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騎士のソニア  作者: 深緑蒼水


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12/27

12 : 正義の意味

『騎士のソニア 【12 : 正義の意味】』


―ドォォォォンンン!!!―


また轟音が鳴り響く。また霧が濃くなる。


―ヂュミミミ!!!―


波動が震えた。今回はより鮮明に、明確に。


「…!ネメシスの頭上だ!!!」

(リットリオ)「…!」


―ビュン!!!―


「おい!!!」

「追うよ!」


瞬時に飛んで行ったリットリオを見失わないよう、あとをついて行く。

霧の先にあるものは…


―ネメシス頭上―


―シュィィィンンン!!!―


十メートル程のメカと、ネメシスを繋いでいる多量のケーブル。


(ハザキ)「いけてるか?」


青色の小袖着流し姿の大柄な男が、メカの隣に立つ相手に話している。


(オメガ)「はい。ネメシスのエネルギー、移せています。戦闘になっても、

神の雷が流れる“グァンザ”で応戦出来ます。」

「それは最後の手段だ。私が時間を稼ぐ。危ういと判断したら助太刀してくれ。」


―ドオオオオオオオオ!!!―


闇が瞬時に男へと向かう。


―ザン!!!―


そしてハザキもまた瞬時に大太刀を抜き、闇を斬った。流れるように、周囲の霧も斬った。


「そこで何をしている…。」

「来たか。ヒーロー、リットリオ。」


―ドォォォォ!!!―


瞬時に様々な立ち位置へと移動し、闇を複数から走らせる。


―ズサン!!!サァァン…―


ハザキは華麗な身のこなしで闇を斬る。そしてリットリオのスーツに剣先が触れた。


「っ…!」


視界の開けた場所、範囲や火力に長けた相手とは相性が悪い。


「そう焦るな。我々は順調に進んでいる。」


―ダッ!ダッ!―


「一人で行くな!道が分からないんだぞ…!!!」

「誰かの手を借りられるほど、正義は甘くない。ヒーローは孤独に戦う…。」

「ケンカはあとにして。」

「一人ではありませんよ。」

「フン!」

「足を引っ張るなよ。」

「当たり前だ!」

「オメガ。続けろ。」


ースッ…。ー


ハザキは居合の構えをした。360度、全ての範囲を見切る気でいる。


「座して待つ。時が来るその時まで…。」


ーーーーー


ハザキは一歩も動くことなく構えている。みんな声を出すことはなく、それぞれがやるべきだと思った動きをした。

ポゼは上へ飛び、空中からブレスを撃ち、リットリオはトリッキーな動きで翻弄し、ソニア達3人は互いをカバーし合う攻撃を仕掛けた。

ハザキは攻撃はせず避けている。全て交わし、当たる確実を待っている。


―スッ…。ザン!!!―


「っグ…!」


ハザキは水を剣先に纏わせ、ポゼに命中させた。まだ動けるが、陣形が崩れた。


―ダン…!―


ヤチェリーは足蹴りをガードしたが、後ろに押された。

確実に陣形を崩してくるハザキに、これ以上の時間を与えられない。

残りの3人は一斉にハザキへと向かった。


「…!時が来た…。」


―スッ…。カチャ…。―


間に合わない。大太刀はすでに刀身を見せている。


―ヂュミミミ!!!―


波動がソニアの身体に纏った。意識してやったのではなく、自然に。


「…!!!」


―ザッ…!―


ソニアはハザキの脇下へと入り込み、斬った。致命傷は避けられた。


「ッチ…。」

「大丈夫ですか…?」

「お前も擦れているだろう。」

「みんな立て。まだ終わってない。途中で下がったんだ…。」


―ポタ…。―


「…。あの光、今はもうないのか。あれはなんだ…?絶対に間に合わなかったはずだ。突発的瞬発力、勘の良さ…。」


ハザキの利き腕を狙ったソニア。

相手も致命傷を避けたが、大太刀を満足に振るうことは難しい。


「こちらは終わりました。」


―ドオオオン!!!―


(皆)「…!」


ネメシスの高度が一瞬落ちた。


(リットリオ)「ネメシスには予備電力がある。それがきれれば…。」

「退きましょう。目的は達成です。殺しは避けるべきだと。」

「逃がすと思うか?」

「オメガ、グァンザを動かせ。逃がしてはもらえないようだ。

 …我々は撤退しなければいけない。」


―ギュオン!!!―


「了解しました。ネメシスの電力を消費します。」

「それは…」

「最終手段です。目的を達成し帰還することが何よりの最善なのです。安心していいですよ。1%だけ使用し、短時間で、殲滅します。」

ーーーーー


―ビュオン!ビュオン!―


(皆)「…!」


グァンザに搭乗したオメガが、レーザーを撃つ。ただ2発。

ネメシスの電力をチャージしたグァンザにとって、それだけでよかった。


―ボォォォォ!!!―


「ッチ…!」

「オメガ、引き時だ…。火が広がってもなお追ってくるか?」

「(俺は空を飛べる…。追うか…?)」

「次第にここは落ちる。どうする?“ヒーロー”。」


―ビュオオオオン!!!―


そう言い去っていった、ハザキとオメガ。その速度は、到底リットリオが追える速度ではなかった。


―ギュイン!ギュイン!―


ネオが赤いランプで照らされる…。


「“ネメシスの電力低下”…!墜落します!!!今すぐ騎士団の指示に従って

 避難してください!!!」

「逃げろ。」

「お前は…」

「俺がなんて呼ばれてるか、知ってるだろう。…任せろ。」


燃える街。赤く照らされる街。

その中に立つリットリオの背中は、ソニア達がすぐに逃げる判断をさせた

確実があった。


「人は全員逃げられるだろう。騎士団とラキエルがどうにかする。」


―“不安?”―


“リットリオの中に声が響く“


「…お前は見ていればいい。…俺にこう言ったな。

 “人はみんなが強いわけじゃない。だから僕は救いたいんだ”と。」


―“僕は弱いから”―


「そうか。だから俺を、“つくった”のか。」


ーーーーー


ネメシスの下へと移動したソニア達。

出来るだけ遠くへと、民衆達と共に離れていく。


―ゴゴゴゴ!!!―


「見て!」

「落ちるぞ…。」

「大丈夫でしょ。」

「頼みます…。」


―リットリオ!!!―


その場にいた全ての人が、彼の名を叫んだ。


―シュン!!!―


ネメシスの下、移動装置からリットリオが現れた。


―ドオオオオオオオオオ!!!!!―


全力の闇をネメシスへと走らせる。その闇に殺意はない。

ただ、全てを救いたいという、優しい闇が。


「ッグ…!!!俺は、ヒーローだ!!!"いつか世界を救う"

ヒーローになる…!!!ネメシス…!化身なら動いてみせろ…!」


身が呑まれる程に更に闇を集中させるが、ネメシスの動きは止まらない。


「ック…。届かないのか…」


―“君は一人じゃない”―


―ファサァァァ!!!―


リットリオの目線左右に翼が見える。


(天空騎士団)「我々が手伝う。」

「お前ら…」

(ポゼ)「僕も意味あるかな…!」


―バチバチ…!!!―


轟雷たる雷がネメシスの身体を包む。強力な磁力がネメシスの動きを止めた。


(ラキエル)「ネメシスを着地させる。私が引っ張る。君達は下がっていけ。」


―シュウウウウ…。ズサン…。―


(民衆)「リットリオ…!!!騎士団!!!ラキエル様!!!」


「初めてだ。何も成すことが出来なかった…。」


「そうか?君は人を救ってみせた、国も。聞こえるだろう?見えるだろう。」


―ワァァァァァ!!!!!―


「この歓声は君のものだ。」

「いや…。」


―“君のものだよ”―


「俺だけのものじゃない。お前達にも当てはまる。」

(ラキエル)「…。」

(天空騎士団)「…。」

(リットリオ)「お前もだ…。“マンティーエル”…。」


リットリオは夜の中、静かにその名前を呼んだ。

消えた王子、“マンティーエル”を。

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