13:また逢う日
『騎士のソニア【13:また逢う日】』
ネオ・ランド襲撃事件。
"血の夜"のような、悲劇にはならなかった。
だが爪痕は大きい。
街の一帯が全焼し、依頼を投げた首謀者達は逃亡した。
(ソニア)「やったな!」
星にも負けない目を輝かせ、拳を突き出してきた。
集った正義の奇跡に、感動している。
(リットリオ)「…。」
差し出された拳には答えるが、喜びの感情ではいられない。
少し俯いて、ソニアの拳に手を当てた。
(ヤチェリー)「嬉しくないの?」
嬉しくないわけではない。
助けが来た時は、確かに嬉しかった。
(リットリオ)「別に。いつかは一人でやる。生きているか見に来ただけだ。俺はもう行く。正義の意味は、理解しただろう。」
なるべき姿を突きつけられた。
理想までの壁は高く。
(風花)「何もないのですか?」
壁を超えるには、鍛錬が必要。
一般人相手に粋がっているだけでは、ネオ・ランドが滅びる。
(リットリオ)「何もない。」
大海を制する、蛙にならなくては。
(ソニア)「…。」
冷たい態度で言い放ち、行ってしまった。
正義とは孤独に戦い、絶対的でなくてはいけない。
リットリオに染み付いている、生き方なんだろう。
スーツの下にある顔は、どんな気持ちでいるのか。
一人では成せないことも、誰かとなら成せる。
それを知ったはずだ。
思考と目的が同じで、同一の二文字を背負っているなら。
(ソニア)「生きててよかったな。」
(ポゼ)「へへ…!」
ポゼは照れくさそうに笑った。
正義に混ざり、ネメシスを持ち上げたポゼも、きっと信じている。
ヒーローとは、また会える。
ーーーーー
(リットリオ)「ネメシスが心配か?」
エネルギー枯渇で倒れ込んだネメシスに、ラキエルが目を閉じ寄り添っている。
(ラキエル)「君か。文句を言いに来たか?」
前までなら、文句を言っていた。
だが今日の事件で、認める他ない。
(リットリオ)「いや、俺だけでは出来なかった。」
(ラキエル)「意外だな。」
リットリオはどこか、聞き分けがいい。
騎士団と問題を起こさず、退けと言ったら消えた。
それは軽蔑からくるものだと思っていたが、やはり。
(リットリオ)「お前達のことは、ある程度信頼している。だから呼びに行かせた。」
ラキエルがニヤついた。
変なことを考えているに違いない。
(ラキエル)「信頼を得ているのは、王として嬉しいものだ。」
会話が途絶え、しばらく沈黙が続いた。
もう互いに分かっている。
(リットリオ)「"本人からの希望"だ。」
"影に生きる真のヒーロー"が、望んだこと。
(リットリオ)「"ヒーロー:リットリオは、王子:マンティーエルの他人格だ"。」
遠い夜。
街が血で滴った、真夜中だった。
今日のような、火が盛るだけではなく。
国中に民だった肉塊が転がり、両親もまた、それになった。
(リットリオ)「親が死んだあの夜。犯人達を、自身の手で処刑した夜。"俺"が生まれ、"奴"は後ろに行った。」
自分に意志があれど、強さはなかった。
心が打ち砕かれても、肉体は生き続ける。
ならば絶望に堕ち、闇を纏うことで、未来を見た。
(ラキエル)「そうか…。」
(リットリオ)「冷静だな。」
冷静なのではなく、処理が追いつかない。
(ラキエル)「内心は違うさ。十数年も昔に消えた家族が、生きていたと言われたら…。こうなってしまう。」
十数年の再会で、何をすべきか。
思考がまとまらない。
開けていた部屋を整え、妹達に合わせるか。
身なりは整えているのか。勉学は。
いや、違う。
姉として、母のようなこと考えている場合ではない。
今はもっと、やるべきことがある。
(ラキエル)「どうだ?少し…。」
ラキエルがマスク越しに、頬に触れてきた。
再会に答えてやりたいが、マンティーエルではない。
(リットリオ)「それはダメだ。俺はリットリオ。奴じゃない。俺がマスクを外しても、顔と声が同じ別人だ。昔の思い出が変わってしまうぞ。」
ラキエルの手に、触れるだけにした。
本人が望むなら、別にそれでいい。
(ラキエル)「それもそうか…。でも素直なとこは、君も同じだ。」
厳格で高貴なラキエルが、笑顔で微笑む。
不思議な気分だ。
マンティーエルの記憶で知っているが、初めて見た気持ち。
ラキエルは、純粋無垢な少女でいた。
(ラキエル)「これから君はどうする?ネオの再興には、時間がかかる。」
ネメシスの背中から、煙が立ち込めている。
鎮火したが、街の一帯が溶けた。
再浮上には、絶大な電力が必要になる。
復興は容易ではない。
(ラキエル)「君の選択だ。君が決めるといい。」
ー"リットリオ。君のやりたいように、やるといいよ。"ー
二人の声は暖かく、胸が沁みる。
(リットリオ)「("だが、俺の命は長くない…。毎日力を使っていたら、代償が見つけに来ていた…"。)」
闇は怒り。
過剰な行使は、精神を蝕む。
ー"だからこそ、君のなりたいように。"ー
ネオ・ランドには変革が訪れる。
なら自分は。
(リットリオ)「俺は変わらない。ネオのヒーローであり続ける。"いつか世界を救う、ヒーローにだってな"。」
やるべきことはただ一つ。
力を求めるために。
ーーーーー
(リットリオ)「行くのか?」
まだいた。
支度を整えている。
(ソニア)「朝には出ていく。俺らの手伝いは、必要ないと思ってな。」
待っていたかのような、ニヤケ面。
早く言えと、急かしてくるようで。
(リットリオ)「そうか。なら、"俺も行く"。」
これこそ選んだ答え。
力を追う、旅に出る。
(風花)「いなくてよいのですか?」
(リットリオ)「外に出て力を得る。力に限りはないからな。ああいう力をもった奴らに、勝てなければ意味がない。」
守るためには、絶対的な力が必要だ。
三度目の悲劇は起こさせない。
(ヤチェリー)「じゃあ決定。」
(ポゼ)「不安はないんだね。」
背中を預けられる者達がいる。
不安はない。
(リットリオ)「託せる奴らがいる。だから大丈夫だ。」
(ソニア)「なら寝よう。朝は早いぞ。」
新たにリットリオが加わった。
力を求める、五人の旅。
期待を抱き草原に寝る、真夜中の空。
晴天に輝く、星空の海だ。
(ラキエル)「リットリオ。ネオ・ランドは、君の帰還を待っている。我々に流れるのは、天空たる"天の血"。"天ノ神"の導きで、また再び会おう。」
次の国が、表大陸最後の国。
朝日が昇ったら、燃える情熱の地へと向かおう。
<"火の国:ルボトス">
ーーブラック・ロワーー
霧が立ち込め、潮風が吹く。
光は少なく、影の多い地。
何の変哲もない、木造の一軒家。
(ハザキ)「帰ったぞ。」
錆びれた扉を開け、目的の物を置く。
(オメガ)「電力を入れたタンクです。」
(???)「集まってきたな。」
竜の血。神の心臓。膨大な電力。
ここまでは、順調に集まった。
(ハザキ)「"血は馴染んだか?"」
寝込む姿は熱っぽい。
(ミア)「大変だったけど…。」
体を巡る血液は、既に自分のものではない。
(黒鎧の男)「だいぶな…。」
家の中が暗くなった。
体調の影響だと思ったが、違う。
硝子越しに、見知った大影。
(???)「気をつけるのだ。神の力は強大である。人が耐えられるものではない。」
(黒鎧の男)「分かっている…。必要なことだ。こうでもしなければ…。」
全身の熱を堪え、立ち上がる。
血の浸透は、序章にすぎない。
心臓の移植こそ、本題だ。




