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20 戦争

これから、少しきな臭い話になります。

ご都合主義であっさり片付けます。

話の都合上、必要なので。


戦争



「リザード!、その紛争地域に俺とアリサを送ってくれないか?」


俺の言葉にリザードは驚いたような顔をする。


俺は、付き合いが長くなったのでなんとなく判った。


「どうするつもり?」


「人間側を引かせる!」


「出来るの?」


「やらなければ、人間は全滅なのだろう」


「・・・」


リザードの沈黙はそれを肯定していた。




「マイケル卿、王の方の交渉をお願いできますか」


「そちらの方は何とかしよう。魔物との対話の可能性がでてきたのだから」


「紛争地域の方は勇者の特権で抑えてみます」


そう言って、アリサの方を見る。


アリサは俺の目をしっかり見つめ返して頷いた。


「判った。やるだけやってみよう。無理するなよ」


そう言うとマイケル卿は馬車に向かった。




俺とアリサはリザードと話をする。


「紛争場所はどこ?」


リザードは哀しそうな目をする。


「無理よ三箇所以上よ」


「戦争を少しだけ待ってもらえないか」


「無理よ今晩にも部隊の移動は掛かるのだから」


リザードの様子は最悪の事態を意味していた。


『俺が、もう少し早く知っていたら・・・』


神でもない俺だが、そう思ってしまう。




俺はそこで、閃いた。


中央の政変はまだ地方まで伝わっていないことに気付く。


たとえ、王の命令を出しても地方に伝わるのに時間が掛かる。


そして、今地方を牛耳っている領主は前の側近の息が掛かった者が大半だ。


それなら、側近同様の手段で片付けてしまえばよい。


俺はこのアイデアをアリサに小声で話をする。


アリサは呆れ顔ではあるが賛成のようだ。




後は、それまで魔物を押さえる方法がいる。


「リザード!、紛争地域の和解代償に塩五十キロを送る」


「塩というのはあの調味料の事?」


「そうだ、戦いを十日延ばしてくれれば、その代償に送る。その間に人間を引

 かせるから」


「そうね、それならみんなを説得できるかもしれないわ。みんなあの塩に興味

 を持っていたから」


リザードの中にはなんとなく俺の行動を見通していたようなところがあった。




「それでは、押さえの方はそれでお願いするとして、あのゲートも使わせても

 らえないか?」


「それは構わないわ。でも人間を引かせられるの?」


「それは、やってみないと」


さすがに俺も成功の確信は無い。


どこまで、個人の力が及ぶのかは不明だった。




アリサがリザードに声を掛ける。


「あの三重に魔法をかけたことだけど、難しいの?」


「なんのこと?」


相変わらずその件はリザードの知識から欠落している。


おそらくリザードには当たり前のことを聞かれている。


だから話が伝わらない。


魚が泳ぐのにどうやってるの? 鳥が飛ぶのに何か力が要るの?


そんな類の質問なのだろう。


俺は再び翻訳をすることにした。


「風を操りながら、火と水をあつかうことです」


「そのことね。考えた事もないわ。使いたいから使うだけよ」


やはり、リザードは構えていない。


だから、どの魔法も自由に使えるのだ。


「考えた事も無い?」


「そうよ、こうしたいと思うからそうなる。そんなところよ」


アリサはその言葉に首を傾げるだけだ。


魔法を使うのに構えずに使う。


その意識の差が魔法の自在性を増していた。


人間のように体系的に物事を考えていない。


だから応用が自由なのだ。


『使いたいから使える』ということだった。




「リザード、お湯の玉を作ってくれる」


俺はアリサヘ『少しでもヒントになれば』とリザードに頼んだ。


リザードは、その意味を理解したのか、あの時と違いゆっくり発音してくれる。


三つの呪文を同時に詠唱している。


俺には、それがわかる。


「アリサ!、呪文の音節を分解するんだ」


「どういう意味」


「例えば、『は』と『ろ』を同時に発音する場合二つを同時に発音するのでは

 なく合成音を使うんだ」


「???」


「『は』と『ろ』のそれぞれの口の中間に口を開き『あ』と『お』を同時に出

 す。それを呪文の言葉全部に当てはめるんだ」


「なんとなく判ったわ」


「#$#%$」


目の前に水の玉が完成していた。


「出来た!」


アリサが喜んだのも束の間、水の玉は砕けて下に落ちた。


アリサの失敗にリザードが瞳を輝かせた。


しかし、アリサを見ていた俺は気付かなかった。




「呪文だけではなくイメージが重要なの!、呪文は少々あやふやでも通じるから」


リザードからのアドバイスだ。


そして、その言葉の中にアリサは重要なヒントを見つけた。


「#####」


アリサは、先程の呪文に較べてはるかに自然に声を出していた。


子音を無視して、母音だけで構成をしているからだ。


それは、ある意味動物の鳴き声に近い。


すると、そこにはリザードが出したのと同じお湯の玉が完成していた。


「出来た!」


アリサが喜ぶ。


アリサは、どうやら階段を一つ登ったようだ。




リザードは、魔法の件で喜ぶアリサを横に本論に入る。


「交渉するにしても人間が確実に引き上げる保証がほしいの」


「どういうこと」


「一日で人間が引き上げた実証を取れる?それが出来ればみんな十日ぐらい待

 つわよ」


リザードの言う事はもっともだ。


話をするにしても、一日でそれに類する状況にしなければ信用してもらえない。


俺たちは覚悟を決めて彼女の後ろについた。


リザードが案内してくれた場所は寝室だった。




リザードからは、意外にも当面は身体を休める事を奨められる。


俺とアリサは用意された床について眠りに入った。


この時、俺が寝ている間に、アリサはリザードに呼ばれる。


そして、何かをしていた。


リザードが休息を理由に引きとめた理由だ。


しかし、俺が気付くのはその後一件が済んでからのことだった。



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