第46話:銀座を黄金の馬車でパレード中、旦那様は片手で「ハエ」を落としていました
一週間連続結婚披露宴、第一日目。
快晴の銀座、中央通り。数百万人の観衆が沿道を埋め尽くし、世界中の主要メディアのヘリが上空を旋回している。
「……湊さん、馬車が。……これ、本物の黄金で作られてますよね? 重すぎて馬が可哀想です……っ!」
「気にするな。……神宮寺重工が品種改良した、世界最強の馬だ。……君の重みなど、羽毛ほどにも感じていないだろう」
湊さんは、神宮寺家家紋入りの最高級タキシードを纏い、隣で私の腰を抱き寄せている。……供給。……陽光を浴び、民衆に「俺の妻を見ろ」と無言の圧をかける「絶対王者の推し顔」の供給。
その時、ビルの屋上から、祖父・龍之介が放った最後の刺客たちが、ワイヤーを使って降下してきた。
「湊、死ね! 神宮寺を返せ!」
悲鳴が上がる沿道。だが、湊さんは眉一つ動かさない。
彼は私を片手で自分の胸に引き寄せ、視界を塞ぐように抱きしめた。
「……花音。……目を閉じて十秒数えろ。……綺麗な空気を吸わせてやる」
湊さんは私の耳を塞ぎ、空いた方の手で、懐から取り出した特製のタクティカル・バトン(警棒)を一閃させた。……軍隊格闘術。……馬車から一歩も降りず、流れるような動作で襲撃者の急所を突き、次々と路上へ叩き落としていく。
(……えっ、今、何が起きてるの!? 湊さんの胸板が厚すぎて、何も見えない……っ!)
背後では、演出担当のKYLO様が、自身のライブ用ドローン軍団を操作し、残りの刺客を網で捕獲していた。……絶景。……「武力」の兄と「ハイテク」の弟による、隙のない鉄壁の守護。
「……よし。……掃除は終わった。……目を開けていいぞ、花音」
湊さんは、返り血一滴も浴びていない完璧な笑顔で、私の額に深く、誓いのキスを落とした。
沿道からは、襲撃を「結婚式の派手な演出」だと勘違いした観衆から、割れんばかりの拍手と歓声が上がる。
「……湊さん。……今、何か変な音がしませんでしたか?」
「……気のせいだ。……それより、花音。……世界中のカメラが君の美しさに平伏している。……君は今日から、この国の、いや世界の『唯一の王妃』なんだ」
(……ひ、ひいいいっ! 暗殺未遂さえも『ただの余興』にして、溺愛のパレードを続行しちゃってるぅぅぅ!!)
神宮寺湊の「天然な傲慢さ」は、ついに「命の危険」さえも、自分への信頼を深めるためのスパイスに変えてしまった。
私の『推し活OLライフ』は、ついに『黄金の馬車の上で、最強の旦那様に守られながら、全人類に跪かれる』という、全オタクが前世で多次元宇宙を救済したとしても体験できない「伝説の初日」を終えたのだった。




