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08 最初の討伐

最初の討伐



どうも『俺』という人物は美少女の涙にとことん弱いらしい。


結局、アリサに乗せられて勇者の補佐として動く事になってしまう。


父親はアリサから話を聞いたらしい。


わざわざ挨拶にきたぐらいだ。


そして、早速お城に向かう事が決まった。


気になるのはアーサーの睨みつける顔だ。


どうやら、この役はアーサーがやることになっていたのかもしれない。


この時点、俺はアーサーの睨みの意味を完全に誤解していた。




俺は父親とアリサに連れられてお城に向かう。


王に魔王討伐前の挨拶に伺うことになったからだ。


俺の服は学生服のままだ。


ただ、ポケットには今朝作ったキャラメルが入っていた。


何かあったときのための非常食だ。


非常食を食いしん坊のアリサにおいそれと出すわけにはいかない。


見せたら最後、みんな食べられてしまう。




俺は、半日馬車に揺られて町を通り抜ける。


そして、お城に入った。


どうやら、『勇者の城』というのは王城を囲う『砦の一つ』ということらしい。


しかし、この馬車の出来の悪さには閉口だ。


俺は、治りかけていたお尻の痛みが復活する。


用心して、小さな布団を用意してもらっていたが意味がない。


けれども、同乗者達は重宝して喜んでいた。


要は、鍛え方が違い俺にはまだまだ厳しかった。




俺は、お城に入ってから感じることがある。


それは、第一印象が感じの悪い城だ。


アリサの父親を含めて人間扱いされていない。


俺には、腹立たしい限りだった。


どう見ても場違いな『庶民一行』というところ。


俺は、密に謀反を考えていた。


アランたちから聞いた話でおおよその事情を掴んでいる。


この国の『癌』とも言うべき存在があるからだ。


アランの言葉が正しいのは町並みとそこに居る人の顔を見れば判る。


おそらく、街の多くの人もアランと同様の考えだ。




やがて、俺達の面会の順番がきた。


一行は、『王様』と言われる人の前に連行される。


まさに、『連行』というのが正しい。


この世界に未練の無い俺にとって、怒れることばかりだった。


勇者の親子は、王の前に跪く。


俺は黙ってその後ろで、頭を下げるだけの予定だ。


そして、俺は部屋の様子を観察する。




王はきらびやかで立派そうな衣装を着ている子供だ。


普通なら、『大臣などが補佐する』と思われる。


しかし、順番待ちの時に確認した限りそうではない。


その大臣さえも端に追いやられていた。


そして、王の周りには『俗物』がいる。


王様以上に威張っている小太りの男が数人いた。


これが、街で悪評の『側近』と言われる集団だ。


王様を小さい頃から囲い込んでいる者達の事だった。


王様もなんとなく恐れている用に見える。


人の居ないところで、王様はどのように扱われているのか気になる所だった。




王からの言葉を貰って。勇者のマイケル卿とアリサは平伏している。


俺が『異界人』ということは城には既に知られていた。


そして、俺を補佐として魔王討伐に向かう事になっている。


「失礼とは存じますが、魔物の定義を確認したくて」


俺は場を取りきっている側近にプログラムにない質問を投げかけた。


側近の一人が答える。


「人の世に害を与える者たちだ!」


すると、その態度に腹を立てたのか別の貴族らしい男がしゃしゃり出てきた。




俺の近くに近づいてきたのは、威張っていた側近の一人だ。


大臣の一人がしかめっ面をしている。


案の定、臣下といわれる人と仲が悪そうだ。


俺は、アランや侍女達の雑談からおおよその事情を掴んでいる。


この世界の情報は案外下々の方が詳しい。


職場では話せない愚痴を、外に出た時にする。


その結果、噂は信憑性を持って庶民の間に伝わっている雰囲気だった。




「きさま!、ここをどこだと思っている」


「弱者の集まりだろう」


「・・・」


俺の言葉に部屋の雰囲気が変わった。


正確には『凍りついた』というところだ。


あまりの言葉にその男が剣に手を掛けた。


俺自身、無謀でこう言っている訳ではない。


それなりの成算があるからだ。


王の顔を見れば判る。


どう見ても、傀儡の王だ。


威厳もなにも感じない。


そして、周りの兵隊の士気も最低で任務中にあくびをしているほどだ。


魔物討伐も人任せだ。


『女が行く』というのになんの関心も持たない。


つまるところ、俺たちを見てもいなかった。


それがよく判る。


だから、俺はすこし波風を起こしたくなった。




貴族の男が剣を抜いた。


無礼打ちを考えているのだろう。


周りの貴族達は嫌な物を見る目つきだ。


貴族の連れ合い女性達が目を背ける。


場の慣れた雰囲気は、これが良く行われる儀式なのを示していた。


勇者の親子は『言葉も出ない』というところだ。


予想外の事態に混乱しているのだろう。


この親子には悪い事をしたかもしれない。




俺は部屋に入ったときから狙っていた。


面会者は武器を取り上げられて、面会をする。


しかし、武器を持っている人間が王の近くにいる。


逆にいうなら、そこにしかいない。


だからできることだ。


でも所詮は『夢の中の出来事だ』と、俺はどこかに思っている。


夢だから出来る荒業だった。




騎士たちの動きで、俺には彼たちの動きの遅さは気付いていた。


この世界では俺は疲れ知らずで早く動ける。


俺は、そのことに早々に気付いていた。


一番はっきり判ったのは、メレンゲを作るときだ。


俺がやればものの数秒で出来ることを知った。


ほかの人がやると数分掛かる。


そのことから俺の動きの速さを知った。


普段は意識しなければ早くは動けないことも判っている。


その貴族が剣を完全に抜ききる前に俺は行動を開始した。


貴族が持つ剣を奪うと玉座に向かう。


側近の者が止めようとする。


しかし、その動きは騎士達より遅い。


そして、俺は王の首に剣を突きつけていた。




「なにをするんだ!」


ようやく、悲鳴らしきものが部屋からあがる。


「王様、このような役立たずの側近などいくら居ても無意味ですよ」


「きさま!、なにを言うか」


俺の言葉に反論したのは側近達だ。


王は震えているだけ。


周りの側近は、王を人質に取られて動けなかった。




「王は魔物を討伐するように指示を出しましたね」


俺は、王の言葉を言質に話を進める。


「ああ、確かにそう命令したが」


震える声でそう答える。


「だから、魔物を討伐に伺いました。王は街の様子をごらんになった事があり

 ますか?」


「いや、ない」


「庶民が悲惨な目に会っているのを見過ごす側近は魔物が化けている証拠です」


それを聞いた側近達はたちまち色めき立つ。


部屋の中の重臣たちは、俺が『側近の敵』と判って態度が変わる。


とりあえず『傍観』というところだ。


「どうしたら、いいのだ」


「側近達の持ち物を検査すれば、いいでしょう」


「そんなことをすれば、叱られる!」


王の態度は側近の行動を恐れている。


それがよく判る。


いじめられっ子の典型的パターンだ。


王様は、子供の時からそのように躾けられてきたのが判る。


「王様、誰に叱られるのですか?この国で一番偉いのは王様でしょう」


その言葉に感じる物があったのか、王の態度が変わった。




「判った。大臣!」


すると、このやり取りを見ていた大臣が進み出てきた。


「側近達の身辺を調査しろ」


すると側近達の態度が急に怪しくなる。


調べられては不味い物があるらしい。


しかし、大臣は王とに対して敬礼して下がっていく。


俺は、そこに若干の違和感を感じた。


部屋の中の残った人々は俺の姿をまじまじと注視している。


俺の『格好がなにか問題があるのか?』と感じた。


ただ、誰も動こうとしない。


俺は、それが不思議に感じた。



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