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初デートの時の待ち合わせってドキドキだよね

デート。


      デイト。


           ………でぇと。


……えへへ。

    

…!

イカンイカン、しゃっきりしろぉアタシ!変に意識するんじゃない!これじゃあ変な人だ!!


寒くなり始めの11月。

アタシは人の集まる体育館で宮瀬を待っている。

 きーちゃんのアドバイスで、アタシなりに精一杯のオシャレをして…



日本プロバスケリーグの一つJBA開幕戦。

福岡ー富山戦の会場『究極電力記念体育館』。

正門前。アタシはここで宮瀬を待つ。


地元福岡のフライングソーサーズ(略してFFS)………地元チームの野球は鷹、サッカーは蜂なんで、バスケのプロチームも何か飛ぶヤツにしようとチーム名が公募され………こんなへんてこな名前になった。

(まあ、人気も成績も低空飛行だがな!)

 リーグ加入から今まで三シーズンずっと最下位突っ走るチームには、ファンが定着せず、客入りも良くないそうで。

(まあ、お陰でタダ券がもらえるんだけどね〜)


今回対するは、富山ゴールデンナゲッツ。身長の高い選手ばかりを集めた人間山脈だそうだ。

高さに任せたプレイは堅実だが、地味過ぎて華がないらしい。


不人気チーム同士の、はっきりいって微妙なカード。

それでもまあ、開幕戦なので五割増しくらい客は来てる。満員にはほど遠いけどね。


まあ、でも…


………でぇと…かぁ…………


   てへへ



ああもうダメダメヤバいヤバい!

嬉しくて、ドキドキする。

でもいつまで待たせる気よ。かれこれ三十分は待ってるんですけど待ち人一向に来る様子がございません。

乙女を寒空に待たせるなんて許せん!来たらまず文句言ってやる!それから会場内の馬鹿高いジュースにお菓子をこれでもか、ええいこれでもか!!というほどおごらせてや


             「おっまたせ〜!」      「ま、待ってないよ!」

パっと顔をあげて

「………なんだ、きーちゃんか」

「なんだとはなんだ〜?」

 落胆するアタシのほおをきーちゃんがぐりぐり。

「まだ美夏だけ?まあまだ十分前だもんね、そんなもんか」

ギャルっぽい服装のきーちゃんを見て、アタシは何となく恥ずかしくなって空を見上げた。

風が枯れ葉を旅に連れていく。

秋晴れの穏やかな一日だ。

「ところで美夏ぅ…」

 きーちゃんが上から下までジロジロと舐めるようにアタシをみて

「……アタシが貸したミニスカートも履いてきてるし、努力は認めるわよ……でも」

 きーちゃんが大きく大きくお〜きく溜め息をつく。

「な〜んで下にスパッツなんか履いちゃうのかな〜!?」

「こ、こんなふりふりひらひらのミニなんて普通に履けるかー!」

 見えちゃうよ!大事なものが色々と!

「見えそうで見えないとことか、見せないように抑えたり恥じらったりするのが

男心をくすぐるのだとなぜわからんかオマエはー!」

「アタシはきーちゃんのオヤジ心の方がわからんわー!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ーーーー昨日。


宮瀬の嬉しそうな顔は

「うん。一緒に行こう」

続いて、苦笑いになる。


             「ただ、そのチケットもう持ってるけどね」

                    「…………ふぇ?」


「言ってなかったっけ?僕、FFSのボランティアに入ってるんだよ」

「ぼらんてぃあ?」

「うん。ボールボーイとか雑用とか」

アタシは頭が真っ白。

「で、チケット貰ってさ。ノルマ、三十枚」

 苦笑する宮瀬の手に、どっかで見たチケットが大量に。アタシはひきつり笑いを返すしかなかった。

「今、クラスのみんなに配ってたとこ」

 つまり、なに?

 アタシってば自爆の公開羞恥プレイ?


 周りの生暖かい目が、なんかヤダ。


 となりの檜山さんは、何事も無かったかのように淡々と本を読んでいる。

 折田はにやにやしとる。

 きーちゃんは「やってもーたーーー!」という顔をしている。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


みんなと一緒。


別にこんなの、デートでもなんでもないじゃん。

だから

   一足早く来て

もし宮瀬も早く来てたら

          ほんの短い時間だけでも

          ふたりっきりで

          デート気分が味わえるかと思ってたのに……


              宮瀬は、まだ来ない。


「いいじゃんいいじゃんクラス合同でもなんでもさ〜。偉大な第一歩やんか〜」

「ぷぎゅ!?」

 きーちゃんがガバっとアタシを後ろから抱き締める。

「いいじゃんいいじゃんいいじゃんかー。ちゃーんと試合後に二人っきりにできるようにセッティングしとっちゃるけんさー」

「ふ、ふたりっきり!?」

「ほらほら〜今からそんなに固くならんと〜緊張しすぎだってば〜」


 時間キッチリに

「みんな、こっちこっち」

 ぞろぞろと集団で近づいて来る。

 2ー1を中心としたタカチュー軍団だ。

「さすが檜山さん。仕事キッチリ」

「はぁ、なんで休日までクラス委員の仕事をやらなきゃいけないんだか」

 先頭の檜山さんがため息をつく。

 ………檜山さん、大人っぽいなあ。

 チェック柄の落ち着いたデザインで、季節に合わせた上品な色使いの服装。背が高い上に出るとこ出てて羨ましい。

「………もんでみたいわね」

 ………きーちゃん……あんたってやつは。



 最後に

「あ、みんなもう集まってたんだ」

 五分遅れで到着した。

「宮瀬降臨!!」

「宮瀬キター」

 変なテンションのみんなが宮瀬を取り囲む。

 で、きーちゃんが

「おお!?意外にもスポーティ」

「どう?うちのチームジャージ」

 宮瀬はいつものぼんやり顔に似合わない、スポーツジャージを着込んでいた。

「よ、よぉ…ださメガネ」

「あ、やっぱりダサい?」

 あの試合の前のアタシなら

『ぬぁーはっはっはー!!なんじゃそりゃ似っあわねー!!』

 と爆笑しただろうけど、

「ん、うぁ…あー、いや…その、似合ってる、ぞ」

 しどろもどろになりながら、宮瀬を誉めた。

「どっちやねん」

 ありがと、と軽く礼をいった宮瀬が続いてアタシを見る。

 …恥かしくて、なんとなく左手でさりげなくスカートを抑えた。

「相羽さんも、似合ってるよ」

「そ、そそそうか!」

 そう言われると、羞恥心を捨てて恥ずかしい服を着た甲斐もあるってもんで

「うん、でも私服だと小学校の頃を思い出すねぇ」

「どうせ成長しとらんわー!悪かったなーー!!」

「じぇいぺぐ!?」

 あたしの怒りのハイキックに宮瀬は倒れた。


 あ、なんかこんなやり取り久しぶりだ。

 

 周りのやつらがあたし達のドツキ漫才を見て笑い声を上げる。

 アタシも自然と笑顔になる。

 宮瀬も、笑う。

 きーちゃんが、やれやれ一安心といった感じで笑顔になる。

 檜山さんは、困り眉を作ってため息をついた。


 みんなと一緒でよかったな。

 久しぶりに宮瀬と肩の力を抜いた掛け合いができたような気がする。

 なんとなく胸のモヤモヤが取れたような、爽快な気分!!


 ウキウキしてアタシはみんなの先陣を切って入場口へ走り出した。


「さぁ!行こうぜメガネ!!どんな試合になるか楽しみだよ!」 


 生まれて初めてのデート……みたいなものを、宮瀬と一緒にバスケが見れることが嬉しくて、アタシは跳ねるように駆け出した。


「保障するよ、今日は絶対楽しい試合になるってさ」

 宮瀬が追いかけてくる。にこやかに笑いながら。



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