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21 武力介入

武力介入



俺達は、翌日の日の出前に起こされた。


そして、ゲートに連れて行かれる。


今回の出口は、森の木の洞だ。


ゲートからでたところで、リザードから声が掛かる。


「明日の朝まで待つわ。その時点で人間に引き上げの態度が無い場合は・・・」


俺に対するあとの無い最後通牒だ。


俺とアリサは、リザードの宣告に無言で頷くだけだった。




後にも先にもここでうまくやらなければ、魔物の大攻勢が始まる。


そうなれば、人間に被害がどれほど出るのか判らない。


そして、一度始まってしまえば二度と収拾の機会はなくなる。


俺達は、悪役になってでも事態の収束を図るしかなかった。




リザードに見送られてゲートを離れた。


俺達は、森を後僅かで抜ける。


そんなところで俺は人を見かけた。


様子を見ると、十数人が朝食を取っている。


外見は『猟師と樵』というところだ。


俺達は堂々と、彼等の前へ出て行った。




樵の一団は、胡散臭そうに俺達を見る。


俺トアリサが、森の方から出てきたからだ。


彼等は、俺達を明らかに警戒していた。


その様子にアリサが声を掛ける。


「あなた達、誰の許可で森に入ったの?」


男達は突然言われた質問に戸惑っていた。


「許可と言っても、ここは誰の土地でもないのに」


「魔物が居たでしょう」


「あいつらなら、少し脅しただけで引き上げていったよ。大したことはない」


男達はいかにも腕自慢というところだ。


「それで、あなたたちはここで何をするつもり?」


「お前達には関係ないことだが、領主の命令で森を切り開いて畑を作るんだ」


「領主の?」


「そうだ、邪魔するようなら痛い目に合うぜ」


その顔は、欲が垣間見える顔だった。




男ばかりの所に若僧を護衛に美少女が突然出現した。


領主からは『邪魔するものは排除して良い』という指示を受けていた。


仕事の邪魔をしようという少女には何をしても良い。


男たちの頭の中に浮かぶ共通の認識だ。


ここは、人間の法の及ばない森の中!


そこに無警戒で獲物はのこのこ現れた。


男達は領主からの依頼で動いていた犯罪者の集団だった。




彼等は、開発がうまくいけばそれを理由に免罪される。


なにもせずに戻れば、再び犯罪者として扱われる存在だった。


森からの出口は広範囲に兵隊が見張っていて出て行けば殺される。


だから、彼等は言われたことをやる。


それが一番良い結果を生む。


そもそも、こんなところに人はいない。


彼等にすれば、目の覚めるような美少女の出現はありえないことだった。





アリサが彼等の目つきに気付かない感じで説得を試みる。


「私は王命で魔物退治を命令された勇者です」


「その、勇者さんはなぜこんなところに?」


「魔物との戦いを有利にするため・・・」


アリサとの話をしながら、男達はアリサに接近する。


アリサはようやく男達が、アリサを襲おうとしていることに気付いた。


「あなた達、判っているの?」


「俺達は犯罪者さ、その前にのこのこ現れたお嬢ちゃんが悪いんだよ」


「やめなさい!」


俺の見ている前で、ついに男たちの一人がアリサに手を伸ばした。




俺は最初からこのメンバーの品の悪さに気付いている。


男達は、いかにも恐喝でもやりそうな雰囲気だ。


それなのに、アリサはどのように説得するのか考えていた。


アリサは王命の勇者のお墨付きに期待していたようだ。


しかし、このような辺境の末端住民達では王の権威は届かない。


彼等に『王命』というのが効果があるのか?


俺は、大いに疑問を持つところだ。


王命より、領主の命令の方が遥かに重い。


案の定、男達はアリサを別の意味の目標に定めたようだ。




「そこまでにしてもらおうか」


俺は精一杯の威厳で声をかけた。


「うるさい、殺されたくなかったらそこで見ておれ!」


「そうは行かないな。おれの妻に不埒な真似をしようというなら」


アリサは、俺の言葉に嬉しそうに反応する。


「お前はこの女の亭主だというのか?」


「そうだ」


「そうか!」


男は声を掛けると同時に突進を掛けてきた。


俺に対して、不意打ちのような突進だった。




この世界に来る前の俺だったらその突進を喰らっている。


そして、男の目論見通り跳ね飛ばされていただろう。


だが、今の俺には肉の塊がゆっくり迫るように見える。


俺は、男の突進をあっさりかわした。


ついでに、突進する足を引っ掛けるゆとりさえある。


男は自分の勢いのまま俺の横を駆け抜けた?


足を引っ掛けられて『飛んで行った』というのが正しい。


その後、俺の背後にあった藪に自分から飛び込んでいった。




「こいつ、強いぞ!」


周りの男達はたちまち臨戦状態だ。


「あなた達、止めなさい!」


アリサが必死に叫ぶ。


しかし、その声は男たちの興奮を誘う効果しかなかった。


戦いが始まると、気配に見えてなかった男達も出てきた。


最終的には、俺と二十数人との戦いになった。




俺には、いくら数が出て来ても彼等は騎士達と違う素人の戦いだ。


その上、俺は彼らよりはるかに早く動ける。


俺が剣を抜くまでも無かった。


俺は、隙だらけの男たちの顎に次々と掌を放つだけ。


拳骨では指が痛いからだ。


俺には普通でも、彼らには高速で頭を振られる。


男達は、次々と脳震盪を起こして倒れていく。


俺の方は、逆に武器を使うと手加減がわからないから大変だ。


軽く叩いても思わぬ攻撃力になってしまう。


俺には数分の体感時間に感じた。


しかし、実際には開始から数秒後に俺は全員を倒していた。



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