松山をブロック。

 31センチの身長差をものともせず、TGNの日本人で最高身長の松山をブロック。

「すっごい……どんだけ跳んでんのよ、アイツ」

「100センチは……超えてるでしょうね……信じ、られ、ないけど」

 口あんぐり状態のきーちゃんに、なんとか冷静さを保とうとしている檜山さんが分析する。

「俺、ジャンプ力51しかないぞ……宮瀬の半分しかとべないんかー!?」

 前橋が何か落ち込んでいる。ほっとこう。

 前橋のジャンプ力が劣ってるんじゃない…宮瀬が凄すぎて、比較にならないだけだ。 


 この後、勢いはFFSに戻る。

 宮瀬自身はフリースローでの一点をプラスしただけだが(一本外した)宮瀬がディフェンスを切り崩した穴を、ドゥドゥとクラレンスが容赦なく攻め立てて、一気に突き放した。


 2nd quarter終了


 51ー43



 宮瀬の前半の成績


 得点9

 アシスト4

 ブロック1

 スティール2


                     ダンク一回

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