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カインドラ  作者: 深緑蒼水
騎士のソニア

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13/116

13:また逢う日

『騎士のソニア【13:また逢う日】』


ネオ・ランド襲撃事件。

"血の夜"のような、悲劇にはならなかった。

だが爪痕は大きい。

街の一帯が全焼し、依頼を投げた首謀者達は逃亡した。


(ソニア)「やったな!」


星にも負けない目を輝かせ、拳を突き出してきた。

集った正義の奇跡に、感動している。


(リットリオ)「…。」


差し出された拳には答えるが、喜びの感情ではいられない。

少し俯いて、ソニアの拳に手を当てた。


(ヤチェリー)「嬉しくないの?」


嬉しくないわけではない。

助けが来た時は、確かに嬉しかった。


(リットリオ)「別に。いつかは一人でやる。生きているか見に来ただけだ。俺はもう行く。正義の意味は、理解しただろう。」


なるべき姿を突きつけられた。

理想までの壁は高く。


(風花)「何もないのですか?」


壁を超えるには、鍛錬が必要。

一般人相手に粋がっているだけでは、ネオ・ランドが滅びる。


(リットリオ)「何もない。」


大海を制する、蛙にならなくては。


(ソニア)「…。」


冷たい態度で言い放ち、行ってしまった。

正義とは孤独に戦い、絶対的でなくてはいけない。

リットリオに染み付いている、生き方なんだろう。

スーツの下にある顔は、どんな気持ちでいるのか。

一人では成せないことも、誰かとなら成せる。

それを知ったはずだ。

思考と目的が同じで、同一の二文字を背負っているなら。


(ソニア)「生きててよかったな。」


(ポゼ)「へへ…!」


ポゼは照れくさそうに笑った。

正義に混ざり、ネメシスを持ち上げたポゼも、きっと信じている。

ヒーローとは、また会える。


ーーーーー


(リットリオ)「ネメシスが心配か?」


エネルギー枯渇で倒れ込んだネメシスに、ラキエルが目を閉じ寄り添っている。


(ラキエル)「君か。文句を言いに来たか?」


前までなら、文句を言っていた。

だが今日の事件で、認める他ない。


(リットリオ)「いや、俺だけでは出来なかった。」


(ラキエル)「意外だな。」


リットリオはどこか、聞き分けがいい。

騎士団と問題を起こさず、退けと言ったら消えた。

それは軽蔑からくるものだと思っていたが、やはり。


(リットリオ)「お前達のことは、ある程度信頼している。だから呼びに行かせた。」


ラキエルがニヤついた。

変なことを考えているに違いない。


(ラキエル)「信頼を得ているのは、王として嬉しいものだ。」


会話が途絶え、しばらく沈黙が続いた。

もう互いに分かっている。


(リットリオ)「"本人からの希望"だ。」


"影に生きる真のヒーロー"が、望んだこと。


(リットリオ)「"ヒーロー:リットリオは、王子:マンティーエルの他人格だ"。」


遠い夜。

街が血で滴った、真夜中だった。

今日のような、火が盛るだけではなく。

国中に民だった肉塊が転がり、両親もまた、それになった。


(リットリオ)「親が死んだあの夜。犯人達を、自身の手で処刑した夜。"俺"が生まれ、"奴"は後ろに行った。」


自分に意志があれど、強さはなかった。

心が打ち砕かれても、肉体は生き続ける。

ならば絶望に堕ち、闇を纏うことで、未来を見た。


(ラキエル)「そうか…。」


(リットリオ)「冷静だな。」


冷静なのではなく、処理が追いつかない。


(ラキエル)「内心は違うさ。十数年も昔に消えた家族が、生きていたと言われたら…。こうなってしまう。」


十数年の再会で、何をすべきか。

思考がまとまらない。

開けていた部屋を整え、妹達に合わせるか。

身なりは整えているのか。勉学は。

いや、違う。

姉として、母のようなこと考えている場合ではない。

今はもっと、やるべきことがある。


(ラキエル)「どうだ?少し…。」


ラキエルがマスク越しに、頬に触れてきた。

再会に答えてやりたいが、マンティーエルではない。


(リットリオ)「それはダメだ。俺はリットリオ。奴じゃない。俺がマスクを外しても、顔と声が同じ別人だ。昔の思い出が変わってしまうぞ。」


ラキエルの手に、触れるだけにした。

本人が望むなら、別にそれでいい。


(ラキエル)「それもそうか…。でも素直なとこは、君も同じだ。」


厳格で高貴なラキエルが、笑顔で微笑む。

不思議な気分だ。

マンティーエルの記憶で知っているが、初めて見た気持ち。

ラキエルは、純粋無垢な少女でいた。


(ラキエル)「これから君はどうする?ネオの再興には、時間がかかる。」


ネメシスの背中から、煙が立ち込めている。

鎮火したが、街の一帯が溶けた。

再浮上には、絶大な電力が必要になる。

復興は容易ではない。


(ラキエル)「君の選択だ。君が決めるといい。」


ー"リットリオ。君のやりたいように、やるといいよ。"ー


二人の声は暖かく、胸が沁みる。


(リットリオ)「("だが、俺の命は長くない…。毎日力を使っていたら、代償が見つけに来ていた…"。)」


闇は怒り。

過剰な行使は、精神を蝕む。


ー"だからこそ、君のなりたいように。"ー


ネオ・ランドには変革が訪れる。

なら自分は。


(リットリオ)「俺は変わらない。ネオのヒーローであり続ける。"いつか世界を救う、ヒーローにだってな"。」


やるべきことはただ一つ。

力を求めるために。


ーーーーー


(リットリオ)「行くのか?」


まだいた。

支度を整えている。


(ソニア)「朝には出ていく。俺らの手伝いは、必要ないと思ってな。」


待っていたかのような、ニヤケ面。

早く言えと、急かしてくるようで。


(リットリオ)「そうか。なら、"俺も行く"。」


これこそ選んだ答え。

力を追う、旅に出る。


(風花)「いなくてよいのですか?」


(リットリオ)「外に出て力を得る。力に限りはないからな。ああいう力をもった奴らに、勝てなければ意味がない。」


守るためには、絶対的な力が必要だ。

三度目の悲劇は起こさせない。


(ヤチェリー)「じゃあ決定。」


(ポゼ)「不安はないんだね。」


背中を預けられる者達がいる。

不安はない。


(リットリオ)「託せる奴らがいる。だから大丈夫だ。」


(ソニア)「なら寝よう。朝は早いぞ。」


新たにリットリオが加わった。

力を求める、五人の旅。

期待を抱き草原に寝る、真夜中の空。

晴天に輝く、星空の海だ。


(ラキエル)「リットリオ。ネオ・ランドは、君の帰還を待っている。我々に流れるのは、天空たる"天の血"。"天ノ神(あまのかみ)"の導きで、また再び会おう。」


次の国が、表大陸最後の国。

朝日が昇ったら、燃える情熱の地へと向かおう。


            <"火の国:ルボトス">


ーーブラック・ロワーー

霧が立ち込め、潮風が吹く。

光は少なく、影の多い地。

何の変哲もない、木造の一軒家。


(ハザキ)「帰ったぞ。」


錆びれた扉を開け、目的の物を置く。


(オメガ)「電力を入れたタンクです。」


(???)「集まってきたな。」


竜の血。神の心臓。膨大な電力。

ここまでは、順調に集まった。


(ハザキ)「"血は馴染んだか?"」


寝込む姿は熱っぽい。


(ミア)「大変だったけど…。」


体を巡る血液は、既に自分のものではない。


(黒鎧の男)「だいぶな…。」


家の中が暗くなった。

体調の影響だと思ったが、違う。

硝子越しに、見知った大影。


(???)「気をつけるのだ。神の力は強大である。人が耐えられるものではない。」


(黒鎧の男)「分かっている…。必要なことだ。こうでもしなければ…。」


全身の熱を堪え、立ち上がる。

血の浸透は、序章にすぎない。

心臓の移植こそ、本題だ。

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