クーデター下剋上。
「あんた、部長剥奪」
「………………は?」
11月末。
あたしは一方的な解雇通知を突きつけられた。
「そしてアタシの部長就任。おめでとう!!アタシ!!」
クビを宣告した副部長が自らに祝福する。
「イエーイ、きーちゃん部長イエーイ!!」
「きゃー下克上!げっこくじょう!!」
「謀反よー!!ついに謀反が起こったのよー!!」
女子バスケ部部室では、呆然唖然とするアタシを置いてけぼりにして大騒ぎ。
「ちょ、ちょちょちょ、チョット待ってよ!!
な、何!?なになになに!嘘!?本気で!?」
あたしの声、震えてる。動転してる混乱してる。
「ホントに………アタシを、クビにする………の?」
消え去りそうなアタシの声に、みんなのテンションも下がって、水を打ったように静まり返る。
沈黙。気まずい、空気。
部長をやめさせられる…アタシの人生設計が崩れる。
中学で頭角表して
名門・強豪高校で名を上げて、
大学入る頃には日本代表に選出されて
実業団に入って
………ゆくゆくは、世界唯一の女子プロバスケ、WNBAに入って…
そんな、人生設計が崩れる。
重い空気、破ったのは、きーちゃん。
「美夏、アンタが腑抜けたせいで、もう何試合負けたか分かってる?」
「………………っぁ」
言葉が胸に突き刺さる。アタシの呼吸、一瞬止まる。
五試合、負けた。五連敗だった。
今までなら肩慣らし程度のチームにアタシ達は負けまくった。
「確かに、アンタはタカチュー女バス史上最強の選手よ。
アンタがポイントガードやってくれて、
ゲームメイクしてくれて、
アウトサイドのシュートを決めてくれて、
ディフェンスを混乱させて、
チームをアシストしてくれて、
アタシ達は市でも強豪になれた」
「ほーんと、美夏がいなきゃ、うちら絶対万年一回戦敗退のままだったよねー」
うんうんと他の部員の子達もうなずく。
「でも、今のアンタは、かんっぺきに部長失格」
きーちゃんの声は、冷たい。
アタシの成績は落ちまくってる。
シュートは外す。
カットインは止められる。
フリースローは落とす。
3ポイントは届かない。
パスはミスる。
アシストは繋がらない。
重い・・・痛い・・・苦しい・・・
「つまんなそうに試合しないでよ。
どうせ戦力にならないなら、
どうせ役に立たないんなら、
最初っからいないほうがマシよ!!」
「ひ・・・どい・・・よ・・・みんなぁ」
滲む視界。
「わっかんない、アタシだって、分かんないんだよぉ!!」