12 : 正義の意味
『騎士のソニア 【12 : 正義の意味】』
―ドォォォォンンン!!!―
轟音が鳴り響く。
―ヂュミミミ!!!―
波動が震えた。今回はより鮮明に、明確に。
(ソニア)「…!ネメシスの頭上だ!!!」
(リットリオ)「…!」
―ビュン!!!―
リットリオはそれを聞き、向かってしまった。
(ソニア)「おい!!!」
(ヤチェリー)「追うよ!」
瞬時に飛んで行ったリットリオを見失わないよう、あとをついて行く。
ーネメシス頭上ー
―シュィィィンンン!!!―
十メートル程のメカと、ネメシスを繋いでいる多量のケーブル。
(ハザキ)「いけてるか?」
青色の小袖着流し姿の大柄な男が、メカの隣に立つ相手に話している。
(オメガ)「はい。ネメシスのエネルギー、移せています。戦闘になっても、
神の雷が流れる“グァンザ”で応戦出来ます。」
(ハザキ)「それは最後の手段だ。私が時間を稼ぐ。危ういと判断したら助太刀してくれ。」
―ドオオオオオオオオ!!!―
闇が瞬時に男へと向かう。
―ザン!!!―
ハザキは瞬時に大太刀を抜き、闇を斬った。
流れるように、周囲の霧も斬った。
(リットリオ)「そこで何をしている…。」
(ハザキ)「来たか。ヒーロー、リットリオ。」
―ドォォォォ!!!―
瞬時に様々な立ち位置へと移動し、闇を複数から走らせる。
―ズサン!!!サァァン…。―
ハザキは華麗な身のこなしで闇を斬る。
そしてリットリオのスーツに剣先が触れた。
(リットリオ)「っ…!」
視界の開けた場所、範囲や火力に長けた相手とは相性が悪い。
(ハザキ)「そう焦るな。我々は順調に進んでいる。」
―ダッ!ダッ!―
先に行ったリットリオが見えた。
(ソニア)「一人で行くな!道が分からないんだぞ…!!!」
(リットリオ)「誰かの手を借りられるほど、正義は甘くない。ヒーローは孤独に戦う…。」
(ヤチェリー)「ケンカはあとにして。」
(風花)「一人ではありませんよ。」
(ポゼ)「フン!」
横一列に並ぶソニア達。
(リットリオ)「足を引っ張るなよ。」
(ソニア)「当たり前だ!」
(ハザキ)「オメガ。続けろ。」
ースッ…。ー
ハザキは居合の構えをした。三百六十度、全ての範囲を見切る気でいる。
(ハザキ)「座して待つ。時が来るその時まで…。」
ーーーーー
ハザキは一歩も動くことなく構えている。
みんな声を出すことはなく、それぞれがやるべきだと思った動きをした。
ポゼは上へ飛び、空中からブレスを撃ち、リットリオはトリッキーな動きで翻弄し、ソニア達三人は互いをカバーし合う攻撃を仕掛けた。
ハザキは攻撃はせず避けている。全て交わし、当たる確実を待っている。
―スッ…。ザン!!!―
ハザキは水を剣先に纏わせ、ポゼに命中させた。
まだ動けるが、陣形が崩れた。
(ポゼ)「っグ…!」
―ダン…!―
ヤチェリーは足蹴りをガードしたが、後ろに押された。
確実に陣形を崩してくるハザキに、これ以上の時間を与えられない。
残りの三人は一斉にハザキへと向かった。
(ハザキ)「…!時が来た…。」
―スッ…。カチャ…。―
間に合わない。大太刀はすでに刀身を見せている。
―ヂュミミミ!!!―
波動がソニアの身体に纏った。意識してやったのではなく、自然に。
―ザッ…!―
ソニアはハザキの脇下へと入り込み、斬った。致命傷は避けられた。
(リットリオ)「ッチ…。」
(風花)「大丈夫ですか…?」
(リットリオ)「お前も擦れているだろう。」
(ソニア)「みんな立て。まだ終わってない。途中で下がったんだ…。」
―ポタ…。―
血が滴る。
(ハザキ)「…。あの光、今はもうないのか。あれはなんだ…?絶対に間に合わなかったはずだ。突発的瞬発力、勘の良さ…。」
ハザキの利き腕を狙ったソニア。
相手も致命傷を避けたが、大太刀を満足に振るうことは難しい。
(オメガ)「こちらは終わりました。」
―ドオオオン!!!―
ネメシスの高度が一瞬落ちた。
(ハザキ)「ネメシスには予備電力がある。それが切れれば…。」
(オメガ)「退きましょう。目的は達成です。殺しは避けるべきだと。」
(リットリオ)「逃がすと思うか?」
(ハザキ)「オメガ、グァンザを動かせ。逃がしてはもらえないようだ。…我々は撤退しなければいけない。」
―ギュオン!!!―
グァンザが赤く光る。
(オメガ)「了解しました。ネメシスの電力を消費します。」
(ハザキ)「それは…」
(オメガ)「最終手段です。目的を達成し帰還することが何よりの最善なのです。安心していいですよ。一%だけ使用し、短時間で、殲滅します。」
ーーーーー
―ビュオン!ビュオン!―
グァンザに搭乗したオメガが、レーザーを撃つ。ただ二発。
ネメシスの電力をチャージしたグァンザにとって、それだけでよかった。
―ボォォォォ!!!―
高温のレーザーは、街に火をつけた。
(リットリオ)「ッチ…!」
(ハザキ)「オメガ、引き時だ…。火が広がってもなお追ってくるか?」
(リットリオ)「(俺は空を飛べる…。追うか…?)」
(ハザキ)「次第にここは落ちる。どうする?“ヒーロー”。」
―ビュオオオオン!!!―
そう言い去っていった、ハザキとオメガ。
その速度は、到底リットリオが追える速度ではなかった。
―ギュイン!ギュイン!―
ネオが赤いランプで照らされる。
(アナウンス)「“ネメシスの電力低下”…!墜落します!!!今すぐ騎士団の指示に従って避難してください!!!」
(リットリオ)「逃げろ。」
(ソニア)「お前は…」
(リットリオ)「俺がなんて呼ばれてるか、知ってるだろう。…任せろ。」
燃える街。赤く照らされる街。
その中に立つリットリオの背中は、ソニア達がすぐに逃げる判断をさせた確実があった。
(リットリオ)「人は全員逃げられるだろう。騎士団とラキエルがどうにかする。」
―“不安?”―
“リットリオの中に声が響く“
(リットリオ)「…お前は見ていればいい。…俺にこう言ったな。
“人はみんなが強いわけじゃない。だから僕は救いたいんだ”と。」
―“僕は弱いから”―
(リットリオ)「そうか。だから俺を、“つくった”のか。」
ーーーーー
ネメシスの下へと移動したソニア達。
出来るだけ遠くへと、民衆達と共に離れていく。
―ゴゴゴゴ!!!―
ネメシスの予備電力が切れかかる。
(ポゼ)「見て!」
(ソニア)「落ちるぞ…。」
(ヤチェリー)「大丈夫でしょ。」
(風花)「頼みます…。」
―リットリオ!!!―
その場にいた全ての人が、彼の名を叫んだ。
―シュン!!!―
ネメシスの下、移動装置からリットリオが現れた。
―ドオオオオオオオオオ!!!!!―
全力の闇をネメシスへと走らせる。その闇に殺意はない。
ただ、全てを救いたいという、優しい闇が。
(リットリオ)「ッグ…!!!俺は、ヒーローだ!!!"いつか世界を救う"ヒーローになる…!!!ネメシス…!化身なら動いてみせろ…!」
身が呑まれる程に更に闇を集中させるが、ネメシスの動きは止まらない。
(リットリオ)「ック…。届かないのか…」
―“君は一人じゃない”―
―ファサァァァ!!!―
リットリオの目線左右に翼が見える。
(天空騎士団)「我々が手伝う。」
(リットリオ)「お前ら…」
(ポゼ)「僕も意味あるかな…!」
いつの間にか、ポゼも参加している。
―バチバチ…!!!―
轟雷たる雷がネメシスの身体を包む。強力な磁力がネメシスの動きを止めた。
(ラキエル)「ネメシスを着地させる。私が引っ張る。君達は下がっていけ。」
―シュウウウウ…。ズサン…。―
次第にネメシスの高度は下がっていき、無事着地した。
(民衆)「リットリオ…!!!騎士団!!!ラキエル様!!!」
称えられる、ヒーロー達。
(リットリオ)「初めてだ。何も成すことが出来なかった…。」
(ラキエル)「君は人を救ってみせた、国も。聞こえるだろう?見えるだろう。」
―ワァァァァァ!!!!!―
民の安堵の声が、夜を包む。
(ラキエル)「この歓声は君のものだ。」
(リットリオ)「いや…。」
―“君のものだよ”―
(リットリオ)「俺だけのものじゃない。お前達にも当てはまる。」
(ラキエル)「…。」
(リットリオ)「お前もだ…。“マンティーエル”…。」
リットリオは夜の中、静かにその名前を呼んだ。
消えた王子、“マンティーエル”を。
"2026/01/23"読みやすくなるよう変更を加えました。流れの改変は行っていません。




