表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/61

後遺症

「男女バスケ部両キャプテンとも、後遺症を引きずっている」

 と、いう噂が立っているらしい。

 鬼頭はあの一戦以来、完璧に自信を失くしてしまっている。

 強引なパワープレイが影を潜め、恐竜のようだった鬼頭は、単なるトカゲに成り下がっている。

 男バスでの暴君っぷりも、あれ以来影を潜めている。

『NBAは無理だろうけど、日本のプロバスケくらいでなら、当然プロになれる』

 そう言われてすらいた鬼頭だが、ここ数ヶ月の成績下落ぶりは、高校へのスポーツ推薦すら危うい状態だ。

 変わりに、後田と前橋が主導権を握りだした。

「いつ宮瀬がバスケ部にきてもいいように!」

「宮瀬が見ても恥ずかしくないくらいのプレイをするぞぉ!!」

 男バスのスピードは以前とは比べ物にならないほどテンポアップした。




 女バスキャプテン………

 つまり、アタシも、あの日以来………

 あの時から………おかしくなってる。

 あんなに楽しかったバスケが、なんとなく楽しくない。

 つまんない。

 ものたりない………

 オマケに、フリースローを打とうとするたびに………


 あの時の

 宮瀬の背中が

 目に浮かんでくる。


 アタシのフリースロー成功率は急降下している。

 8割あった成功率が………いまでは6割スレスレ。

 これじゃあ、接戦の時に競り負ける。

 アタシのフリースローのミスで負けることも、少なからず出てきた。


 クラスでも、おかしい。

「相羽さん、これなんだけど」

「あ!う………うん」

 アタシは、宮瀬とまともにしゃべれなくなってしまった。

 宮瀬の顔を見ると、ドキドキ止まんない。

 宮瀬の声を聞くと、ドキドキ止まんない。

 宮瀬が近づくと、ドキドキ止まんない。

 前はあんなにバスケの事を、NBAの事を語りあったのに、今は、宮瀬と自然におしゃべりもできない。

「ねーねー宮瀬君、ちょっと教えて欲しいんだけど〜。

 私達ね、最近NBAを見るようになったんだけど、チームがいっぱいありすぎて分かんなくって〜〜。

 だから〜〜、宮瀬君が好きなチームとか教えてくれると嬉しいな〜〜って」

「ああ、僕は全チーム好きだから」

 そして、宮瀬が他の女の子としゃべってるだけで、胸がチクチク痛くなる。

 前は、そんなこと無かったのに。

 前は、こんなこと無かったのに。


「男女バスケ部両キャプテンとも、後遺症を引きずっている」

 ああ、全くその通り。

 どうしてこんな気持ちになるのか、どうすればこの後遺症が治るのか、誰か教えて欲しい。切実に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ